システム:親密度② ~判定や如何に~
「システム:親密度の判定が完了いたしました。判定の結果が出ましたので、これから、その内容をご主人様に報告いたします」
来たか……。
システム:親密度の判定結果が出たということで、この落ち着かぬ心臓の鼓動に全身を揺さぶられながら、思わず生唾を飲み込み無言で頷く。
それは、このゲーム世界で冒険をする主人公が、これまで出会ったNPC達からどれほどと好かれているかをデータとして割り出したものであり。主人公としては勿論、人としてどれほど好かれているかは誰だって気になるものであろうそれが、こうして形としてしっかりと反映されてしまっているものであるから。これからと出される結果は、改ざんやお世辞の無い正式な主人公への評価であるとも言えるだろう。
……いざ、この場面に直面すると、これは相当なまでの緊張感だ。
主人公としての質が問われるこの瞬間。男主人公としては、ヒロインの候補ともなる女性のNPCから好かれていたいものではあるが……果たして、その判定の結果や、如何に――――ッ!!!
「判定の結果を口頭から説明を行うその前に、まずは、判定として使用された各NPCの説明を施します。今回、このシステム:親密度の判定に使用されたNPCは計十一名。登場された順番から、順に、第一章に登場いたしました『ミント・ティー』。『ユノ・エクレール』。『キュッヒェンシェフ・フォン・アイ・コッヘン・シュペツィアリテート』。第二章からの登場である『キャシャラト・キャシャラット』。『ニュアージュ・エン・フォルム・ドゥ・メデューズ』。第三章に登場となりました『ペロ・アレグレ=Y・シン・コラソン』。『ファン・シィン・グゥ=ウゥ』。『フェアブラント・ブラート』。『水飛沫泡沫』。そして、第四章から登場いたしました『ラ・テュリプ・ルージェスト・トンベ・アムルー』。『トーポ・ディ・ビブリオテーカ』。今回の判定は、計十一名であるNPCにそれぞれと蓄積された、ご主人様及び主人公アレウス・ブレイヴァリーに対する好感を数値として、その数値を親密度のデータへと変換し、計十一名の名を、親密度の合計が低い順からお呼びするものとなっております。親密度の低い順から発表をいたします故に、名が出ないそのNPCほど、ご主人様に対して深い親密を抱いているということになりますね」
要は、これまでに登場したキャラクターの名前を順に発表していく。そして、その名前が初めに出たキャラとはあまり親密な関係ではなく。その名が後になればなるほど、そのキャラクターとはとても親密な関係。つまるところ、そのキャラクターから好かれている。といった具合だ。
つまり、この計十一名の内、十一番目に発表されるNPCの名が、これまでの冒険の中で最も親密的な関係となったキャラクターというわけであり。その、最後に発表される名前が女性キャラクターであれば、そのキャラクターこそが、こうして俺が主人公であるこのゲーム世界におけるヒロインだと言い切れるだろうか。
ミントの説明が終わり、この首をこくりと動かして沈黙の了解を合図する。
こちらの意図を汲み取り、ミントは向き合う形で正座し改めてとかしこまった様子で。
……ドキドキと心臓が鼓動し顔を強張らせる主人公へと、そのナビゲーターは至って平然とした様子で結果の発表を行い出したのだ――
「それでは、システム:親密度の判定結果を発表します。――まずは、第十一位から。第十一位。…………『トーポ・ディ・ビブリオテーカ』。このまま、続けて発表をいたします。第十位。…………『ラ・テュリプ・ルージェスト・トンベ・アムルー』」
まだまだ序の口。まだ出会ったばかりの二人は、勿論最下位とその一つ上であることは確実だ。
……問題は、次からなんだ…………。
「第九位。…………『ファン・シィン・グゥ=ウゥ』。第八位。…………『キャシャラト・キャシャラット』。第七位。…………『ユノ・エクレール』。第六位。…………『ペロ・アレグレ=Y・シン・コラソン』。第五位。…………『キュッヒェンシェフ・フォン・アイ・コッヘン・シュペツィアリテート』」
半分を切り、相変わらずと案外低い順位であるユノの名前に胸が締め付けられるような感覚を覚えながら。
……これからは上位の四位。さぁ、この中に、このゲーム世界のヒロインとなるNPCは一体誰なのか。
ヒロインとしてその特別な存在感を醸し出すNPCの名を、今、しっかりとこの耳で聞き入れようじゃないか…………!!
「第四位。…………『水飛沫泡沫』。第三位。…………『ミント・ティー』。第二位。…………『ニュアージュ・エン・フォルム・ドゥ・メデューズ』。――そして、栄えある第一位は…………ッ!!」
これまでと出てきた名に無言で頷き、そして、栄えある第一位を、この緊迫感と共にどっしりと待ち受ける……!!
――いや、待てよ。ここまで来て、俺は、心当たりのある女性キャラクターの姿がこれ以上と思い浮かばないことに気付いてしまう。
それどころか、あと一人、余っているというそのキャラクターの名が。嫌な予感という形で。その、とても誇らしく両腕を広げていたあの姿が、俺の脳裏にぼんやりと思い浮かんでくるのだが。…………いや、まさかな――――
「栄えある第一位は…………『フェアブラント・ブラート』、で、ございます!! おめでとうございます!! システム:親密度の栄えある第一位は、かの第三章にて一時と行動を共にしておりました、NPC:フェアブラント・ブラートでございますッ!!」
「う、う、うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」
【~次回に続く~】




