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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
二章
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探索、フィールド:哀愁平原・ハードボイルド

「……ここが新たなフィールドか」


 地平線の彼方から差し込んでくる黄金の黄昏と。それによって辺り一面を覆い尽くす暗黒の黒が。

 空は赤と黄の混ざる鮮やかな緋色を帯びており。煌びやかな金色と視覚を遮る黒の二色が大半を占めるフィールド:哀愁平原・ハードボイルド。


 ここは黄金と漆黒からなる、暗雲に迸る雷撃の如き色合いのみで形成されていて。黄昏と影の領域とも呼べるであろう、ひどく煌びやかな自然からの洗礼をこの全身に受けて。

 拠点エリア:黄昏の里から出たことによって、俺は今、この未開拓地に足を踏み入れたところであった。


「ご主人様。状態異常:盲目を治癒するアイテム:スッキリパッチリと、音属性に耐性を持つプロテクターの装備も未所持のままでございますが、本当にこのフィールド:哀愁平原・ハードボイルドの探索を開始なさるのですか?」


「確かに、それらのアイテムを持ち込まずにこのフィールドに出てきたのは無謀に近しいものではあるが。まぁ、探索と言っても、ほんの散歩がてらみたいなものだからさ。ちょっとその辺を歩いてきて、ちょっとモンスターを見てきてからすぐに帰ってくるつもりだし、きっと大丈夫だろう」


「そうでございますか」


 不安な面持ちでありながらも、俺の言葉を信じて意を決した表情を浮かべるミント。

 当の本人である俺は気軽な散歩程度の認識ではあるものの、それでも主人の身を案じてくれるナビゲーター。ミントには悪いものの、正直とても嬉しかった。どうやら、俺は人選に恵まれているようだ。


 ……と、一人勝手なことを考えていたその脇から、再びミントがこちらに問いを投げ掛けてきた。


「ご主人様。武具の強化やスキルの習得も、問題はありませんか?」


「あ、あぁ。大丈夫だよ。ほんと、気分転換をするための、ただの散歩なだけだからさ」


「そうでございますか……」


 とても不安そうだ。そんなミントを見ていると、なんだか俺まで不安になってくる。

 ……まさか、ミントがここまで心配するほどにまで、ここに生息するモンスターはそれほどの強力な個体ということなのか……?


「……まぁ、すぐに帰ってくるから。それじゃあ、ちょっとこの平原を見て回ってみるとしよう」


 言って、歩み出す俺にトコトコと控えめな駆け足で後をついてくるミント。

 ミントというナビゲーターを引き連れた、実質ソロパーティーの状態で。俺は、このフィールド:哀愁平原・ハードボイルドの探索へと参った――




「……にしても、眩しいなおい」


 東の方角からひどく照り付けてくる黄金の夕日は、あまりのその輝きによってこの平原全体を漆黒の影で染めてきている。

 それによって、見渡す限りの周辺はほぼ真っ黒。遥か向こう側にそびえている山も黒一色。腰までの高さにまで伸びたこの雑草の一帯も闇のように黒くて。真っ黒な雑草に埋もれながらもひたすら後ろをついてくるミントに関しては、もはやシルエットと同等な状態。


 ……そして、空を飛びながら、そのもの悲しい気持ちにさせてくる鳴き声を発するカラスも……って、あれは元々真っ黒か――


「ご、ご主人様ぁっ」


 がさごそと雑草を掻き分ける音が後方から響いてくるだけで、ミントの姿はどこにも見当たらなかった。

 あぁ、これはユノと来てもすぐにはぐれるだろうなと。そんな嫌な予感を既に感じながら。完全に互いのシルエットな姿を見失った俺達は、まずはとその姿を確認し合うための合流を目指す。


「大丈夫だー。待ってろーミント。すぐに見つけてやるからなー」


 焦りで、すでに泣き出しそうなミントの声音を聞いて。なだめの言葉をかけながら、引き返しては雑草を掻き分けてミントの姿の捜索へと移る。


 ……にしても、だ。この哀愁平原・ハードボイルド。やっぱりさすがに序盤で訪れるにはちょっと早過ぎたような気がするんだ。


 こんな、ある意味でとても過酷で。出没するモンスターの特徴も、炎属性や水属性といったシンプル且つ定番な属性というわけでなく、音属性と盲目状態を使いこなすというこれまたトリッキーな属性を宿す面子が揃っているらしいじゃないか。

 そんな、音属性と言われたって、正直なところその攻撃手段が全く思い付かない。オオカミ親分の咆哮のように、質量を宿した音圧でこちらを吹き飛ばしてきたりするのが音属性というものなのだろうか……?



 ……っと、我ながら、目の前に対する物事ではなく、つい他のことに関する思慮をめぐらせてしまっていたものだったから。俺はミントの存在にも、この哀愁平原・ハードボイルドにも意識を向けることができなかったのだ。


 そう、ここはゲームの世界であり。RPGゲームというものは、フィールドを歩いている限りはある一定の感覚で、遭遇というイベントと鉢合わせになるものなのだ。

 探索を、ただの散歩がてらと言っていたが、全く。どうやら俺は、これまでの冒険で、この世界における危険性というものを何一つ学んでいなかったらしい――


『ガルルゥッ!!』


 威嚇。ふと耳に入れた物音。

 その瞬間。俺の背後から気配が現れ、すぐさまこちらへ飛び掛かってきたのだ。


「――ッ!!」


 瞬時にブロンズソードを取り出し、前転による自主的な回避によって間一髪その攻撃を避ける。

 背の高い雑草の中を転げて。視界は陰の暗黒世界を捉えながら。視線を上げた先には黄金と黒の領域という光景と……。


「ご主人様! こちらのフィールド:哀愁平原・ハードボイルドに生息いたします野生のモンスターとエンカウントいたしました! これにより、戦闘の場面へと移行します!!」


 球形の妖精へと姿を変えていたミントの状況説明を挟むと共に、俺はこの新たなフィールドにおける未知なる新たなモンスターとの戦闘が始まった――――

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