第24話 瑠奈の欲しいもの
「お~~い。景樹君」
手を振っているのは、赤いタイトスカートを履いた柚木 麗華だ。
しかも、赤いスポーツカーを携えて……
ミラクル目立ってるのだが……
「ねぇ。凄い美人」
「超、綺麗な人……」
「何だが霞君の事呼んでるみたいだよね」
「霞君のお姉さん? 」
だが、庚 絵里香だけは反応が違った。
「麗華姉、どうしてここに……」
ここには、俺達だけがいるのではない。
俺の高校の1学年全員が揃っているのだ。
ド派手に登場した柚木 麗華は、返事を返して来ない俺のところまでトコトコ歩いて来た。
「景樹君、手を振って呼んでたのがわからないの? 」
いいえ、わかりすぎてて何も出来ませんでした……
「麗華姉、どうしてここに、それに、霞君と知り合いだったのですか? 」
当然の反応だろう。
従兄妹同士なのだから……
「絵里香もいたのね。そう言えば叔父様が景樹君は絵里香と同じクラスって言ってたっけ」
「それは、どう言う意味でしょうか? 私の父は霞君の事を知ってるという事ですか? 」
麗華も気づいたようで、俺に近づいて小声で囁く。
『絵里香は知らないの? 』
『はい、そうです』
何かを思いついたように唐突に話し出す。
「私はここにいる霞 景樹君の家庭教師よ。今日、校外学習があるって聞いて学校の近くだから迎えに来たのよ」
「家庭教師だって~~」「あんな美人の家庭教師って羨ましい」「霞、死ね! 」とギャラリーは言いたい事を言っている。
何かを察したのか柚木 麗華は
「じゃあ、景樹君 車に乗って、送ってくわ」
そう言って俺の腕に自信の腕を絡ませて車まで拉致された。
「じゃあねぇ~~」
絵里香達に手を振りながら、物凄いエンジン音を上げてその場を走り去って行った。
車の中で俺は美女と2人きりだ。
霞の者と知っている麗華には隠す必要が無い。
「どうしたんですか? 今日は」
「瑠奈ちゃんから聞いたのよ。それに、瑠奈ちゃんから相談を受けてたの。買い揃えたいものがあるらしくて、東京は不慣れだからどこに行けばいいのか相談されたのよ」
「瑠奈がですか、どうりで……」
「もう、瑠奈ちゃんとはメル友よ。それに今日は陽奈ちゃんにも会えるし、嬉しくって、喜んで買い物の手伝いをするつもりなの」
「はあ、それは、妹達が迷惑をかけます」
どうやら、麗華さんは、妹という存在に憧れているようだ。
そんな話を車の中でしながら、向かうは、俺の住んでる家だ。
「ところで、学校では景樹君はあんな雰囲気なの? 」
「ええ、目立つ訳にも行きませんから、でも、麗華さんの登場でしばらくダメそうですけど……」
「そっかーーでも、景樹君も普段は普通の高校生なのよ。少しは楽しめば? 」
「『霞の者』に、普通の生活はできませんから」
「そうかなぁ、まぁいいわ。私が色々教えてあげるわね」
意味深な言葉を残して、赤いスポーツカーは、交差点を左折した。
◇
自宅に着いた麗華さんは、瑠奈と陽奈の可愛らしさに興奮気味だった。
「ねぇ、陽奈ちゃん、この服着て見てよ。瑠奈ちゃんはこれね」
大きな荷物を抱えているとは思ってたけど、殆どが瑠奈と陽奈に着せるために持って来たようだ。
瑠奈は面倒くさそうに、陽奈は嬉しそうに麗華さんが用意した服を着替えている。
当の麗華さんは、カメラを持ち出してその姿を撮りまくっていた。
「いいわ~~いいわ~~。もう、陽奈ちゃんも瑠奈ちゃんも私の妹にしたいわ~~」
「麗華さんとお兄が結婚すれば、そうなるね」
陽奈がとんでも無い事を言う。
麗華さんは『そっか~』と頷いていた。
マジ、勘弁して下さい……
「陽奈、ダメです。兄様は永遠に私の兄様です」
うん、そうだよね~~血が繋がってるからね。
「もう、瑠奈ちゃんの焼き餅姿が超可愛いんだから~~」
これは、当分終わりそうも無い。
