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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
四章
302/368

エリアボス:天叢雲剣 ③ 3661字

 こんな場面においても、ダークスネイクとはまるで連係が取れず。むしろ、そのあまりにもな息の合わなさで、仲間同士で疲弊し合っているように見えなくも無い上に。……エリアボス:天叢(アマノムラ)雲剣(クモノツルギ)は、容赦無しと振るい続けるその右腕に加えて。漆黒に染まる異様に発達した腕を使用した、新たなる攻撃手段を展開し始める。


 エリアボスの新たな行動によって、主人公アレウスは今以上もの苦戦を強いられることとなったのだ。



 異様に発達した漆黒の筋肉が、ぶくぶくと泡のよう隆起し始める。

 あからさまにただならぬ雰囲気を醸し出すエリアボスにより一層もの警戒を強めて、次なる行動に備えてポーションを取り出して口に含んでいくその最中にも。天叢(アマノムラ)雲剣(クモノツルギ)は悪魔の如き雄叫びを上げると共に漆黒のオーラを纏い出し、足元から湧き上がる殺意の中から眼光を覗かせてくる――


「うろちょろと召喚獣で攻撃をしやがって。ッハ!! "てめェら"の好きになんざ、これ以上させて堪るかってのッ!!! 生憎とオレぁよ、こんなところで時間を食っている場合じゃぁねェんだ。んだがよォ、この久々の運動でまァ段々と感覚が戻ってきたってものよ。……いいか、人類共。この力が、この風国に蔓延る残忍且つ冷酷な人類という生物を悉く喰らい尽くすんだ。"てめェら"はこいつに蝕まれ、オレの糧となり、『魔族』の繁栄の礎となる栄誉へと成り代わる。――感謝をするんだなァ憎き人類共ッ!! 今より、オレは更なる能力を開花させ! この風国に存在する総ての生命を堪能させてもらうッ!! "てめェら"は、オレに無残にも喰われて華々しく散っていくんだ。"てめェら"は、オレの源となって『魔族』の繁栄に貢献をするんだ。"てめェら"全員、即刻皆殺しだってんだよォォォォォオオオオオオォッッ!!!」


 瞬間、エリアボスの全身から飛び散り出した、大量の黒の飛沫。同時にして目にしたのは、異常に発達していた両腕から、骨が砕けるような音を鳴り響かせながら。漆黒に染まる両腕が、地に伸びる影のように伸び始めて、遥か遠くを飛来していた大蛇を殴り飛ばしてしまったその光景。それをキッカケとして。縦横無尽と、無辺際と飛び交う大蛇をも打ち落とす。伸縮自在と伸びては縮んで振るわれる、超広範囲となる強力な両腕の拳が周辺へと炸裂し始めたのだ。


 邪悪なる能力によって、凶悪な攻撃範囲を誇るモーションを開放したエリアボス:天叢(アマノムラ)雲剣(クモノツルギ)。殺意に満ち溢れ、この世の全てを憎み猛るヤツのモーションは、もはや到底近付ける隙さえも無い、ゲームバランスの崩壊を招いていることは確かだった。


 この頂上のステージの、端から端まで届いてしまうヤツの両腕の攻撃を辛うじて回避しながら、それでも接近するための隙をうかがっていく。

 ……しかし、振るわれる腕から飛び散る黒の飛沫は健在であり。しかも、伸縮自在となった腕によって、ステージの端から端まで届く攻撃範囲でそれを振り撒かれるものだから。近付こうと駆け出したところで、足元や宙に飛び散る黒からもまた、異常なリーチを誇る腕が突出しこちらの行動を妨害してくるというギミックの強化が施されている。


 ――画面には、邪悪なる異常な腕に埋め尽くされた、禍々しい光景が繰り広げられていた。どこへ視点を向けても、そこには天叢(アマノムラ)雲剣(クモノツルギ)の腕が不規則と突出している。


「……ッ!! 近付こうにも、こんなことをされ続けたら近付けもしない……ッ!!」


 黒の飛沫を見切ることで精一杯であったこの現状。それに加えての、前方から振るわれてくるリーチの長い両腕の攻撃を潜り抜けて。回避コマンドから一向に手が離せないこの状況を前に、スタミナが枯渇してしまう。


 ……しかし、主人公アレウスに襲い掛かる猛威は、まだまだ序の口だった。そんなこちらよりも、この状況により一層もの苦戦を強いられてしまっていたのは、ダークスネイクの方だったのだ……。




