第六十話 再会
「ルチアー。あとどれくらいこっちにいる予定?」
「そうですね……あと五日です」
「了解。それじゃあ俺は図書館に行ってくるな~」
「ええ。いってらっしゃい」
朝飯を食べ終えて、俺はカナエと塔へ向かう。
「とりあえず、俺たちについてくるならレベルを上げないとな」
「やっぱり凄いね! みんなレベル70超えてるなんてさ!」
小声でそう話すカナエの目は、キラキラと輝いていた。
カナエのレベルは49だった。残り五日でどこまで伸びるか、俺も楽しみだ。
「それじゃ、教えたとおりに頑張るんだぞー」
「はーい! 行ってきます!」
元気よく転移していったカナエを見送り、俺も塔を経由してラングストラの街へ移動した。
塔を出て図書館へ向かおうとする俺のもとに、見慣れた制服を着た女性が駆け寄ってくる。
……ギルド職員じゃん……嫌な予感しかしない。
「ルゥさんですね? ギルマスがお呼びです。ご同行願います」
「……い、嫌です」
「え?」
「行かなきゃ駄目ですか?」
「……私が怒られます……どうかお願いします」
たちまち泣きそうになるギルド職員。
……はぁ。
「わかりました……行きます」
「ありがとうございます!」
……あのおっさん、今度はなんだ?
※※※※※
「よく来てくれたね。まぁ座りたまえ」
「今日は何の用ですか?」
「ご機嫌斜めじゃないか。朝ごはんはちゃんと食べたか?」
「予定があったんですよ。飯も食いました」
「それはすまない。本当は『対の刃』に依頼しようと思っていたのだが、ここ数日見当たらなくてね」
……マリーノにいるからな。
「そこで、君に頼みたい依頼があるんだ」
「俺に、ですか?」
「Bランク相当の実力があるなら、大した仕事じゃないさ。これを」
俺は差し出された依頼書に目を通した。
「……護衛の依頼ですか?」
「そうだ。今日の昼から明日の昼にかけてこの街に要人が滞在するのだが、その間の護衛を頼みたい」
……なんか匂うな。できるなら断りたい。
「断ってくれても構わないが……ここで貸しを作っておいた方が、君のためにも良いと思うがね」
俺の心を読まないでくれ……。駄目だ、経験が違いすぎる。
「分かりました。引き受けます。それで、要人というのは?」
「ありがとう。助かるよ。それについてはこちらも少し手続きがある。一時間後にまたこの部屋に戻ってきてくれないか?」
「……分かりました。ではまた」
一時間ってあんまり余裕ないんだよなー。
俺はギルドを出ると小走りで図書館に向かった。
「いらっしゃいませ」
「おはようございます。『七大ダンジョンとその起源』を読ませてください」
「お待ちください」
司書さんから本を受け取り、空いている席に移動する。
頁をめくりながら、欲しい情報を探す。えーっと、どこだっけな……あった!
『嘆きの壁』では『怠惰』の呪いを受ける。
『奈落』では『強欲』の呪いを受ける。
『狂気の沼』では『色欲』の呪いを受ける。
『瀑布の祠』では『憤怒』の呪いを受ける。
『怨念の匣』では『嫉妬』の呪いを受ける。
『神々の塔』では『傲慢』の呪いを受ける。
『古の森』では『暴食』の呪いを受ける。
えーっと、これをメモして……。後でルシフェルに確認してもらお。
本を返却してギルドへ戻る。
「戻りましたよー」
何気なくギルマスの部屋に入ると、そこには――
国王がいた。
「ああ、ルゥ君。こちらの方が今回の依頼人『テルマ』様だ」
「……初めまして。ルゥと申します。よろしくお願いします」
「なぁに。そんなに畏まる必要はないぞ。わしなんて、しがない泡沫貴族じゃからのぉ」
このじじいまた身分を偽ってんのか? それなら話を合わせないと……。
「貴族の方の護衛依頼は初めてですので、至らない点があればおっしゃってください」
「ほう。よい心がけじゃ。気に入ったぞ」
いや、気に入らないでくれ。くそっ、余計なことを言ってしまった……。
「では行こうかの」
国王はよっこらせとソファーから立ち上がる。
「どちらに向かわれるのですか?」
「塔じゃよ」
※※※※※
「行ってらっしゃいませ」
俺は塔に入っていく国王を見送り、溜息をついた。
どうやら国王は定期的に塔への挑戦を続けているらしい。
いい歳して、見上げた根性だ。
ちなみにいつもの護衛もついているようなので、俺は本当に飾りの護衛らしい……。
「ここでただ待ってるだけってのもなぁ……。暇だ」
こんなに暇なのはいつぶりだろうか……俺がぼーっと空を眺めていると、半刻ほどで国王が戻ってきた。
「くそっ。ベヒモスの奴め……あいつの咆哮なんとかならんかのぉ」
ベヒモスか……82階層の階層主だ。確か……。
「尻尾を切り落として角を二つとも破壊すると、吠えなくなりますよ」
…………。
「なんじゃと!?」
あ!? しまった!
「よし、試してくるぞい!」
「あっあのっ!」
俺が制止する間もなく国王は塔へ飛び込んでいった……。
「まずった……」
二時間ほどして国王はホクホク顔で戻ってきた。
「ルゥと言ったか? おぬしのおかげで階層を更新できた! 礼を言うぞ。しかし……どこで攻略法を手に入れたんじゃ?」
来た……俺は待っている間に考えた最強の言い訳を披露する。
「ジークフリード陛下に伺いました!」
「ほう……あやつめ、そんな重要な情報をのぉ……」
国王の視線が鋭さを増す。
い、胃が痛い……。
「おぬし、ジークフリードの小僧とはどこで知り合ったのじゃ?」
「え、えっと、ソドムのオークションの時だったかな?」
「ほう……。実は儂もオークションに参加したのじゃが……おぬしの顔は見ておらんなあ」
「そうだったんですか……私も気が付きませんでした……すれ違ったんですかねー」
もうやめて、これ以上は無理だ……。
「おもしろい小僧じゃ、よし。飲みに行くぞい」
「えっ」
「ほれ、行くぞ。さっさとついてこんか」
国王はすたすたと歩き始める。
嘘だろ……国王とサシで飲むとか……地獄だ。
時間を戻せたりしないかな……そんな妄想を膨らませながら国王の後に続くのだった。
読んでくださってありがとうございます!
国王再登場です!そして努力家でした!国王のキャラも好きなんです( *´艸`)
そして相変わらず話術はポンコツな主人公……(笑)
それも魅力の一つととらえていただければ幸いです\(^o^)/
それでは、次話をお楽しみに(*‘∀‘)ノシ




