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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
四章
266/368

メインシナリオ:嵐の前の静けさ

 吹きすさぶ風にこの全身を撫で掛けられるその感覚も、目前とした運命の時を控えた現状ではまるで感じることもできず。自身を吹き抜けていくこの地の疾風を無心で見送り、ただその十二時の方向へと視線を向け続けていく。



 自身のポジションに佇み、『魔族』の襲来を待ち受ける。

 そこは、風国を一眼と眺められる高台の下。そのポジションは、すぐに街中へと駆け付けて『魔族』が迎撃できるよう指定された、この街の主力が集う一つのグループであり。真っ先と前線に立つこの特攻隊に配属された主人公アレウスは。腕に自信アリのありったけな武装――それも、銃に関しては、この地の風の影響を受けずに発射することのできる、対風の特殊な性質を持つ銃という至極強力な性能を兼ね揃えた代物を携えた風国の民と足並みを揃えて、その時を待つべく待機をしていた。


 すぐ傍には、この戦における風国陣営の司令塔であるNPC:ラ・テュリプ・ルージェスト・トンベ・アムルーが配置されて。この他にもいくつかと分けられたそれらグループに、散り散りと配置されたNPC:ユノ・エクレールとNPC:アイアム・ア・ダークスネイクとは別行動を。そして、風国陣営の主将とも呼べるNPC:トーポ・ディ・ビブリオテーカは高台の途中にある宿屋:ア・サリテリー・インにて皆への指示とサポートを行うというもの。


 その複数からなるグループが織り成す陣は、風国の高台を中心に、各方面を均等に護ることのできる方円の陣形。

 又、今回の対『魔族』迎撃作戦の内容は至って単純。それは、総力を尽くしたこの拠点エリア:風国の防衛。ただそれのみ。



 つい昨夜までは、そのあまりにもな情報不足によって陣形さえも組めないほどの停滞を極めていたこの作戦。しかし、この形態で落ち着くに至ったのも。ついその時まで『魔族』に関する情報が皆無で、まるで不透明だった相手の動向が手に取るように鮮明となったのも。昨夜にも唐突と訪問してきたNPC:アイアム・ア・ダークスネイクが盗み聞きしたという『魔族』陣営の情報のおかげであり。もしかしたら、彼の来訪が無かったら、これ以上もの安定しない即席の作戦のみで臨む無謀な戦争となっていたのかもしれない。


 ……それを考えると、彼の来訪は風国の救済措置。彼がこの地に、それも、あの宿屋に訪れていなかったことを考えると、ただただ恐ろしくて身の毛もよだつもの。

 ダークスネイクから得た様々な情報を駆使し、NPC:フェアブラント・ブラートの推理も借りることによって。対『魔族』の迎撃作戦が仕上がり、こうしてそれぞれの戦力が配置されたというものだった。



 彼からの情報によれば、この朝方にも『魔族』は襲来する。尚、敵方の情報を簡潔に説明をすると。敵方の指揮官は一人、でもって、その補佐とも呼べるだろう役割が一人。その勢力の主力となる存在は計二名。

 他、大勢の部下を率いれての襲撃であり。唯一、この戦争における勝因を見出すとなれば、その指揮官と補佐の二人を倒し、上を失ったことにより統率を乱した"ヤツら"を端から片付けることで全滅をさせること。ということらしい。

 ……が、現状の戦力ではまず迎撃で精一杯のため。本作戦の肝としては、この日にも到着するであろう援軍が戦闘中の朝方にも合流するまでの間、ただ決死の想いで『魔族』の猛攻を耐え続けるという死に物狂いの防衛線を繰り広げなければならないという縛り付きのこの戦争。


 ……正直、それは素人目からしても、どう見ても無謀に近しいものを感じてしまう内容。だが、僅かと残された勝利への希望はそれしかなく。で、あったら、その僅かな希望に託すしかないという決断に至って今に至るというものなのだ――




「…………とうとう、あの『魔族』と相対するんだな……」


 左手を胸に当てて、今にも骨や肉を突き抜けて飛び出してしまいそうな鼓動を物理的に押さえていく。

 そんなこちらの様子に、隣に佇んでいた少女姿のミントは律儀な調子で、そう言葉を口にする。


「まずは、多少とご安心くださいませ、ご主人様。その脳裏には、以前にも出くわし苦戦を強いられたエリアボス:魔族との契約者の記憶がめぐっていることでしょう。ですが、あちらはエリアボスということもあっての、その特殊な存在であるが故の強力なステータス。今回、相対する『魔族』は飽くまでも通常のエネミー。ですので、かの魔族との契約者のようなエネミーがゴロゴロと押し寄せてくるとまではいかないために、そんな、絶望に値するそちらの光景は想像なされなくても良いでしょう。それと、ご主人様は拠点エリア:マリーア・メガシティ以降、急激な成長をなされました。それまでの道のりで度重なり迎えたレベルアップの文字を思い出しください。ご主人様は間違いなく、かの『魔族』に対抗する力を得ていることを実感なされることでしょう。実際に、通常のエネミー程度の『魔族』でありましたら、ご主人様は何とか渡り合うことは可能です」


「……ふぅ。――ありがとう、ミント。お蔭で少し落ち着いた……。にしても、まぁ、さすがに前のエリアボスのようなヤツがゴロゴロといたら、それこそさすがに今回は…………いや、考えるのを止めておこう。これ以上と凄惨なそれらの光景を思い浮かべていたら、この鼓動があまりものショックで止まりかねない」


 爆破属性と聞いただけで巡ってくるトラウマに。藍色を見ただけで瞼の裏に蘇るその姿に。『魔族』という存在に恐怖心を植え付けられた主人公は、今日もその運命の直前まで"ヤツら"に怯え続けていたものだ。


 ……というか、何とか、渡り合うことは可能。なんだな。それはそれで知りたくはなかった情報であったために、なんだか不安になってきた……。


「ご主人様。ご報告があります」



 ――と、ここに来ての突然の報告に。えっ、と拍子抜けな表情で少女へと振り向いてしまう。

 それとは対して、至って平然な様相のナビゲーター、ミント。律儀に佇むその姿勢で、少女はその報告を始め出した。


「報告は、計二つ。一つは、先にも解禁をなされました、戦闘システム:ブレイブ・ソウルに関する説明や使用用途、効果やデメリットといった新たなシステムについての解説。二つは、今回のメインシナリオに関するイベントに設定されております、特殊な仕様についての解説。で、ございます」


 戦闘システム:ブレイブ・ソウル。それと、今回のイベントに関する特殊な仕様。

 ――どれも、事前に聞いておいた方が身のためになる内容であるために。これは、『魔族』の襲撃が始まる前に全て一通りと聞き入れておきたいものばかりだ。


「ブレイブ・ソウルから、説明を頼む」


「承知しました。それでは、戦闘システム:ブレイブ・ソウルについての説明を始めます」


 すぅっと息を吸い、ふぅっと息をついてから。……少しもの間を置いて、ミントは戦闘システム:ブレイブ・ソウルの解説を開始する――――



【~次回に続く~】

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