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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
四章
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密会②

「……とにかく、"キミ達"がよく考えて行動していることは分かったよ。事前調査だって? あぁ、なるほど。やるじゃないか。この街の民は、"キミ達"の脅威を恐れるあまりに、襲来を予期してまで決死の思いで身構えているというのにね。その中で、当の本人である"キミ達"はと言うと。強張らせた表情の民達の間を掻い潜り、自身らに有利となる情報を静かに集めていく……」


「今の『魔族』に掛かれば、この街程度など即粉砕だ。……だが、だからこそ、ここは無駄な労力などを消費せず、この先に控えているであろう大きな戦闘に向けての、戦力の温存を優先したいと考えている。この街の情報を集めていき、その環境、現在の敵の戦力、その背景に何が存在しているか。あらゆる観点を様々な視点で捉えていき、そこから割り出された情報を元に、最小限の戦力を構成しこの街の強奪を行使する。必要最低限の戦力で、この街を確実に我が物とするのだ。そのために必要となるのが、その必要最低限のラインを見極めるためにも必須となる情報の入手と、現状況における様々な内容の把握。だろう? 違うか? この風国の特色をしっかりと把握し理解し学び。又、この街の連中は、外部から押し寄せる力に対してどれほどの戦力を投下するのか。全ては情報から始まり。その全てが終わった後にもまた、最も重要となるのも情報だ。――"ヤツら"は無計画がまかり通るほどの甘い連中ではない。一度と滅ぼされたこの一族は、この、惨敗という結果を噛み締め、その苦渋を嫌と思うほど味わった。……今回は、まずは慎重に計らい見定めながら時間を掛けて策を練る。……そうさ。以前の敗北を介して、『魔族』は生まれ変わったのだ」


 吹きすさぶ夜風に漆黒のマントをなびかせて。遥か遠くを眺め、噛み締めた苦渋に哀愁を漂わせ、脇に佇む若葉へと静かに放っていく。

 夜風の通る、どこか寂しい音。冷える空間の中に置かれた現状に、若葉はフッと鼻を鳴らしては、被る中折れハットをより深く押さえ込んでいく――


「……『魔族』の一環であるキミに問いたい。――何故、どうして。これほどと苦しく辛い思いをしてまで、こうして、人間という存在に抗い続ける?」


 若葉からの問いに、眉をぴくりと動かす漆黒。その腕を組んだまま、遠くを眺める視線を一ミリと動かすこともなく、その口のみをゆっくりと開いていく……。


「……『魔族』という集団は、以前にも、人類という生物の軍団に敗北した。それは、『魔族』という集団が深く傷付き、そのほとんどが二度と目覚めぬ眠りへとついてしまったことを意味する。…………貴様も、その凄惨な過去を辿った我々"『魔族』の歴史"くらいは予習してあるものだろう。であれば、わかるはずだ。……進む仲間達が傷付く姿など、オレは決して見たくなどない。しかし、仲間達は復讐を滾らせ、猛進と人類のもとへと突き進んでいってしまう。――ならば! このオレ自らがその先頭に立ち! 争いの末に『魔族』の勝利をもたらすことで、実質的に、この仲間達を守り抜きたいのだ!! ……そのほとんどが、前を見て突っ走ることが得意な連中ばかりだからな。だから、オレは皆の足元を。下を見て、その一歩を慎重に踏み締めていく役を担うことで、皆の勢いに中立を保つことができるというものだ。だから、皆のためであれば、時には後ろも鑑みて皆の分まで悩み抜いてやるさ。……皆が突っ走るその先に。皆が安心して暮らせる世を築くためにな……」


「…………」


 若葉にしては物珍しい、からかいも笑みも、蔑みも冷酷も伺えない顔の色を見せていくその中で。……被っていた中折れハットを少しばかりと持ち上げては、フンッと鼻で笑い飛ばし。――直にも、その言葉を口にしたのだ。


「……なんだ。あぁ、なんだ、そういうことだったんだね。――ッフフ。ッハッハハハハッ!! あーあ。まさか、キミに対して美しさを見出すとは思いもしていなかった。どうやら、ボクはキミを過小評価し過ぎてしまっていたようだ。あぁ、その厳つい図体の内部に萌えるキミの熱意が、このボクの、美しき情景に敏感である美学の器を心から燃やし尽くしていく! 美しい。実に美しいぞ!!」


 突如と不敵に笑い始めては、その大笑を真夜中の街に響かせて。紅い三日月を口元に浮かべ、若葉は大いに笑い続けていく。

 ……奇行に近しい若葉の変貌に。その漆黒は、思わずと反応を示していくのだが――


「ほう? このオレが、美しい、だと?? …………ハッハハハッ!! あぁそうか!! あぁそうだな!! その表現は些か誤解を招きそうだが! 確かに、このオレは!! このオレの肉体美は実に美しいなッ!! ハッハーッ!! ルパン!! 貴様も、この筋肉の。この、マッシブ! の美しさに気付いてしまったとはなァ!! ついに目覚めてしまったなッ!! ついに、肉体美という生物の美学に覚醒してしまったようだなァッ!!!」


