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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
四章
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ウェーブ四:息の合わない最悪コンビ 3483字

「……悪い。悪かった。今までさ、こんな目覚しい活躍をしたことが無かったものだから。……つい、調子に乗ってしまったみたいだ」


 ブレイブ・ソウルの輝きの虜となり、水縹(みはなだ)がもたらす強力な力を振り撒いた周囲への影響。それによって大きな迷惑を皆に掛けていたことを知らず、無双の快感に浸る自己中心的な行動の数々で味方の妨害も行ってしまっていた。


 それには反省をしている。自身の行いを省みて、その意を示すためにダークスネイクへと謝った。

 そんなダークスネイク。深く息をついて、若干と遣り辛そうな様子を見せながら。後頭部に手をあてがい、そう言葉を口にしたのだ。


「っ随分と素直に聞き入れたな。貴様のような奴に限って、ちんけなプライドが邪魔をし、聞き入れ難いといった反抗的な態度をズケズケと大っぴらにするものだが。どうやら貴様にこれ以上もの手を焼くことは無さそうだな。――尤も、貴様は我が好敵手。すなわち、我は貴様の好敵手。好敵手同士の縁もあり、貴様の気持ちは我としても分からなくもないものだ。ということだ。おいらの召喚獣の邪魔は、もうしないでほしいものだな」


「気を付けるよ……」


 呆れ気味にそれらを口にするダークスネイクだったが、その陰りのかかった表情からは柔らかなものを感じ取れて。


 その言葉を最後にして、再び戦線へと復帰する二人。

 ダークスネイクは両腕に魔法陣を生成して、大蛇を更に召喚するための儀式と思われる大袈裟な動作を始め出し。こちらもまた、ブレイブ・ソウルを発動しては水縹を身に纏い、敏捷のステータスを増幅させては加速した足で駆け出していく。


 ――そして、互いの気持ちを解り合えたことによる、仲間と共に織り成す連係を披露し始める。……ハズだったのだが…………。




「我が内に宿りし信念の深遠を根城とする、魔の結界を伝い空間を無辺際と渡り獲物を残酷に喰らう純黒と銀灰の凶暴なる蛇竜よ!! 今ここに、新たなる天地を創造する!! さぁ、集え。神々をも侵食する激烈なる猛毒を以ってして。あらゆる生物を喰らう破壊の申し子として。破壊と猛毒のスパイラルを今、ここに実現すッ!!!」


「ブレイブ・ソウル:敏捷!!」


 ダークスネイクの召喚と共に、散りばめられた魔法陣から大量の大蛇が姿を現し。それらは一斉に周囲へと飛来しては、『魔族』を頭突きで吹き飛ばしていく。

 なるほど。周囲への影響も考えてなのか、それで毒を用いた攻撃は仕掛けないのか。と、先にも一喝受けた言葉をきちんと遂行するダークスネイクに感心を抱き納得をした。


 ――ものだが。その直後、この駆け抜ける足元の横から現れた、小さな蛇の姿に心臓をキュッと締め付けられるような感覚を覚える……。


「!! ッ、づァ――?!」


 次の時にも、それに躓いて盛大に宙を舞った。

 加速した速度を纏った盛大なずっこけ。ズコーッと空中でコミカルなモーションを繰り広げてしまい。突然のアクシデントと直面して驚きの感情を抱いたその瞬間にも、この身体は土煙を撒き散らして地面をゴロゴロと転げ回っていたものだ。


 ……おいおい、ダークスネイク……。

 ふつふつと湧き上がってきた感情。すぐさまと立ち上がり、土煙の中から彼へと言葉を投げ掛けていく。


「ッうぉい!! スネイク!! い、今のはさすがにお前がいけないだろッ!?」


「んッ?! いけないもなにも、貴様が勝手においらの召喚獣に突っ込んだからそうなったんだろッ!!」


「いや!! 今のは、そっちから俺へ突っ込んできた!!」


「いちいちと噛み付くんじゃねー!! 今は命を懸けた戦いの最中だッ!! いいから目の前の戦闘に集中しろってんだ!!」


 ……キリがない。

 さすがに今のは……。そんなことを考えながらも、返答の雰囲気からして彼にも悪気が無いことは確かであったために。再びとブレイブ・ソウルを宿して敏捷を上昇させ、改めてと駆け出していく。……のだが、そんなところで、またしても目の前をあの大蛇が横切るものであり。なんだか嫌な予感がしていたものでふと立ち止まってみていなかったら、またもやあの大蛇と衝突をしてしまっていたことだろう。


 ……それにしても。なんだ、この遣り辛さは……?

