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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
四章
251/368

破壊と猛毒のスパイラル①

 魔方陣から二匹の巨大な蛇を出現させ、それら"召喚獣"を手足のよう自由に動かし変則的な戦法でこちらを苦しめてくる敵NPC。

 銀灰の灰色に染まるローブとサルエルパンツに身を包み、どこか独特な禍々しいポージングで悠々と佇んでいる彼。その立場から、彼はこの風国の襲撃者である集団の一員と見て取れたものだが。その詳細は依然として把握し切れないままと突入した戦闘画面で、彼と実力勝負を交わしていく。


 状態異常:毒を用いた彼の戦法は、この疲労した肉体に加え、精神を蝕む己との戦いでもあり。それは間違いなく、前日と相対し倒してきたどのモンスター達やこの日にも倒してきたNPC達を遥かに凌ぐ、強力な戦闘能力を持つ実力者であることが容易にうかがえてしまい。


 状態異常:毒が自然回復した今、ピンチとなっていた場面を何とか盛り返しつつも。一向として、彼との戦いには苦戦を強いられていたものだった――




「っふ。我が双頭の蛇竜による破壊と猛毒のスパイラルに畏怖し、蛇眼に囚われ絶望の深淵に飲み込まれようとも。無我の足掻きを以ってしてこの螺旋の籠からの脱出を試みようとでも言うのか。――無謀だな。哀れだな。その浅ましい思考で、我が魔の結界を纏いし獰猛なる漆黒の蛇竜から逃れられると思うな!! …………つまり。この攻撃を耐え切ったところで、このおいらを相手に、お前の勝ち目は無い!! いくぞ、我が双頭の蛇竜!!」


 軽やかな調子でありながらも、その低い声音による彼が腕を差し伸ばすと同時にして再びこちらへと襲い掛かる二匹の巨大な蛇。

 駆け寄る主人公アレウスのもとへと詰め寄る二匹の蛇は、その黒と灰の斑と、黒と紫の斑の個体でそれぞれと分散してこちらを挟み撃ちとして。黒と灰の斑は、その巨体に見合った口を広げては自身ごと突っ込んで地面を抉り。喰らい。呑み込み。再びと地面から顔を出してはこちらへと首を突っ込み。轟音を響かせ次々と瓦礫を砕き地盤を噛み砕いていく。

 

 弾丸の如く、発出されるかのよう縦横無尽と蠢き襲い掛かる個体の攻撃を回避していく中で。黒と紫の斑は猛毒のガスを噴出しながら口を開き。瓦礫の破片や砂埃が舞う強風吹き荒れる戦地に、その勢いに劣らずの量をモクモクと、その口から毒ガスを発生させていく。


 ――このままでは、毒ガスが全面に漂い出して再び状態異常:毒を発症してしまう。

 だからと言え、毒ガスを振り撒く個体へと接近を図るその最中にも、黒と灰の個体が大気を、地面を、あらゆるものを喰らいながら暴れるがままにこちらへと襲い掛かってくるものであり。現状では、それらの攻撃を避けることに専念をしなければならないものであったから。


 思うように立ち回れないどころか、時間を掛ければ掛けるだけ毒ガスの充満を促してしまうこととなり。そして、ただでさえ不利であるこの場面が、時間の経過によって更なる圧倒的な不利を背負うことが目に見えて分かってしまえる。


 ……考えろ。この状況を、主人公アレウスはどう切り抜ける――


「っ! 剣士スキル:カウンター!!」


 スキルの宣言と共に透明の気を纏い、暴れ喰らう黒と灰の個体の突撃に合わせてスキルを使用する。

 効果の発動と同時に、この全身に巡って来る瞬発力。両足に、両腕に、全ての運動機能が異常に活性化する効果を身に纏って。敵方の攻撃力に依存する強力な仕返しを巨大な蛇へとかましていく。


 ――カウンターの強力な一撃は、蛇の目と目の間に直撃。

 しかし、その個体はカウンターの一撃で怯むことなく。むしろ、カウンターで飛び込んだその勢いで宙へと投げ出されてしまったこの身体は無防備を晒すこととなり……。


「ッまずい!」


 回避コマンドが選択できないこの状況。それは、再びとカウンターを決めなければ敵からの攻撃を確定で食らってしまう。敵方への、絶好の隙を与えてしまったことになる。

 まさか、強力な反撃技であるカウンターが自身の不利へ働く作用を促すとは思わず。対する黒と灰の蛇は、ここぞとばかりにその口を広げこちらを呑み込まんと宙を蛇行し猛進してくる光景を前に、巡ってきた緊張感に死を予期させてしまう。


 ……あの攻撃が、カウンターで無効化にすることのできない、ガード不能や投げ属性の攻撃であったのなら。この時点で勝敗はほぼ決してしまっていたものだ。


 しかし、この次の時にも、まだ運命は天に見放されていない出来事がこの身に起こり出すこととなった――


「っ!?」


 それは、拠点エリア:風国というステージにおける特有のシステム、強風。

 宙に投げ出されたこの身体は、その年中と止むことの無い風によって流されて。その勢いに動作と噛み合わなかったのか、黒と灰の個体はその丸呑み攻撃をギリギリで外してしまうという失態を晒していき。

 ――そして。幸いなことにも、この身体が流されたその先には、口から溢れ出す毒ガスをじわりじわりと生成し充満させていく黒と紫の個体が存在しており。こうして空中からの接近を果たすことができた今、このチャンスを逃すわけにはいかないと一転して攻撃へと転じていく。


「剣士スキル:アグレッシブスタンス!! ブレードスキル:エネルギーブレード!!」


 絶体絶命のピンチから生じた、またとない絶好のチャンス。スキルの宣言と共に一時的に防御力を捨てて攻撃力を底上げし。攻撃力上昇による赤色のオーラを纏いながら振り被ったクリスタルブレードに宿る青白い光源。


 そこに、風に吹かれる勢いが増したことにより。眼前の個体が回避行動を行うその前にも、この強力な一撃をヤツの頭にしっかりと叩き込むことができ――――た、ハズだったのだが…………。



【~②に続く~】

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