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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
四章
220/368

NPC:バーダユシチャヤ=ズヴェズダー・ウパーリチ・スリェッタ①

「は、は、は……初めまし、て。……あの。えっと……ウチは。あ、えっと……ウチが、この料理を料理し……料理を調理し、た。あ、えっと……ウチが、この料理を、調理した、シェフ? の……『バーダユシチャヤ=ズヴェズダー・ウパーリチ・スリェッタ』、……です……。あ、の。……ごめんなさい。長くて、難しくて、覚え辛いですよ、ね…………」


 高くか細いどこか気弱な声

 落ち着かない視線は忙しなくキョロキョロと動き続けていて。おどおどと周囲を見渡し口ごもりながらぶつぶつと呟いていくその少女こと、NPC:バーダユシチャヤ=ズヴェズダー・ウパーリチ・スリェッタ。


 それは、百六十三ほどの身長で。その容貌は、黒、焦げ茶、暗めの赤という色々が混合するチェック柄のポンチョに上半身を包み。真っ黒の一色に染まる、ロングスカートのような七分丈のガウチョパンツ。同じく真っ黒なロングマフラーで口元や鼻を覆い隠していて。焦げ茶の運動靴を無難にも履いている。

 外見の特徴としては、そのふくらはぎ付近にまで伸ばした、深緑の青みと黒みが強いとても濃い緑色の超ロングヘアー。華奢な輪郭からはみ出る、黒い縁の大きな丸メガネ。その瞳もまた黒く、こちらから見た少女の右目の近くにはワンポイントのほくろがぽつりと。


 何だか不安げな表情がやけに印象的なその少女。他にも、大事そうに、抱き締めるようにその胸に抱えている薄浅葱(うすあさぎ)の淡く薄い青緑色の釜が、また一層とやけに印象的であったために。突然と登場した見知らぬ存在に、思わず食に集中していたこの手を止めて注目してしまっていたものだ。


 ……いや、それにしても、だ。


「何も悪くないから、謝らなくてもいいよ。俺はアレウス・ブレイヴァリー、よろしくな。バ、バーダ……チャ……。……??」


「バ、バ……バーダユシチャヤ=ズヴェズダー・ウパーリチ・スリェッタ、で、す……」


「あ、あぁ。ダーバスシチャヤ、ズ、ズェ…………。……??」


「バ、バ……バーダユシチャヤ=ズヴェズダー・ウパーリチ・スリェッタ、です……」


 少女の名前が難しすぎて、この短時間で中々覚えられない。

 掴み所の無い音の響きの数々。聞き慣れない言葉の並びに、濁音の多い文字の連続がその覚えにくさに拍車を掛けている。


 バーダユシチャヤ=ズヴェズダー。取り敢えずシステムのメニューからNPCの名前を確認することができるため、バーダユシチャヤというその名前自体は後からでもある程度と覚えることができそうだ。……それでも、ズヴェズダーやら、これ以降となる部分を覚えられる気がまるでしないものだが。


 ……そして、問題は少女への呼び方。

 バーダユシチャヤ=ズヴェズダー。その響きからして、女の子の名を呼ぶ感覚にさせない言葉の並びにそんなことを考えてしまう。

 短くバーダでいいのだろうけれども、でも、女の子にバーダと呼ぶのもちょっと気が引ける。かと言え、バーダユシチャヤとなると、長くなってしまって違和感が出てくるかもしれない。……もし、他の主人公がこのゲーム世界に降り立ったとしたら、一体、少女のことをどう呼ぶのだろうか……。


 そんなことを考えている内にも、ミントはミントで自己紹介を終えていて。こちら二人の存在に未だとおどおどとした様子を見せて中々落ち着かないバーダユシチャヤ。

 そして、互いの挨拶という流れが終わった頃を見計らってか。今にも動き出したいと終始ウズウズしていたユノがとうとう飛び出して、急に視界へと入ってきた彼女の姿に驚くバーダユシチャヤに、ユノはお構いなしと抱き付いていく。


「やーん!! シーちゃん久しぶりー!! 元気にしていたー!? お友達はできた? 外に出てる? 文字で未知を体験することができる、本という未知がぎっしり詰まった最高の知恵袋もいいものだけれども。空気に触れながらこの目で未知を目撃することができる、外というものもまた格別に良いものなのよ!! あーん! そのおとなしい姿を見ちゃうと、なんだか守ってあげたくなっちゃうよ~!!」


「ユ、ユノさ――ぬゃッ。ちょ……、う……、う…………」


 抱き付いて頭を撫でられまくるバーダユシチャヤ。おとなしくちょっと気弱な少女がユノの勢いに勝つこともままならず、その時にも、彼女の活気漲る勢いにバーダユシチャヤはもみくちゃとされてしまっていたものだ……。



【~②に続く~】

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