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Z1000MKⅡを筆頭に、旧車を引き連れて駐車場の前に止まった。
その者は大柄で、黒髪パンチパーマ、目が小さく、眉毛がないことが相まって人相が悪い。
黒の作業着で襟を立たせ、ダボダボのニッカを履いており、背中にバットケースを背負っていた。
後からCB250、dsxインパルス、Z400FX等が次々と停車し、あっという間に道路を封鎖してしまった。
ざっと見て数はこちらよりも多く、ナンバーを確認すると“会津”の文字があり、部下たちは一気に殺気立った。
エンジン音が鳴り響く中、 ヤンキーたちは一斉に降り、眉間にシワを寄せながらこちらと睨み合う。
トップらしき人物が推し進み、遊佐達の前に現れた。
「アンタがこのチームの頭?」
「そうだけど?」
「どうも、俺は江流暴の頭張らしてもらってる曳地ッつー者だけど、最近こっちに来たばっかの新参者なんで、挨拶に来させていただきやした。
以後、よろしく」
1人1人に目を通して嘲笑い、遊佐に目が止まる。
「いやァ、あんたの噂は会津まで轟いてるで。
“逃げ脚の遊佐”だべ?」
その時、曳地の安い挑発によって、一気に同火線に火がついた。
「んだとゴラァッ!!」
「もういっぺん言ってみろや!!」
部下達が触発され、詰め寄る前に取り巻きに阻まれてしまう。
「やめろ、お前等」
遊佐が止める前に、佐島が冷静に圧をかけると、周囲の奴等がグッと堪え、相手を血眼で睨みつけた。
「ハルに恥かかせんな」
佐島の覇気で一気に周りが凍りつく瞬間を目の当たりにした曳地は、さらに口角が上がった。
「もしかして、アンタが佐島司?」
「へェ、オレを知ってんの?」
「そりゃあ、会津でも有名だで。
“脳筋”だってな」
癇に障る発言を気にせず、互いに微笑む。
「いやァ、まさか一度に山王の2人に会えるとは思わなかったで。
今夜はついてるな。
それで? あと1人どこにいんの?」
曳地の問いかけに佐島と遊佐の空気が止まった。
「確か山王ってのは3人いるって聞いたで?
“拳客”、“飛脚”、そして“道楽”――。
是非、道楽にも挨拶しときたいんだが――」
「あいにく、道楽は自由奔放でな。
オレ等も連絡先はおろか、居場所も知らねェんだよ」
「マジかァ、そいつは残念」
遊佐が代弁すると、曳地はあからさまに落ち込みだした。
「なあ、“道楽”って誰だ?」
「バカ野郎ッ!! 不良のくせにンなことも知らねえのかッ!?」
新人が小声で隣の奴に聞くと、彼はあまりの無知さに驚愕してしまう。
「道楽は、滅多に人前に現れない都市伝説的存在だ。
過去にたった一人で不良50人を相手にし、無傷で壊滅させ話なんて超有名だぞ」
「ごッ――!?」
あまりの数に言葉を失う新人。
「数少ない目撃証言によると――」
――当時、ヘルメットをかぶり、白いウェアを着た者が不良達の前に現れては、全ての攻撃をかわし続けていた。
その姿は、まるで戯れているかのようだったという。
やがて、奴に触れた者は次々と倒れていき、最後に立っていた者は奴だけとなった。
奴の周りには白いモヤが立ち昇り、そのまま姿を消した。
その後、不良達の疳之虫が消えており、二度と顕現出来なくなってしまった。
この噂は一気に広がり、いつしか奴のことを“道楽”と呼ぶようになった。
「――えッ!? 疳之虫を消すって、可能ッてか、この世に存在すんのかよ!?」
「佐島さんが言ってたろ。
そういう組織があるってことは、いるんだろ…」
新人は愕然としてしまい、開いた口が塞がらなかった。
「そういや、そいつ疳之虫を祓えるそうじゃねえか。
実際どうなんだで?」
「さあ? どうかな?」
遊佐がはぐらかすと、曳地が陽気に笑い出した。
「かッははははッ!! そうかで!!
こりゃ会うときが楽しみだで!!
なァ、お前等ッ!!」
自分の部下達に声をかけて嘲笑う。
「そんじゃ、今日のところはこの辺で御暇させてもらうべ!!
今後、何かしらで世話になるかもだし、その時はよろしくということで。
そんじゃ、お邪魔しやしたァ!!」
曳地は2人に視線をやり、意味深なセリフを残して背中を向けた。
「ちょっと待てよ」
すると、佐島が急に呼び止めた。
「それ、何よ?」
佐島がタバコで指した先は、曳地の背負っているバッドケースだった。
「そりゃあ、“相棒”だべよ」
それを聞いた曳地の部下達はおかしく笑い、彼もその場から離れていった。
やがて、バイクに跨り、爆音とともに走り去っていた。
残された我武者羅一同は、皆緊張の糸が切れて一息ついた。
「…どう思う?」
「ほぼクロだろ、 あんなん」
返答に表情が若干険しくなる遊佐。
「GW荒れるな…」
つい先程まで予定が無かった佐島だったが、たった数時間で埋まってしまったのであった。




