第一話 目覚め
始めまして!PONと申しますm(_ _)m
初めての作品ですが、自分も、読んでくださる皆さんも、共に楽しめる物語が書けるといいなと思ってます。
それでは!どうぞ、お楽しみください(*‘∀‘)ノ
「この世界を救ってくれないか?」
「い、嫌です」
目の前には、神々しい光を放つナニカが立っていた。その整った容姿も、圧倒的な存在感も、体中から発するオーラも、とても人間とは思えない。そんな存在が俺に世界を救ってほしいと頼んでいる……。しかし、混乱する俺の口から反射的にこぼれ落ちたのは、きっぱりとしたお断りの言葉だった。
……どうしてこうなった?
気まずい空気から逃げる様に、俺は今日起きたことを振り返った――
今朝、目を覚ますと、右手の甲に見慣れない紋様が浮かび上がっていた。
「……鍵? 嘘だろ……」
16歳になると誰もが神様から『恩寵』を授かる。ギフトは、この世界で生きていくための才能だ。授かったギフトによって、習得できる『特技』が決まっている。どれだけ努力しても、別のギフトのスキルを身につけることはできない。そして、ギフトを授かると体のどこかに紋様が現れる。剣士なら剣、魔術師なら杖――その紋様を見れば、どんなギフトを授かったのかだいたい分かる。
「鍵職人は……ないだろ……」
世の中には数え切れないほどのギフトがある。それなのに……俺が授かったのは世間で『ハズレ』と呼ばれるギフトだった。鍵の紋様……『鍵職人』のギフト。戦えないから冒険者にもなれない。鍵なんて必要とされないから職もない。誰もが『ハズレ』と呼ぶギフト。
……俺は、今日ほど神様を憎く思ったことはない。
「……行ってくるよ」
散々嘆き散らかしたあと、俺は重い足取りで家を出た。目指すのは、この街の中央にそびえる『神の試練』と呼ばれる塔。16歳になって、ギフトを授かると入ることができるようになる、この世界で『レベル』を上げることができる唯一の場所。これから生きていくために、モンスターから、そして、悪意を持つ人間から自分を守るために、嫌でもレベルを上げなきゃいけない。レベルが上がれば身体能力は上がるし、新しいスキルも習得できる。誰もがそうやって強くなり、この世界で生きていく。
……それなのに、俺が授かったギフトは『鍵職人』。
「はぁ……」
もう何度目になるかわからない溜息をつき、俺は足を止めた。目の前には、天高くそびえ建つ『神の試練』。そしてその周りには俺と同じく16歳の誕生日を迎えた者たちが、期待に胸を膨らませて集まっていた。
「俺は剣士だった!」
「聞いて驚け! 暗黒騎士だぜ! くっ……俺の左腕が、制御できない……!」
「よくわからんけどすげー!」
そんな嬉しそうな声があちこちから聞こえてくる。
……耳が痛い。
誰とも目を合わせないように、俯き顔を隠すようにして足早に塔の入口へ向かう。その時、俺の背中に聞きなじみのある声がかけられた。
「お? ルゥじゃん! ついにギフトを授かったのか?」
……この声は……幼馴染のグランだ。グランは俺より二か月早く16歳になり、上級職と呼ばれる『バトルマスター』のギフトを授かった。
『世界中のダンジョンを制覇しようぜ!』
俺とグランは会うたびに熱く語りあった。でも……その夢は、鍵職人では叶えられない。俺はグランの顔を見ることもできず、そのまま塔へ向かって駆け出した。
「お、おい! ルゥ!?」
背後から慌てた声が聞こえる。振り返る勇気はなかった。塔の中へ飛び込んだ俺は、その勢いのまま淡く輝く巨大な魔法陣へ足を踏み入れる。
その瞬間、ぐにゃりと視界が歪み、闇に覆われた――
「えっ……」
次に目を開けたとき、目の前には、この世のものとは思えないほど整った顔立ちのナニカが立っていた。人間離れした美貌。神々しい光をまとったその姿に、思わず息をのんだ。目の前の人物がゆっくりと口を開く。
「この世界を救ってくれないか?」
「い、嫌です」
…………。
気まずい沈黙が流れる……。
「この世界を救ってくれないか?」
……はっ。二度目の問いかけに俺は現実に引き戻された。
あれ? また、同じ質問? 今……断ったよな?
