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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
四章
282/368

ウェーブ三:暗雲

 急激な猛反撃を以ってして、その禍々しき活気を取り戻し再びと風国の陣営を押しやり始める『魔族』の軍団。


 眼前から迫る邪悪の化身が雪崩れ込むその光景に、救いも希望も皆無である眼前の慈悲無き現実に退くことしかままならない総員。

 その力を前にして、周囲の仲間達は次々と倒れていき。嵐の如き猛襲の中でなんとか生存するも、HPを浪費する事態に窮地へと置かれる展開を予感しながら命辛々と後退を続けていく。


 "ヤツら"は、これまでと分散し各個撃破を目指していた個々の脅威を結集させ、一つの凶暴なる塊となって風国の領域を侵し始めたのだ。

 それは、眼前から迫り来る邪悪なる化身と刃を交えたその瞬間にも、その闘争を聞き付けて四方八方から押し寄せてくる邪悪の集合。入り乱れる闘争に何処からともなくと敏感な反応を示す"ヤツら"は、そちらへと振り向き視界に入った戦闘を目撃するや否や、その戦闘へと一斉に特攻を行い。"自身ら"に食らい付くその存在を、集団で囲い込み貪り尽くしていく。


 戦力でも数でも劣る上での戦争において、そのどちらをも兼ね揃えた敵勢力を前に。真正面から仕掛ける正統の戦術では、あらゆる戦力の差によって瞬く間とその命を狩られてしまう。

 一つ。また一つと貪られゆく風国の勢力。一つの存在に対して複数もの、下手すれば十数もの強大なる魔の手が一つの存在へと襲い掛かり、確実と仕留めていくその様は正に……『魔族』と呼ぶに相応しい。


 それは、この世への進出を開始した邪悪による、想像し得る限りの悪夢の実現。

 ――過去に惨敗を期したとされる"その種族"は、敗北という結果によって生じた苦悩を噛み締める受け入れ難き現実を知る者達。それすなわち、そこから生じた悔しさをバネに、更なる高みへと上り詰める気質を秘める、自然の現象によって引き起こされる生物の進化を知るモノ。

 ……人間との戦いに敗れた"彼ら"は、その苦悩の末に手にした力を以ってして。長年もの歳月の末に、今、"自身ら"を破滅へと追いやった人間という生物を存分に狩り尽くしていたのだ――――




 一層と激しく飛び交い出した戦火の火花。

 眼前から一方的と飛来する邪悪なる力に後退を続ける風国陣営の一同。それはもはや、変わり果てた風国の姿に嘆き悲しむ余裕などもまるで与えられずに。次々と崩落を引き起こすその光景の数々を目にしても、尚今は眼前から迫り来る"それら"への対処で心を痛めることもままならない。


 クリスタルブレードで攻撃を弾いていき。ブレイブ・ソウルを織り交ぜた回避コマンドで足掻くよう攻撃を避けていき。

 だが、それでも眼前の猛攻に耐え忍ぶことができない。今も目の前から飛んできた、目に見えて大爆発を引き起こすだろうと予測できる、ランチャーのような弾が真っ直ぐと飛来し。他のモーション中であり回避コマンドを選択することができないこの状況に、しまったと焦燥の念を抱く――


召喚(モン・パルト)(ネール)黒き獣(『ジャンドゥーヤ』)ッ!! 召喚士スキル:黒き(バリエール・ド)防壁(ゥ・パルトネール)ッ!!」


 あらゆる攻撃が飛び交う戦火の中。視界いっぱいに広がったのは、暗黒と紅が占める巨大な防壁。膨大なエネルギーをこの肌で感じる大きな壁は目前からの攻撃を防ぎ、又、その衝撃によって引き起こされた巨大な爆発からもこの身を守り。そして、同時にそのスキルが放たれる。


「召喚士スキル:黒き(エクレール・ド)稲妻(ゥ・パルトネール)ッ!!」


 宣言と共に、視界の両サイドから迸る漆黒と鮮紅の稲妻。

 背後に雷神がいるのかと錯覚するこの力。それは、この先、その力に追い付くことは敵わないだろうと一種の諦観さえも抱けてしまえる確信と。この上なく頼れてしまえる、少女に宿りし膨大なる力を秘めた強大な法撃を目撃して。


