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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
四章
248/368

蛇竜の毒牙

 この地に倒れる、大勢もの敵NPCの姿。それらは皆、完全な死を迎えてはいない負傷者であり。その意識を失い倒れている者もいれば、未だと呻き声を上げながらと地を這いここからの逃亡を図る者もいたものだ。

 それがいくら敵方とはいえ、同じ人間を傷付けてしまった罪悪感を拭うことはできず。……それら敵NPCの傷付いた姿に、漲っていた勇気の裏腹に躊躇いが生まれ出す。



 ……躊躇いによって足を止めていたその矢先。

 ――向ける視線の先。崩壊したボロボロの地と建物の瓦礫から、悠々とした様子で歩いてきた一つの人影……。


「っ……何ということだ。戦火と血飛沫が。勝利を想う双方の思想が交錯する血みどろの沼に浮上する、同胞の変わり果てた残骸の数々。爆煙の渦に包まれし運命の羅針盤の針は、風の都という烈風と共存せし壮大なる自然の掟と契りを交わした聖人達の元へと指し示したというのかッ!! …………つまり。仲間達が倒れてしまった今、この戦況は風国の勢力が大いに有利であるということか。っふ。こちらの敗北を予感してしまえる。これはまずい。これはまずいな」


 やけに耳に残る軽やかな調子の低音ボイスでそれらを口にして。その人影は佇むこちらを見遣るなり、この戦地を踏み締めるようゆっくりとした足取りでこちらへと歩み始める。


 身長は百七十八くらいだろうか。その上半身をゆったりと覆う大きなローブはふくらはぎまでの長さを誇っており、若干もの埃っぽさや着古した雰囲気を醸し出す銀灰色の一色に染まり、その不敵な羽織りを頭ごと被っていることで、より不敵な雰囲気を演出している。

 その上半身のゆったりさに加え、足もまた自身の体格と不釣合いである大きく広がる銀灰色のサルエルパンツを身に付けて。それら上半身と下半身の銀灰色にアクセントを付け足した黒のシャツとブーツが、それら灰と相対して個性を強調している。


 又、何よりも彼の特徴として。ローブによって覆い隠された顔は、その鼻から上は陰りの黒に塗り潰されており。素顔は下部の自信有り気な口元と。陰りの上に貼り付けたような、瞳の小さい簡易な目が浮き出ているのみの顔。


 敵方だと思われるそのNPCは、その歩をゆっくりとこちらへと歩ませながら。左手を右目辺りに。その左腕とクロスさせる形で右腕を添えて。その、全身に漲る独自のオーラを醸し出す中で、目の前の彼は言葉を続けていく。


「血みどろの沼に佇む、聖人の皮を被りし死神。数多の生命を刈り取った今も、飽き足らずと我が同胞の精力を求め、この戦火を血眼で、獲物を求めしその眼光を光らせるというのか。――っふ。血に飢えし獣が。これ以上と、喰らい尽くした同胞の骸でこの戦地を埋められるとは思うな。……聖人の皮を被りし死神を前にして! 我が内なる力の化身が、この内なる魂と共鳴している!! …………つまるところ。仲間達を倒したお前の行進を食い止めるため、このおいらの"召喚獣"は戦闘態勢となった!!」


 ただならぬポージングを決めていた彼がそう高らかと叫ぶと同時にして。大袈裟に振り被った腕から魔方陣を生成し、それを大袈裟に腕を振るう動作で周囲へと張り巡らせていく。

 その魔方陣は、見る者の肉体を蝕むかの如く毒々しい輝きを放つ紫の線。色合いや形はどこか似て異なるものはあるが。その形式自体は、ユノが召喚獣であるジャンドゥーヤを召喚する際に浮かべるそれとまるで似通っているものであり。


 毒々しい魔方陣から走る煌きに囲まれた彼は、その自信有り気な口元と目つきで高らかとそう言い放つ――



「死神よ、貴様は自らの巡り合わせに後悔することだろう!! 貴様がこれから目撃するは、我が内に宿りし信念の深遠を根城とする、魔の結界を伝い空間を無尽蔵と渡り獲物を惨く残酷に喰らう純黒と銀灰の蛇竜の群れ!! 我が内に宿りし獰猛な蛇竜の毒牙によって。我が同胞の残骸と共に、この地へと帰すがいい!! …………つまりだな。お前は、この"召喚獣"によって倒される運命なのだ!! 覚悟しろ!!」


 両腕をクロスさせた禍々しいポージングと共に、その煌く紫の魔方陣から発出するよう飛び出してきた、二匹の巨大な蛇。


 それぞれ、黒と灰の斑と、黒と紫の斑という二種類のそれらは、魔方陣から飛び出してくるや否や、互いに交差を繰り返す変則的な動きを行いながらこちらへと飛来し。それらは共に巨大な口を開き、この存在を丸呑みにせんと襲い掛かってきたのだ――――



【~次回に続く~】

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