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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
四章
225/368

密会①

 そこは、満天の夜空に流れる雲の群集の下。三日月に照らされ輝く白と灰の街道と、立ち並ぶ四角い建物に塗りたくられた眩しいほどにまで色取り取りなパステルカラーの景色を背景に。夜風となりその肌を、神経を芯から冷やす吹きすさぶ風になびかれ。その存在は、街並みを一望することができる、見晴らしの良い頂上を優雅に歩んでいく。


 黄緑の若葉一式に包まれた、身なりの良いタキシード。同色の中折れハットにかざす左手はそのままに、紅葉のようなショートヘアーと瞳が不敵であるその存在は、眼前に佇む人影へと近付き言葉を投げ掛けていく。


「やぁ。そっちの様子はどんなものか、このボクに聞かせてくれやしないかい?」


 優美でありながらも、どこかからかう調子の言動でそう尋ね掛けてくる存在へと。その厳つくシワを刻んだ表情で振り向くその人影――


 その妖艶な声音を耳にした人影は。鼓膜に響き渡る甘美の声の主とは相対して、その身長は百八十八。丹念に鍛え上げられた、筋骨隆々な肌色の上半身を、踵まで届く丈長である漆黒のマントで包み込み。影の具現化を思わせる、余裕のあるボトムスとブーツを身に付けていて。ゴツく強張った、彫刻のような顔。髪も、妖艶さを伺わせない厚塗りの紫を思わせる短髪であり。瞳は黒く目は細く、眉は太くの至極濃い存在感。しかし、シワの無い厳つい素肌から見るに。そのゴツく厳つい強面とは裏腹に、年齢は比較的に若人として捉えることができる。


 その人影もとい漆黒は、次の時にも。喉にこもる音の、ゴツく、少々と野太く。しかし、空気に溶け込むような。腹から声の出ているハキハキとした男らしい調子で言葉を返していった。


「貴様、かの大都市でこのオレへと口にした自身の言葉を忘却したとでも言うのか? ふん! 外野で一人コソコソと意中の女を追い掛け続ける貴様のような存在に、もう二度と機密事項を漏らすヘマなどはもうしないぞ! この、オレ達『魔族』に付かぬ部外者"ルパン"。貴様、一体どのような面を引っ提げてオレの前に現れたとでも言うのか? 生憎だがな、このオレは二度も同じ過ちを犯さない! オレは失敗からしっかりと学習をするんだ! そう!! どの生物も、失敗から学ぶことは実に多い!! 前の、貴様にしてやられた失態から学んだ教訓を活かすべく。もう二度と貴様に機密事項を漏らすヘマをしでかしたりなど決してしないぞ!! このオレの口は、この筋肉並に硬いからなッ!!」


 そう言い終えると同時に、鍛えに鍛え抜かれ筋骨隆々と盛り上がる両腕を持ち上げ自慢のポージングを決めていく漆黒。

 ――だが、そんなこともお構いなしと。華奢な若葉の存在は冷ややかな瞳を向けながら、しかしその口元に紅い三日月を浮かべながら尋ね続けていく。


「そんなこと言わないでさ、ボクもこの話に加えてくれよ。何せ、今回は少々と事情が特別でね。それ故に、破壊を得意とする"キミ達"の行動には興味がそそられる。ぜひとも、『魔族』の陣営の片割れとして少しだけでも話を伺ってみたいものなんだ。――あと、それとー……少しばかりか驚いた。まさか、『魔族』と言えども、キミは学習をする『魔族』だったとはね。『魔族』というもの自体が、好戦的な戦闘狂の、無計画な連中の集いみたいなものだと認識していたものだけれども。どうやら、一番とそれっぽい見栄えであるキミが、特にまともな部類に属していたとはね。フフッ。常に筋肉のことばかり考えているものだから、その脳みそまでもが筋肉となってしまい。その頭がカチカチに固まってしまって、平坦且つ過激的な言動しか行えない単細胞だろうと見ていたものだから、これには実に驚いたものだよ」


「んなッ!! ルパン、貴様!! このオレの脳みそが筋肉みたいで頭が固いだとォ!? ……よせ、ルパン!! そんな、オレの筋肉を褒め称える世辞を投げ掛けたところで、このオレが調子に乗って機密事項を口にするとでも思うなよッ!!」


「いや、世辞も何も、褒めてないんだけど」


 その肉体美を披露するかのよう次々とポージングを決めていく、その漆黒に身を纏いし人影。そんな彼へと、淡々と言葉を返す若葉の存在。

 だが、その本人に言葉が届いていないのか。世辞を誤魔化すための、肉体美を披露するポージングを未だと止めない漆黒に半分と呆れの様相を見せながら。若葉の存在は、何事も無かったかのように続けていく――



「……で。今回の"キミ達"は一体、どんなダイナミックなショーを繰り広げてくれるんだい? そりゃあ勿論、"キミ達"の勢力であれば、この風の都を滅ぼすことくらいお茶の子さいさいだろうさ。――だが、こうして人目に現れて早々と、そんな猪突猛進と頑張りすぎてしまっては、"以前の二の舞"になるんじゃないのかな?」


 中折れハットを押さえ込んで表情を隠していきながら。しかし、僅かながらと覗かせた不敵な笑みを見切れさせ瞳を輝かせる若葉の存在。

 どこか見下すような口調で、表情も含め煽るよう口にされたその言葉を耳にして。その漆黒はムッと口を噤んでシワを寄せて。だが、それとは一方的に、腕を組み街の景観へと視線を向けて、言葉を返していく。


「ふん。『魔族』が毎度毎度とドッタンバッタンハチャメチャドンチキドンチャカしていると思うな。その考えは甘いな、ルパン。今回、この風国という自然に恵まれし土地の強奪の任務を任されているオレは、先にも言ったようにきちんと学習をする筋肉を持つ屈強な生き物。オレが皆を率いている限り、その勢力やら脅威やらとは裏腹となる、用心且つ慎重な行動を重視する。つまり、今回はルパンが期待するようなダイナミックなショーなんかではなく。この漲るパワーに満ち溢れる『魔族』ならではのサイレントなフットワークを行い、確実に敵地の情報を掻き集めることに専念する。このマッシブを見よ、ルパン。どうだ、実にパワフルで力強いだろう。そこで今回は、この素晴らしき土地を強奪するための、事前調査というわけなのだ」


「いや、さっきのマッシブのくだりって必要だった?」


 若葉の疑問は、静寂と共に吹きすさぶ夜風に流され静かに消え失せた――――



【~②に続く~】

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