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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
一章
9/368

職業を決めよう

「職業の変更ですね?」


 翌日、酒場にて。

 この先の方針として、まずは俺の職業を変えようということになった。

 ナビ子の案内で酒場に訪れた俺とナビ子は、店内の中央に設置されていた女の子聖職者の受付員に職業の変更を申し出る。


「こちらのご利用は初めてのお方ですね?」


「は、はい。初めてです。あの、職業を変えたいのですが」


「神に導かれし旅人よ、ようこそおいでくださいました。こちらでは、職業の神に仕えし聖職者である私共が、旅路を歩む皆様の支えとなれますよう精一杯のお力を込めて役目を努めさせていただきます。それで、職業の変更は初でございますね? それでは、この私共が貴方様に相応しき職業を選択できるよう、まずは職業の神からの御信託を受け賜ってまいります。少々のお時間をいただくことになりますが、何卒ご了承くださいませ」


 一連の説明を終えた女の子聖職者は、息をつく間も無くその場で祈りを捧げ始める。なんか、本格的だな。

 どうやら、少し時間が掛かるということらしい。というわけで俺はこの待ち時間にでも、隣で律儀に佇立しているナビ子へ質問を投げ掛けることにしてみた。


「なぁナビ子。このゲーム世界には、一体どんな職業が存在しているんだ?」


「はい、職業の種類ですね。検索――完了。はい、それで、職業の種類という質問でしたね。それに対してですが、この情報には未だに不確定要素が含まれているため、これからワタシが挙げる職業の行方はとても計り知れません。なので、今現在に存在が確定している職業の一部のみを挙げさせていただきます。なお、ご主人様の意向通り、現在に存在している職業を挙げていくため、それが必ずしも現在のご主人様が就職可能な職業であるという保障はありませんので予めのご了承を」


 予めの忠告を挟んだナビ子。

 頭の中で整理させた言葉の数々を並べているのだろうか。思考をめぐらせる時間を設けたナビ子は、胸に手を当てたままふぅっと一息を入れてから再び会話を始める。


「現在、この世界に存在する職業の一部を順に挙げていきますと――剣士、ウォーリア、グラディエーター、フェンサー、ソルジャー、バーサーカー、魔法戦士、拳闘士、モンク、武闘家、拳魔闘士、ナイト、ロイヤルガード、パラディン、ガーディアン、アーチャー、ガンナー、ハンター、スナイパー、シューター、ボンバー、レンジャー、エージェント、アサシン、シーフ、ファントム、ダークロード、ダウナー、聖職者、ビショップ、プリースト、バルド、スリーパー、魔法使い、ソーサラー、コンジャラー、召喚士、アルケミスト、エレメンタリスト、ランサー、ビーストテイマー、踊り子、冒険者、メカニカル、トリックスター……他にも職業は存在しておりますが、ひとまず挙げるのはこれくらいといたします」


 いや、これくらいという比じゃないだろ。

 一気に押し詰めてきた情報量に、思わず頭が混乱してしまいそうになる。これがこの世界に存在する現在の職業……の一部と言うのだ。いや、さすがに冒険するにはちょっと多すぎやしないか?


 レベル上げというか、経験値を積んでいくのが大変そうだ。そんなことを考えながらも、俺は先程に挙げられた職業にある程度の目星をつけておく。よし、この職業でいってみようか。


「神からの御信託を受け賜ってまいりました。お名前はアレウス・ブレイヴァリー様ですね。たった今、神からのお告げが届きます――はい、ただいまをもちまして、アレウス様に職業の加護が信託されました」


 まぁ、要は俺の存在が神に認められたということだろうか。

 空から落ちてきた全くのよそ者を受け入れてくれるだなんて、なんて寛容な神様だこと。


「よって、これからは私共のもとにて自由に職業を変更することが可能になりました。今後はお手数やお時間をいただくことなく、迅速に職業を変更することができます。それでは、さっそく職業選択へと移っていきましょう」