もう一度断ろうと口を開きかけた、その時――
「そう。この世界は、このままではあと数年で滅びへ向かう」
彼は一方的に話し始めた。
……この人? なんか、コワイ。
「具体的に言うとね。このまま何もしなければ、モンスターは爆発的に増え続ける。やがて人類は住む場所を失い、その大半が命を落とすことになる」
「そんなっ!」
いや、そんな馬鹿なことあるかよ。今だってたくさんの冒険者がモンスターを退治して、この世界を、俺たちが住む街を守ってくれているじゃないか。それに、モンスターが増えるなら王様だって黙っているはずがない。……そもそもこいつは何なんだ? 俺はなんでここにいるんだ?
彼は俺の目を真っすぐに見つめ、静かに告げた。
「君には、この世界を救う力がある」
そして、三度繰り返す。
「この世界を救ってくれないか?」
……は? 俺に世界を救う力があるだって? いやいや、何言ってんだ。俺のギフトは『鍵職人』だぞ? 戦えない、スキルも使い物にならない……冒険者にだってなれないじゃないか。そんな俺が、どうやって世界を救うっていうんだ!!
再び絶望しかけた俺に、その存在は静かに告げた。
「君の『鍵司』のギフトで」
か……鍵司?
聞きなれない言葉に、戸惑いながら問いかける。
「……鍵司? 鍵職人じゃなく?」
「そう。鍵司。君のギフトは鍵職人ではなく、鍵司だ」
「そ、その……よく分からないんですが……鍵司ってギフトは、鍵職人と何が違うんですか?」
恐る恐る尋ねると、彼はわずかに口元を緩めた。
「鍵職人は、鍵を作ることができる。鍵司は『開けて』『閉める』ことができるギフトだ」
……説明ヘタかよ。全然分からん。
「鍵司が扱えるスキルは、二つだけだ」
……たった二つ? 戦えないどころか、鍵職人よりひどくないか、それ。
「だが、その二つがあれば世界を救うことができるんだ。そして既に君はそのスキルを使うことができる。そうだろ?」
『スキル』
ギフトを授かった者だけが使える特別な力。俺のスキルは……。
「『開錠』と……『施錠』?」
「そう」
彼は満足げに頷いた。
「その二つのスキルは、この世のあらゆるモノを開錠し、あるいは施錠することができる」
「……意味が、分かりません」
我慢していた本音が漏れた。鍵を開ける。鍵を閉める。ただ、それだけじゃないか。そんなスキルで、どうやって世界を救えというんだ。
「あらゆるモノ。扉だけじゃない」
「魔法も」
「空間も」
「そして命すらも……」
「君は施錠することができる」
ゆっくりと紡がれたその言葉に、全身の毛が逆立つ。俺は眩暈を覚えつつ、からからになった喉で言葉を絞り出す。
「い……命? それは……俺のスキルで、モンスターを倒せるってこと、ですか?」
「そうだ。とはいっても一つだけ制限はあるんだけどね」
……制限?
俺の疑問を見透かしたように彼は続ける。
「鍵司に限った話じゃないんだけどね……基本的に、スキルは自分より高レベルの存在には効果が無いんだ」
ってことは……レベルさえ上げれば、本当に世界を救う程の力があるのか?絶望していた俺の心に一筋の光が差し込んだ。その瞬間、俺の脳裏に『世界中のダンジョンを制覇しようぜ!』と語るグランの笑顔が浮かび上がった。
「もう一度聞くよ? この世界を救ってくれないか?」
彼の問いかけに、俺は応える。
「……やります。世界を、救ってみます」
その瞬間――
『ここに契約は結ばれた』
彼ではない、何者かの声が頭に響き、俺の体はまばゆい光に包まれた。
「うわっ!」
眩しさに思わず目を閉じる。そして光が収まると左手の甲が熱を帯びていた。
「……翼?」
六対の翼。
左手の甲に現れた新たな紋様。神々しく輝くその紋様は、右手の鍵とはまるで違う存在感を放っている。俺が驚く姿を見て、俺の人生を変えたナニカはやわらかい笑みを浮かべていた。
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