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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
四章
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ミッション

 その瞬間、この大地を真っ二つに割らんとばかりに伝い出した地響きと。殴り付けられたかのような、塊となってこちらへと流れ出してきた大気の振動を全身で感じ取る。

 どこかで巨大な力の衝突が生じたのだろうか。その風国を揺るがす衝撃に一層もの不安が過ぎりながらも、しかし、ならば尚更とこの力を振るって鎮静化させなければ、と自身を鼓舞して勇敢なる魂と意思を再確認する。


 ラ・テュリプの指示を受けて場所を移した。

 その地もまた、『魔族』との交戦によって既に廃墟と化した変わり果てた風国の光景。だが、先までと駆け回っていた戦場との違いと言えば、この地では銃撃戦が繰り広げられてはいなかったというもの。

 ――銃撃戦の必要が無くなったのだ。それを悟ったのは、地に倒れる多くの風国陣営の人々を目撃してから。その手元には遠距離の攻撃を主とする武器が見受けられ。この地で繰り広げられた激闘と、脅威を孕んだ『魔族』の恐ろしさを再度と思い知らされる。


 土煙も漂わぬこの地は、戦火の後の沈黙が広がっている。

 ここから場所を移し、また異なる地点で戦争を行っているんだ。それに至り、死に物狂いと『魔族』との戦闘を行う仲間達を探すために。共に指示を受けてあちこちへと駆け回る風国の人々についていく形で駆け出していく。



 立ち込める不穏。その沈黙が嫌に、この心臓の鼓動を早めるのだ。



 ……この先で、何かが起こる。



 理由の無い予感が脳裏に巡り出し。この、フィールド:風国の戦争に訪れる新たな流れを予感したその矢先にも。胸元から飛び出してくる球形の妖精姿のミント――


「ご主人様。報告です。ただいまをもちまして、本メインクエストにおける特殊な仕様、ウェーブの移行を感知いたしました。これにより、先までと繰り広げられていたウェーブ一の終了。それに伴い、ウェーブ二への移行を確認。まずは、無事にウェーブ一を乗り越えられましたね。この調子で、最終ウェーブの終了まで生存いたしましょう。――同時に、ウェーブ二の移行に伴って、こちらのフィールド:風国に"強力な敵性反応"が出現いたしました。こちらの敵性反応、現在の風国の勢力をも上回る至極強力な実力の持ち主であり。又、懸念すべき特殊なフラグを有する存在として、ご主人様はこちらと向き合わなければなりません。と、言いますのも。こちらの強力な敵性反応……現在のウェーブ二から次に迎えられますウェーブ三の終了までに排除又は撃退を行わなければ。強力な敵性反応を中心とした『魔族』の侵攻により、ウェーブ四の開始と同時に風国は占領され、風国陣営の敗北が確定的となってしまいます。故に、こちらの強力な敵性反応を、早期の段階で退けなければなりません」


「……つまり、次に俺がやるべきことは……」


「はい。現在のウェーブ二からウェーブ三の終了までに、こちらの、強力な敵性反応の迎撃を行うこと。で、ございますね。方角は現在の地点から十一時の方向。その強力な敵性反応は現在、その地に存在する風国の勢力を悉く蹂躙しております」


 ウェーブの移行に従って出現した、強力な敵性反応。

 現在の風国の勢力を上回る存在を相手取らなければならなくなったこの状況に、束となった緊張が全身を伝い出す。


 逆立つ鳥肌が痛むその状況。目前にした難関なミッションに引けを取ってしまうものの、しかし、必死に自身を振るい立てて何とか冷静さを保とうと努めていく……。


「……行こう、ミント。この手で、強力な存在を食い止めなくては……!!」


「このミント・ティー、ご主人様に永続的と仕える主人公様専属ナビゲーターとして、遥かなる脅威を前にしてでも、尚ご主人様のもとに寄り添い続ける次第です」


「頼もしいよ。その存在に、俺はまた救われる。――行こう。この、主人公としての宿命を果たすために」


 少女に支えられ、それによって魂に蓄積された感情がこの背を押してくれる。

 懐へと戻っていくミント。少女のいる胸に左手を添えて。全身に巡る緊張の感覚をそのままに、一つ大きな深呼吸を行い魂の潤いを実感する。


 ……走り出すこの足。潤いの満ちる自身の内部が足を動かし、それは大地を蹴り、水縹(みはなだ)を瞳に宿らせながら。主人公アレウスは、また新たなるイベントのもとへとこの特殊な存在感を運んで行く――――



【~次回に続く~】

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