「あぁ、そうかな。――いや、ボクが言っている美しさというのは。キミの、『魔族』に対する心から萌えゆる熱意が宿る、真紅の器に対しての言葉さ。仲間を想い、全力で知恵を絞り貢献のために我が身を尽くしていくその姿。あぁ、その姿もまた、実に美しいものだ!」


「フッフフ! フッハハハッ!! あぁ、やはりな!! やはり、この美しきマッシブは、この地に蔓延るあらゆる生物をことごとく魅了してしまう。あぁ! この魅惑的な筋肉は今。オレの昂る興奮のままに、いつにも増して膨張しているっ!! このオレの肉体美が、このオレの興奮とリンクしている! 心が通じ合っている! オレは今、筋肉と共鳴をしているッ!! ……あぁ、筋肉とは、なんて美しく光り輝くものなのだ。……あぁ、筋肉とは、なんて罪深き造形なのだ! ……あぁ! 筋肉とは、なんて素晴らしき至高の賜物なのだッ!!」


 ――次の時にも、双方の存在を通り抜ける夜風の音で、辺りが埋め尽くされる。

 漆黒の言葉を最後に。若葉の沈黙によって、その流れが断ち切られて。共に噤んだ口元はそれぞれ、漆黒は満面な笑みのもとに形成された誇らしき吊り上げ。一方で、若葉は無心に近き、一種の諦観も伺える無表情そのもの……。


「…………どうやら、キミの感性とは永遠に分かり合えそうにないようだ。――まぁ、それは別にいいんだ。それよりも、キミの、『魔族』に対する燃え滾る熱意の美しさに焦がれてしまった。ボクは、美しいものが大好きだ。そんな、ボクの好みを。この美学を刺激し、この内部に根付いた器を萌やしてくれたキミの存在に、ボクは敬意を表したい」


 中折れハットを押さえ付け深々と被り直しながら。言葉を述べながら踵を返し漆黒のもとから去り始めていく若葉の影。

 ……同時にして。重く圧し掛かる空気をもたらしながら。若葉は、言葉を残すためにもその口を開いた――


「直にも、この街に訪れる災い。それは果たして、双方のどちらに運命の女神が微笑むか。……"キミ達"の偵察の質や潜伏能力、そして、有り余るほどの戦力を相手に人類はどう立ち向かうのか。互いの存亡を賭けた美しきショーの始まりだ。こんなにも大きなイベントなんて、そうお目にかかれるものではない。これは、中々に見物だね。――だが、これだけは伝えておこう。……いいや、これだけは忠告しておこう。とでも言っておくとするかな」


 去り行く若葉の背へと向けられた漆黒の視線。その真っ直ぐな黒の瞳に映る、萌える器の熱情が。目と鼻の先に存在する若葉からの言葉に何かを察知し、鋭く、真剣な眼差しを向けていく――


「まず、この街にはボクの大好きなレディーが滞在している。ボクは、彼女のファンなんだ。だから……彼女を傷付けた際には。それが例え"キミ達"であろうとも、決して容赦はしない。それと、もう一つ。――とある少年の存在だけは、今の内にでも認知しておいた方がいいだろう」


「とある少年の存在、とな?」


「そう。彼はとても不可思議な存在だ。それは、例えるなら……風船。中身の無い、その形だけが存在する奇天烈な人間さ。未だに、彼が何故、如何にしてその生命を萌やしているのかがまるで理解に至らない。そして……彼には水縹(みはなだ)の加護がまとわり付いている。容易く死ねる運命から見放された、嫌でも生き残り続けてしまう強力な運命が彼を包み込んでいるのさ。……情報源が皆無に等しいから、これ以上は何も言えないものだ、が……これだけは言えてしまえる。――恐らく。彼という存在が、"キミ達"の、一番ともなる障壁となるだろうさ」


 中折れハットを取り払い、自身の陰る姿へと重ねていく若葉――


「ボクとしては、"キミ達"が人間に復讐を果たしこの世界の強奪を成してしまおうとも。はたまた、人間が"キミ達"を返り討ちにして、再び平穏な日常を迎えようとも。このビッグなイベントの結末というものには、まるで興味が無い。この戦いの結果なんて、心底どうでもいいのさ。ボクはただ、この先の未来を、彼女と永遠に過ごしたいだけだからね。まぁ、それでも、この立場的には"キミ達"に近い場所にいるものだから。せめて、この言葉をキミに送るとでもしようか。……"キミ達"の目的が。そして、キミの熱く燃え滾る願いが現実となるといいね。それじゃあボクは、その様子を一歩離れた安全な場所で見物しているとするよ。――武運を。"ゾーキン"」


 掴む中折れハットを振り上げた時にも。瞬間とその姿を消失させ跡形も無く消え失せた若葉の存在。

 その夜風の中に取り残された漆黒。腕を組み、未だと若葉が存在していた地を眺め続けていては。一人、疑念を抱きながら。暫しと、その闇夜に佇み滞在していたのであった――――



「……先日の会話から、ルパンは何を目撃したとでも言うのか。会話に恐れを交えるとは、なんともルパンらしくもない。そして、そんなヤツが、まさか忠告としてその言葉を残した。……どうやら、この戦は気を引き締めて掛からなければならないようだな。…………うむ。――――ん? 待てよ? 思い返してみれば。ヤツに、またしても巧みに機密事項を抜き取られてしまったのでは…………??」



【~次回に続く~】

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