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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
四章
271/368

ウェーブ一:脅威

 幕を開けた『魔族』との戦争。フィールド:風国を舞台に、襲来する『魔族』を迎撃するべく総力を尽くして眼前の脅威に対抗する風国陣営。

 この地に吹きすさぶ疾風の中、行き交う銃撃を駆け抜けて相対した一体の『魔族』を何とか退けて。だが、その想定内でありながらも強いられた苦戦に、その『魔族』を完全に倒し切ることもできず、ひどく減少したHPを回復するためにポーションを取り出す。


 それを口へと運んで摂取し、磨り減ったHPの増加する感覚に緊張は若干とリフレッシュされて。

 ……しかし、それを隙と見て迫り来た眼前の『魔族』に気を休めることまでは許されず。ポーションの瓶を投げ捨てては握り締めるクリスタルブレードを構えて、接近してくる"それ"との戦闘へと臨んでいく――




 "それ"の駆け抜ける速度は、こちらのブレイブ・ソウルを発動した加速する敏捷と同等かそれ以上。この姿を捉え真っ直ぐと向けてくる眼光を不敵に光らせて。戦に滾る感情で吊り上げた口元が"それ"の邪悪さをうかがわせる。

 くすんだ赤の髪を生やす、人間の女のような外見の『魔族』。禍々しく染まった漆黒の右腕を振り被り、"それ"は接近を果たすと同時にして突き出してきた。


 鋭い一突きを擦れ擦れで回避して。だが、眼前に圧倒され体勢を崩すこちらへと、その『魔族』は左腕も振り被り鋭い一撃を連発してくる。

 左腕のそれも何とか回避でやり過ごすものの、その行動がトリガーとなって両腕から繰り出され始めた、ガトリングの如き連続攻撃。その威力も、この突き出される一発一発のキレの良さで容易と把握できてしまえる。


 ……この速度で放ってくる目の前の攻撃は、高速を有していながらも高威力。見るからに、三発耐えるのが限界か。そう踏んで、こちらも迷わずとブレイブ・ソウルを発動し両足の神経を加速させ『魔族』の速度に適応する。

 機関銃のような両腕の連撃を小さなステップで次々と避けていき。だが、攻め方を知るのだろう眼前の連撃に、じわりじわりと後方へと追いやられ始めて。回避で間隔を空けようと引き下がるこちらへと丁寧に一歩一歩と間合いを詰めていきながら攻撃を行う"それ"に、これ以上ものアクションを行わせる隙をまるでうかがわせない。


 減少していくブレイブ・ソウルのゲージとHP。このままではどちらも尽きて、加速が途切れてトドメを刺されてしまうだろう。

 ……で、あれば、この連撃に割り込んでの一撃を決め。強引にでも流れを引き寄せる他に手段は残されていない――ッ!!


「ッ、ッ。……ッ!! ここだッ!!」


 視界を埋め尽くす『魔族』の連撃。隙を晒すことの無いガトリングをブレイブ・ソウルの加速で掻い潜り、強引と懐へ潜り込んでクリスタルブレードを振り被る。

 その一撃は彼女の右腕に直撃。手応えは十分。勿論、その感覚にダメージを望むことができ――


「……?! か、硬いっ」


 ガキン。と、まるで鋼の塊に斬りかかったかのよう鋭く高い音が響き渡る。

 それは見るからに『魔族』の腕。……その一撃は、彼女の、何の変哲も無い素肌そのものに弾かれてしまったのだ――


「!!」


 不敵に笑む『魔族』の右腕が払われる。

 その刹那を間一髪と避け。続け様に突き出された左腕も、ブレイブ・ソウルの敏捷を駆使して敢え無く回避。

 その回避した動作から流れるようブレードを振り下ろし、『魔族』の上半身へもう一度と攻撃を試みる。


 ッガキン。

 ……突き出された左腕を咄嗟に引き戻した彼女の腕にまたしても弾かれる。


 これ以上と押し退けることもできないこのブレード。力での張り合いも、このブレードの刃を素肌で受ける彼女に止められてしまっていて。

 こちらが刃を引き戻すと、その瞬間にも攻め入り懐へと入ってくる彼女。腹部を狙う攻撃を側面への飛び込みで回避し。だが、その飛び込みの間にも距離を詰める飛び掛かりのモーションによって追い付かれ、右腕を突き付けられる。


 それをブレイブ・ソウルの加速を用いて紙一重と避ける。

 頬を掠るだろうその距離。突き付けられた彼女の攻撃は地面に衝撃波を発生させて足元を抉り。続け様と払うよう振るわれた腕をトリガーにして放たれる連続攻撃。それらも加速によるステップで回避し、その懐へと再び潜り込む。


「っこれで、どうだッ!!」


 『魔族』の顎を捉えた振り上げ攻撃。速度も十分。攻撃も間に合う。

 ここからの回避は無理だろう。それを確信して、攻撃のヒットを願いそのままクリスタルブレードを振り上げる。


 ――その瞬間。彼女からはオレンジのオーラ。次の時には、周囲に透明の気が巡り出して……。


 クリスタルブレードを振り上げたその動作の直後。視界の下から突き上げるよう突如と現れた右腕のアッパーをモロに食らい。その衝撃と、自身の確信が疑問へと変化した思考に、意識の混乱が引き起こされる。


「ッ、!! っカウンター、ッ?!」


 鋭く素早い返しの一撃を受けて。突き上げられた腕に跳ねる視界。未だ漆黒の羽が散り散りと舞う天を仰ぎ。次の瞬間に巡ってきたのは、腹部に加えられた強力な一撃。


 遥か後方へと吹き飛ばされていた。

 衝撃で俯いた視界が捉えたそれは、闇属性の暗黒の爆発から覗く、彼女の右腕が大砲のようなキャノンの形を成していた異様な光景。


 幸いにも、一割を切ったそのHPを維持することができて。だが、それは石に躓いてこけただけでも死にかねない瀕死の状態。

 地面を転げ回り、土煙を纏っていきながら。先の零距離の砲撃の追加効果なのか、この異常な長さを誇るやられ状態が解けるまでに、相当なまでの時間を費やしてしまう。


 勢いが収まり、次に体勢を立て直そうと視界を前へと向けたその瞬間にも。その『魔族』の背から現れた邪悪な翼は左右三つずつの禍々しき黒の魔法陣を生成。それも、しっかりとこちらへと照準を合わせていることが分かる。


 回復をする余裕も無い。このHPでは、ブレイブ・ソウルを使用した瞬間にも、HPの減少によって死亡してしまう。


 ……それは、詰みだった――――



【~次回に続く~】

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