 両サイドから迸る稲妻の圧に押されてよろけてしまい、その場で後方へと倒れ込みそうになる。

 しかし、背後から加わった、押し出されるこの力と。この両肩に乗せられた、太陽のような温もりにふと希望が満ち溢れ出すのだ――


「アレウス!! しっかり!! 目の前からも次々と来るわッ!!」


「あぁ、助かったよ! ありがとう、ユノ!! ッ――そうだな、しっかりしなきゃな。そして、俺もユノも、この風国の皆も。この場の皆で一緒に力を合わせて、この戦いに絶対勝つんだ……!!」


 ユノに体勢を立て直してもらい。召喚獣のジャンドゥーヤと共に、邪悪なる化身の軍団へと先行して駆けていく彼女。

 その勇敢なる彼女の背に続き、こちらもまたクリスタルブレードを握り締めては、蓄積を上回る酷使によって徐々とゲージの残りが減ってきたブレイブ・ソウルから力を引き出して駆け出していく。


 ジャンドゥーヤの、その『魔族』に引けを取らない獰猛なる咆哮が戦場に轟き。頭部に生える二本の荒々しく猛る巨大な角に黒と紅の閃光をバチバチと蓄積させ、次の時にも、悪魔の如き獣から爆発するよう一直線と発出される膨大なエネルギーの稲妻。


 ――同時に、この視界の右端からは、その紅の直線が輝きと共に飛び出してくる。


「弓スキル:(ジュテーム・ド)(ゥ・プリュプロ)(・フォン・ド)(ゥ・モン・クール)ッッ!!!」


 続けてラ・テュリプのスキルが『魔族』へと飛び出して。ユノのスキルと混ざり合い一つの新たな必殺技が生まれる。


 召喚獣の稲妻と彼女の恋情の如く燃え滾る矢の一閃が織り成す攻撃。それは、その威力を以ってして漆黒と鮮紅をも貫く圧倒的な凌駕を見せ付ける矢と。その貫かれた稲妻もまた、激しくと抵抗を起こしその紅に帯電を始め出す技と技のぶつかり合い。

 この恋情に、執念深き悪魔のよう喰らい付く稲妻。地平線を沿う一直線の紅に付き纏い共に飛来すると、敵勢力の中央に到達した矢は、軌道上の"あらゆる存在"に身体の芯も燃やし尽くす炎属性を付与し。そして、その着火に反応を引き起こした稲妻は――負けじと、一帯に爆発を引き起こし。爆発の衝撃によって雷撃を降らせ、周辺の『魔族』を一掃する漆黒と紅の雨を作り出したのだ。


 偶然から生まれた合体技との遭遇により、この世界におけるスキルとスキルの融合という新たな可能性を見出すことができて。

 ユノとラ・テュリプが織り成す、味方でありながら恐れ入る強大な一撃に一瞬と見惚れてもしまい。――その光景にすかさずと反応を示したユノ。背後にいたこちらへと、その意外そうな表情を見せて。……そして、この直後にも、目を見開き何か切羽詰る表情をユノは見せていく…………。


 ……待て。ユノと、ラ・テュリプ……??


「――ルージュ・シェフ……ッ?!」


 この場にいないはずの彼女の存在を感じ取り。こちらもまた、ユノの向ける視線の先へと見遣っていく。


 その先には、やはりラ・テュリプが弓を携え駆け回る姿を確認することができて。そして、同時として彼女もまた、この場にいないはずである主人公アレウスとユノの存在に気が付き、驚きを隠せない意外そうな表情でこちらを見遣ってくるもので――


「ッアレウス・ブレイヴァリー君!! ユノちゃん?! ッこれは、どういう……? …………ッいえ、そう。……そういうことね――ッ」


 瞬間にもその場の全員に巡ってきた、とある納得。


 弓に矢を装填して『魔族』へと構えていくラ・テュリプ。

 再びと敵勢力へと向き直ってジャンドゥーヤへと指示を送り出すユノ。


 そして、クリスタルブレードを握り締め。彼女らの間から駆け出していく主人公アレウス。


 ――これは、戦略の一つとして敢えて散り散りとなっていた集団の集合。

 つまりそれは、役割分担として各方面へと渡って作戦を実行していたそれぞれのグループが、一つの箇所へと集ってしまったとされる。その作戦を通常通りと行っていれば、まず有り得ることのない事態との遭遇を意味していた。


 ……移動したその先で追いやられに追いやられた挙句。気付けば、風国の陣営は一つの地点へと固まってしまった。

 この事態が意味すること。それは……外部の侵略者から掛けられる強大な圧力を前にして。総員の戦闘能力や戦闘員の数といった戦力のあらゆる要素に押されたことにより、この風国の陣営は一箇所へと追い込まれてしまったのだ――――



【~次回に続く~】

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