その後数時間、陽奈と瑠奈の撮影会は続いたのだった。
~~~
「兄様、どうしましょう? お夕飯の用意が出来てません」
確かに作る暇はなかったよねーー。
「何処かに食べに行こうか? 」
すると、陽奈が
「お肉がいいーー! 」
「じゃあ、私、良い店知ってるわよ。そこ行く? 」
と、麗華さんのオススメの店に行く事になった。
で、ここは、六本ギ。
麗華さんのオススメの焼肉店だ。
「ここのは美味しいわよ。遠慮なく食べて~~今日は私がご馳走するわ」
お嬢様の麗華さんの行きつけの店だけあって、運ばれてくるお肉はとても柔らかく口に入ったらとろけるように無くなっていく。
「美味しい~~」
「オススメだけあります。味も確かです」
双子妹は美味そうに食べている。
麗華さんは、タンとかミノとか通好みの品を注文して食べていた。
「私、歯ごたえがあるのが好きなのよ」
という理由だそうだ。
俺は、カルビよりロースの方が好きだ。
肉の味がしっかりわかるからだ。
「それとこの店は良く芸能人が来るのよ」
麗華さんは、ほら、『あそことここにも』と店の中で食べている女の子達に視線を向けていたが、テレビを見て育っていない俺達には、どれも普通の女の子にしか見えない。
「えっ、テレビ見た事なかったの? 」
と、驚いていた。
「見たことはありますけど、のんびり見た事はないです。勿論、陽奈も瑠奈もです」
「そっかーーじゃあ、誰が誰だかわからないわねーー」
と、軽く流してくれた。
里では、殆ど自給自足で猪などを狩って、その場で血抜きをし解体して焼いて食べていた。俺もそうだが、瑠奈も陽奈も血抜きや解体は得意だ。
そんな生活プラス修行でテレビなど見ている暇がなかったのだ。
「ところで景樹君、どういう方針で例の物を狩るつもりなの? 」
「アレが溢れ出てくる場所は、大概決まってます。都内でどこがその場所に当たるか現在調査中です。それと、昔、甲家と乙家が張った結界が弱まってきています。その場所は近い将来、アレが溢れ出てきます。その場所を探るのも俺達の任務です」
「そうなんだ。結構、範囲が広くて大変そうね」
真面目な姿の麗華さんは、仕事の出来るキャリヤウーマンのようだ。
「俺や陽奈が場所を特定して、監視カメラを設置する予定です。それと『紅の者』や己家の残党追跡も新しい任務に追加されてます。時間があると思ってましたが、少し時間が足りないくらいです」
庚 絵里香の監視がなくなった今、出来るだけ場所の特定を急ぎたい。
「じゃあ、私が、みんなの足になるわね。出かけるのは夜が多いのでしょう? 車を出すからそれで移動しましょう」
「良いのですか? 麗華さんにも学業があるでしょうに」
「構わないわ。この国の危機なんだもの。それに、君達の力になれて私は嬉しいのよ。退屈だった生活が今は夢のように楽しいのよ」
それなら良かったが、危険である事には変わりない。
「麗華さん。お聞きしたいことがあります」
「瑠奈ちゃん。麗華姉さんよ。絵里香みたいに麗華姉でもいいわ」
姉さんと呼ばせたいらしい。
「では、麗華姉さん。スーパーコンピュータは、何処で手に入りますか? 」
「えっ、スーパーコンピュータですって? 」
「はい。そうです。どこで買えますか? 」
「私達の大学にも小規模の物はあるけど、コンピュータだけ買っても意味ないわ。そのコンピュータを動かせる電力と施設が必要になるのよ」
「電力はわかりますが、施設とは、冷却装置を兼ね備えた建物ですか? 」
「そうよ。でなければスーパーコンピュータは動かせないわ」
瑠奈は何かを考えているようだ。
自分の顎を仕切りに触っている。
「実は、もう一つ欲しいものがあります」
「何かしら、聞くのがちょっと怖くなってきたんだけど……」
「衛星です。人工衛星が欲しいです」
瑠奈の欲しいものは、全て国家規模のものだった。