 職業の変更が自由にできるようになった。これで俺はこの世界で職を持つことができる。

 さぁ、この職業変更というRPGゲームの醍醐味の一つを、これから味わっていこうじゃないか。


「今現在、アレウス様が変更可能である職業は――」


「は、はい、はい! 俺、バーサーカーになりたいです!!」


 ナビ子から聞いた職業の名前を忘れぬ内に、俺は身を乗り出して職業を指名。

 そんな俺の勢いに一歩退く女の子聖職者。その唖然とした表情に若干ながらの困惑が伺える。急に驚かせてしまってすみません。


「バーサーカー……でございましょうか?」


「はい! バーサーカーになりたいですっ! 名前からしてとても強そうなので!!」


「えっと、ですね……職業:バーサーカーはウォーリアのスキル:狂戦士の加護を習得しておられていないと転職することができません……」


「え。あ、そうなんすか……」


 申し訳なさそうに答える聖職者。恥をかいた俺。

 勢いが勢いであったため、気まずい空気が流れる。脇からは、先陣を切って恥をかいた俺を凝視する無心の眼差しが突き刺さってくる。


「……ワタシ言いましたよね。それが必ずしも現在のご主人様が就職可能な職業であるという保障はありません。っと」


 ナビ子も恥ずかしかったのだろう。控えめながらも俺を責める調子で、ちょっと眉間にシワを寄せている。

 ごめんな、こんな恥ずかしいご主人様で。そう自嘲した俺は、それじゃあと次なる希望の職種を指名することにした。


「じ、じゃあ、ファントムになりたいですっ! 名前からしてとてもカッコいいので!!」


「ファントムですね。それでは、幻影の書を私共へお見せください」


「……幻影の書?」


 唖然とする俺の脇で、ナビ子は頬を赤らめながら視線を逸らす。


「ご主人様。先程のバーサーカーや先日のビーストテイマーのように、未開放である職業を開放するには各それぞれに応じた必須となる条件が備わっております。今回の職業:ファントムの場合でありますと、この世界の何処かに存在するアイテム:幻影の書を所持していなければ職業:ファントムを開放することが不可能となっております」


 まさかの二回連続の空振り。アンロックにアイテムが必要な職業ということは、よほどなまでに強力な職業ということなのだろうか。まぁ、名前からして強そうだもんな。

 続けての恥で後が無くなった俺。それでも素直に身を引けない謎の闘争心によって、俺は最後の大博打に出る。


「そ、それじゃあメカニカル! メカニカルになりたいですっ!! 名前からしてとても面白そうなので!!」


「メカニカルですね。それでは、アクーラ博士からの紹介状をお見せください」


「アクーラ博士……?」


 視線を逸らしていたナビ子がより頬を赤らめながらも、何かを吹っ切ったかのように俺のもとへと振り向いた。


「人物:アクーラ博士。現在の時点では、兵器の研究と開発に資金と人生を費やす一匹狼の一流研究員です。アクーラ博士との遭遇は中盤から終盤以降と設定されているため、現地点で遭遇することはほぼ不可能でしょう」


 見事なまでの、勢いをまとった空振り三振。この大恥を目撃し、さすがの聖職者も苦笑いで返答。

 目を輝かせて希望していた俺の姿。この彼の勇士も傍から見たら、ただの恥ずかしい旅人そのものに違いなかったことだろう。


 そんな目の前の旅人の希望をことごとく否定していく聖職者も、なんだかすごく申し訳なさそうに苦笑いしていた。


「アレウス様、とても面白いお方ですね」


 ナビ子に喋り掛ける聖職者。その苦笑いには、優しさが込められていた。そんなナビ子は顔を赤く染めて俯いてしまう。

 恥をかかせてごめんなナビ子。そして、その温かな心遣い、ありがとうございます聖職者さん。

 

 恥と申し訳なさに頬を赤らめる俺とナビ子。もはやこれ以上の高い理想を求めることをやめた俺は、渋々ながらも一番シンプルな職業で妥協することにしたのであった。

 ……待っていてくれナビ子。俺は必ず名誉挽回として、この聖職者さんの前でバーサーカーとファントムとメカニカルに転職してみせるから……。


「……じゃあ、剣士になります……」

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