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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
四章
231/368

変哲の無い日常の中で

 吹きすさぶ風に背を押される中、色取り取りなパステル広がる風国の景色に相変わらずと心を奪われ見惚れてしまいながらも。先にもイベントを介することで出会ったユノを含めた、彼女とミントとの三人で歩んだその街道。

 その道のりの、あっという間に過ぎ去ったいつもの日常を顧みているその内にも。ミントの案内とユノの土地感覚によって一軒のカフェに到着し、腹を空かせたユノと共に、ちょっと遅めのランチをとることとなっていた。


「ミントちゃんはどんなものを頼むの? やっぱり、いっぱい食べられるボリューミーなもの?」


「このミント・ティーは現在、不足した糖分を補うためのメニューを脳裏に浮かべておりました。勿論、この腹を満たせる食事も、満足感や満腹感を考慮しますと十分な候補ではございますが。如何せん、現在のミント・ティーの味覚は、至高な甘美に飢えを覚えているものですから」


「それじゃあ、一緒にパフェを注文しない? やっぱり、食後のデザートも欲しいなぁって今思っていたところなの!」


「では、ユノ様のお言葉に甘えて。パフェの種類は如何いたしますか?」


 デザート選びで、その目に甘美を求める光を宿しながら楽しそうにパフェを選んでいるユノとミント。

 そんな二人の姿を眺めていては、その変哲の無い日常に安堵ばかりを覚えてしまう。


 未だに控えている、『魔族』とのイベント。毎度ながら、それに怯えてしまって仕方が無い自身の潜在意識を介して。

 今、正に直面しているこの危機的な現実と。今、目の前で繰り広げられる変哲の無い日常の光景を目にして。そんな様子に安堵しては、この先の展開に不安を煽られ。しかし眼前の日常にまた安堵を取り戻して。だが、そこにまた現れた不安に煽られて……を、ひたすらと繰り返している。


 ……そんな臆病な自分に嫌気が差してくる中で。だからこそ、その不安を拭うためにもっと強くならなければな、と。皆を守れるような、勇敢なる勇者にならなければな、と。自身を奮い立たせる言葉を、まるで言い聞かせるようにこの脳内で何度も何度も呟き続けていき。

 ――『魔族』という存在を思い浮かべていくその中で。ふと、とあるちょっとした疑念を思い付いてしまっては。それが過ぎったと同時に、つい眼前の彼女にそんなことを訊いてみてしまったのだ…………。



「……なぁ、ユノ」


「はむはむ。っんぅー!! ――むー? なぁにー?」


 既に平らげたランチの、空っぽのお皿を脇にして。ミントと共に、テーブルの中央に置いたパフェを二人で突っ突いて頬張っていたユノに声を掛けていく。


 その口内に広がる甘美に、堪らずと頬を押さえ落ちないようにしていたユノ。

 この危機的な状況の中、とても幸せそうな表情を見せてパフェを頬張っていた彼女であるものだから。そんな甘美の一時に至福を感じていた中でこんなことを訊いてしまうのも、彼女の気分を害してしまうだけかもしれない。


 ……そんなことを考えてしまいながらも、こうして『魔族』という存在に怯えきってしまっていたこの心中のままに。何の躊躇いもないまま、巡ってしまった気持ちのままにその言葉を口にしてしまったものだ。


「……ユノってさ。ユノはさ……その、『魔族』、という存在のことを、どう思っているんだ? ユノも、『魔族』という存在のことを……恐い、と思ったりしているものなのか……?」


 それは、ただ単にこの不安を共有したかったがための言葉だったのかもしれない。

 そんなことを訊いてどうするんだと。自身の言葉にツッコミを入れてしまうほどの、今すべき内容ではない質問を投げ掛けてしまったことに後悔してしまいながらも。


 ……だが、こんな俺の質問にも真っ直ぐと向き合ってくれたユノは。なんと、とある予想外な言葉でそれを返してきたために。不安を共有したいと思っていたその心は、彼女の言葉で度肝を抜かれたように。一瞬と、無心になってしまったものだ――



「? 『魔族』のことが恐いかどうか? ――うーん。私にとっては~……そうねー。『魔族』は恐いようで、恐くない、かも?」


「……??」


「正直、私にもよくわからないの。『魔族』は恐いようで恐くない。対のことを口にしているものだけれども。でも、この気持ちを言葉にするのなら、それが最も適当な表現のように思えてくるの。そうねぇ、もっと言ってしまえば――――」



【~②に続く~】

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