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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
四章
250/368

双頭の蛇竜②

 粘着性のある液体に一瞬と捕らわれ、身動きのできない焦りと窒息によって、瞬間とチラついたゲームオーバーの文字に胸が締め付けられる感覚を覚えて。


 身体中にスライムがへばり付いてきたようなそれを必死のもがきで払い落としていき。

 ……だが、脱出と同時に巡った自身の異変に、この足を止めてしまう。



 ――それは、この全身を蝕むよう。体内へと入り込んだ虫か何かから、この内部を貪り喰われているかのような。どうすることもできないもどかしさのまま、骨と肉の間にギンギンと走る鈍い痛みがこの全身に襲い掛かる。


「がァッ。ァ、ァ、ァぁ…………!!」


 もどかしさに左手は五本の指をカタカタと曲げ続け。内側を喰われる感覚に息が詰まり出し、無意識と左手は全身をまさぐりその感覚の元を探し始める。

 次に目にしたのは、この口から溢れ出し零れ出してきた毒々しい液体。それは血液と唾液を混ぜたかのようなドロッとした質であり。鼻をつんざく毒々しい激臭に頭が真っ白となる。


 ――自身に巡る、蝕まれる異常事態に白目を剥ける主人公へと。球形のナビゲーターが慌ててと懐から飛び出してきて、そのまま説明を始め出した。


「ご主人様!! そちらは、『状態異常:毒』でございます!! 状態異常:毒に発症いたしますと、その全身に巡った有害な毒の影響によりHPを徐々と消費し続け。徐々に磨り減る毒の状態異常は、HPが0となっても尚その発症した者を侵し続ける苦痛を伴う末恐ろしい状態やられでございます!! 尚、その治癒方法は。時間の経過や、解毒剤といった状態異常:毒を取り除くアイテムの使用などがございますが。時間の経過に関しましては、その『属性:毒』を扱う存在の、属性攻撃の数値によって変化をいたします。故に、時間の経過による自然治癒にはそれ相応となる危険を伴います!!」


 状態異常:毒。

 RPGに留まらず、どのアクションゲームやアドベンチャーゲームでも最もポピュラーである状態異常を実際と発症して。その、毒という状態異常の利便性と、その脅威をこの身で改めてと思い知らされることとなって。


 ……全身に走る鈍い激痛は、この視界を、この意識を、この思考のあらゆるを蝕んでいき。激痛による脱力感で、膝が崩れ落ちてしまいそうに。この身体が溶け出しているような錯覚を覚え出して。朧となった視界や脳内に、自身が生きていることを認識することもできなくなってくる。


 ……俺は、もしかしたら既に死んでしまっているのかもしれない。この感覚だけ。この意識だけが未だと生きていて。死んでしまった身体のことに気付いていないだけなのかもしれない。


 ――苦しい。――苦しい。――――苦しい。



 口から。鼻から。目から零れ出す毒々しいドロッとした液体に。蝕まれる感覚に気付けば無意識と叫び上げていて。

 発狂を引き起こし。もはや、手に伝う何かを握り締めて、それを振り回し喉が張り裂けんばかりの大声を雄叫び上げている感覚のみしか認識することができずにいた――




 ――毒の紫がかった幻惑の色合い。その中央から迫り来る大きな空洞。

 ……これは、既知か。先にもそれを目撃したように思えて。それは、この身体を覆い。そして、何かを閉じようとしているように見えてくる。

 目の前のそれは一体何なのか。……空洞。穴。暗闇。影。……その暗闇から覗く赤は。舌。口。……感じ取った既知の元を辿り、その記憶を手繰り寄せると。この記憶から真っ先と取り出されたその場面は、蛇の巨大な口――



「ブレードスキル:パワーブレードッ!!」


 反射的と宣言を行う感覚と同時にして。紫がかった一色の視界の中、橙の光源を帯びただろう手に持つ剣を振りかざし薙ぎ払い。その一撃の下、目の前から迫る空洞は音を立てながら引っ込みこちらとの距離を置いていく。


 ……直に、ハッキリと映り出す目の前の視界。

 紫が解けていき。口や鼻から流れ出す液状を感じなくなり、全身の平常な姿に思わずと視線を下ろし確認を行ってから。時間の経過によって自然と消え去った状態異常:毒からの解放を把握する。


 思ったよりもだいぶと早期の回復に、自由が利き戦線に立てるようになった健全な身体に再びと戦意を滾らせて。改めてクリスタルブレードを握り締め、眼前にて禍々しいポージングで佇む彼の元へと、この足を走らせた――――



【~次回に続く~】

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