「てめェェェェェェェエッ!!! 何が傭兵だァ!? 何が契約だァ!?? 何が信念だよこのクソ野郎ォォォォォォオオオオオォッ!!! 元はと言えばなァァ!! てめェが裏切りさえしなければ、"オレら"は今も風国を支配下に置いて、約束されし平穏で皆と笑い合っていたハズだったんだよォォォォォオッ!!! それなのに……それなのに!! てめェが"オレら"から平穏を奪い去りやがってェッッ!!! てめェだけは蝕んで喰らおうともそれだけで絶対に許せるもんか!!! てめェの皮を剥ぎ取って人類を屠る儀式に用いる仮面にしてやる!!! てめェの肉を燻製にしてモンスターへの撒き餌にしてやる!!! てめェの骨で串刺しの杭を作り上げて人類共をぶっ殺す処刑の道具にしてやる!!! てめェの首を晒し上げて人類への見せしめとしてやるゥゥゥゥゥゥゥゥァァァアアアアアアアァッ!!!!」


 驚異的なリーチを誇る邪悪の両腕と、それによって飛び散る黒の飛沫と突出する腕が、ダークスネイクに集中して襲い掛かっていく。

 大蛇を召喚する余裕などは皆無であり、それへの回避に専念していく彼。その猛攻はとても目で追い付けるものではなかったが、それを冷静に回避で対応していくダークスネイクの姿は、さすがは経験があると自負していただけはあったものだ。


 しかし、邪悪なる力を前に、彼ももうもたないことだろう。

 ……こんな時だからこそ、互いに助け合う仲間だ。中々と息の合わない仲間ではあるが、それもまた、より一層と彼という存在を意識する要素であることも確かであるから。彼のピンチを目撃したその時にも、この身体は自然と走り出していた。周囲に飛散する黒の飛沫を掻い潜り、この視界の中心に捉えた彼の姿へと真っ直ぐ駆け付けていく。


 待っていろ、ダークスネイク。今、俺が助けてやる。

 仲間の窮地を救いたい。その勇気の感情と共鳴したブレイブ・ソウルの力を引き出して一気に加速するこの身体。


 手に持つクリスタルブレードを握り締めて、ダークスネイクのもとへと全力で走る。その間にも、眼前からはエリアボス:天叢(アマノムラ)雲剣(クモノツルギ)が振るう異常な発達を遂げた伸縮自在の両腕が襲い掛かり。それに連動して振り撒かれる黒の飛沫からの猛攻もまた、なんとか掻い潜りながら着実とダークスネイクへと近付いていくのだが。……ダークスネイクに私怨を持つエリアボスは、未だとその標的を彼へと定めて猛攻を繰り広げ続ける。


 自らが疾風となって駆け出していくこのステージ。それと同時にして、懐からミントの声が響き出した。


「ただいま、エリアボスの情報に関するスキャンを終えましたので、こちらのスキャンで得た情報をご主人様にお伝えいたします!! 今現在と相対するエリアボス:天叢(アマノムラ)雲剣(クモノツルギ)でございますが。まず、その邪悪なる能力に身を包みしエリアボスの耐性が、少々と特殊であることが判明いたしました!! 詳しくとお伝えいたしますと。相対するエリアボス:天叢(アマノムラ)雲剣(クモノツルギ)は、今現在とこちらのゲーム世界に存在するあらゆる状態異常に完全な耐性を有しております!! その関係上、天叢(アマノムラ)雲剣(クモノツルギ)に状態異常の効果は付与されることが決してありません!! 状態異常は一切無効です! 留意ください!! ――次に、エリアボスの属性は闇属性のみ! 闇属性は、その禍々しき暗黒の力が凝縮された非常に強力な属性であり。闇属性に付与する追加効果、状態異常:暗黒は、発症した相手の精神を蝕むことによる、精神力の弱化を促す危険な効果が宿っております! ゲーム世界におけるそちらの効果は、精神的に打たれ弱くなる、メンタルの不調といった心身の弱化を促します。システム面における効果は、視界に漆黒の靄がかかり視界不良といった効果をもたらし。又、状態異常:暗黒の状態では、メンタル不調を促す効果の影響により、感情が非常に揺らぎやすくなります! 効果の影響は、ブレイブ・ソウルに深刻な影響を与えます。その内容は……状態異常:暗黒を発症する間、ブレイブ・ソウルのゲージが溜まらない、というもの。ブレイブ・ソウルはご主人様のみが有する至極強力なシステム! 暗黒は、実質こちらのシステムの封印とも呼べるでしょう。どうか、闇属性にお気を付けくださいませ!!」


 闇属性に宿る状態異常:暗黒。メンタル不調を促すというこの効果は、感情の揺らぎによってブレイブ・ソウルのゲージが溜まらなくなる。

 ブレイブ・ソウルというシステムが開放されたことによって、その状態異常もまた解禁されたのだろうか。こちらの言動に合わせて変化を伴うこのゲーム世界のフラグというシステムを、改めて思い知らされた気がしたものだ。


 ミントからの助言をもらいながら、ダークスネイクを助けるべく前へ前へと突き進んでいく主人公アレウス。

 ……この後にも、主人公アレウスは邪悪なる能力の真骨頂を目撃することとなったのだ――――



【~次回に続く~】

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