 まず、ダークスネイクというNPCと関わること自体が、互いに命懸けの戦闘を交わしたという苦い経緯から、複雑な関係である仲で実に会話のし辛いものとなってしまっているというのに。ヤツが絡む共闘というものは、どうしてもやる事なす事が端から上手くいかないように思えてしまえる。

 ……そして、どうやらその考えはあちらも同じようであり、ダークスネイクもこちらに複雑な心境を抱く微妙な遣り辛さの表情を見せていたものだ。


 まぁ、それを考えていたところで仕方が無い。

 気持ちを切り替えて、再びブレイブ・ソウルを発動させては加速を行い『魔族』へと駆け付ける。


 目の前には、人間の勢力に押されて戦意を失いつつある、逃げの姿勢の『魔族』達。今なら、手こずることもなく"彼ら"を倒すことができるだろう。そう考え、手に持つクリスタルブレードに橙の光源を宿しては、ブレードスキル:パワーブレードの一撃で薙ぎ払ってやろうと飛び込んで剣を振り被った。


 ――その直後。


「ブレードスキル:パワーブレード!!」


 広範囲に渡る攻撃範囲を持つ強力な一撃。

 こちらの目論みとしては、この一度の攻撃で『魔族』達を怯ませ、そこで生まれた隙にも一気に畳み掛けて一掃してやろうと思っていた。


 ……だが、薙ぎ払ったその直後。視界の脇から横切ってきた爬虫類の身体――


 次の時にも、パワーブレードは一匹の大蛇に直撃してしまっていた。

 突然の妨害に度肝を抜かされて。驚いてしまい意識が散漫となってしまった際にも蛇の悲鳴が響き出し。ダメージを受けた蛇は、逃げるように慌ててそこを退く。

 ――が、大蛇が退いた向こう側から飛んできた『魔族』の斧。大蛇の陰になっていてまるで見えなかった攻撃は、投げ込まれたのだろう回転を帯びた邪悪なるそれを回避する余裕も無く。次の時にも、全身に走り出した、裂けるよう縦に伸びたダメージの衝撃と。HPが一気に減少する感覚と共に、この身は遥か後方へと吹き飛んでしまう。


 ……今も、実は既にこの身体は真っ二つとなってしまっているんじゃないか。それほどの錯覚を覚えるまでの邪悪なる侵食を受けて宙を飛んでいく。の、だが……それ以上にも、この……ふつふつと湧き上がる感情に。向けた意識は、とても大ダメージを受けた自身の身どころではなかったものだ…………。



 地面を転がり、大ダメージに加えての追加ダメージに呻きながら。ポーションを取り出し飲み干して回復をしてから。……頭に上ってきた熱い感情と共に、彼へと、また言葉を投げ掛けていく……。


「ッ…………スネイクぅ!!」


「んなァッ!! やはり、貴様には手を焼くなァ!? んなに、おいらの召喚獣の邪魔をしてきた挙句に! おいらの大切な蛇竜を攻撃してくれてんだ貴様ぁ!! あれほど邪魔をするなって、おいら、さっきからどれほど忠告をしているか――」


「あぁ勿論、さっきまでは俺が悪かった!! 知らなかったんだ、皆に迷惑を掛けていたことを!! そして、今は反省して、心を入れ替えて立ち回りを意識するようにもなった!! ……だけど! これらの事柄はさすがに、スネイクの大蛇が俺の足を奪ったり攻撃を遮ったりしているようにしか見えない!! あぁ今まで俺が邪魔をしてきたから、今度はこっちが邪魔をしてやるっていうささやかながらの仕返しなのか!? だったらそう言ってくれよ! 俺はまた謝るから!!」


「んこの好敵手がっ……!! 我が蛇竜に感情任せのいちゃもんを吹っ掛けるなど、貴様の行いは神も呆れし愚行にも等しいっ!! 貴様の愚かな虚言に、我の寛容なる魂も憤怒の炎に燃え滾っている……!!」


 互いに睨み表情を歪める。

 ……ギスギスとした空気。やっぱり、お前とは気が合わないと断言する双方のセリフに、煮えくり滾る感情が黙ってなどいられない。


 ……そして、この時にも主人公アレウスは一つの理解に至った。


 それは、NPC:アイアム・ア・ダークスネイクという存在との相性の悪さ。最悪とも言えるコンビネーションの悪さと、どう足掻いても噛み合わぬ思考や言動の数々。


 ……もしかして。いいや、もしかしなくても。

 きっと、そうだ。いいや、絶対にそうだ。そう確定付けて、その答えに行き着いたのだ。


 …………それは。主人公アレウスという特異的な存在感の中に、NPC:アイアム・ア・ダークスネイクという人物とはまるで息が合わぬ、互いに妨害をし合う特殊なシステムが仕込まれているのだ。と――――



【~次回に続く~】

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