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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
三章
178/368

���:ウェザード

 その少女は俺と向き合い。螺旋の渦巻く瞳を。吊り上げた悪戯の笑みを。この、何もかもが不安定であるその存在を見せ付けながら。

 ……卑しく笑い。卑しく目を細め。そんな姿に不安を煽られ眉間にしわを寄せる俺の反応を楽しみ。……そして、急に上ずったアニメ声で喋り出しては、その上半身を甘えるように揺らしながら。その情緒が不安定な状態で、少女はとうとう俺にその口を割ったのだ。


「あーぁ、はぃ、ということで、オマエの熱意に負けたよ。…………それじゃあ~~、今回は特別にぃ~~。このいたいけでぇ~~、身長も~お胸も~ちっちゃなこのロリータオンナのコのワタシのことを~~。そんな欲張りさんなお兄さんのためにぃ~~、少しだけでも教えてあげちゃうよ~~?? だからぁ~~、こんなに優しくてサービス精神が旺盛なワタシにぃ~~、いっぱい、いっぱい感謝をしてよね~~?? この、悩んでばかりの薄鈍人間さぁ~~ん?? …………『ウェザード』。それがオイラの名前だ。うっくくく」


 その可愛らしかった声も、この狂気に塗れた少女の姿と合わさることで。その内に秘めた尋常ならぬ異常性により一層の磨きが掛かっている。先の甘い声をこれ以上と聞いていたら、恐らく俺はあまりの狂気に鼓膜と神経が侵食され。直にも吐き気を催していたかもしれない。……それほどまでに、先ほどの上ずった声からこの少女の異常性を感じることができたのだ。


「まァたった今思い付いた名前だ。だから、オイラのことは適当にそう呼んでおいてくれ」


「たった今思い付いたって……アンタ、今まで名前が無かったのか?」


「あったところで使わねぇし。名前なんてどうでもいいんだよ。名前なんてな」


 あったところで使わない……?

 それは果たして、ただ本名を隠したがっているだけであるのか。はたまた、この少女には本当に名前が無かったのか。その真意を目の前のヤツから探ることは、これまでの流れから考えても困難だろう。

 だが、だからこそ。この『ウェザード』と名乗る少女に、更なる謎がまとわりつくことになった。……それにしても一体、このキャラクターはどんなポジションのNPCなんだ……?


「まァ、こんな話なんてホントどうでもいいんだ。っつーのも、わざわざとゲーム世界に出向いてこうしてポップしてやったのも、オマエさんに"ある大事なこと"を伝えるためだったもんだしよぉ。もうオマエさんと話すのがメンドーになってきたから、そろそろ、それについて話をさせてくれや」


 その不気味な存在に考えをめぐらせていた中で。ウェザードはふとそんなことを言い出しては、そのまま続けていく。


「――『魔族』。もう、何度もこの名前を聞いてきたことだろうなァ?? それも、立派に主人公を演じてきているオマエであれば、既におおよその見当は付いているだろうがァ~。まァこのウェザードちゃんは優しいからな、薄鈍人間と言われ続けていたオマエに、今、改めて色々と教えてやるよ」


 不敵な笑みを浮かべながら。話しながらと左手をグラスに伸ばすものの、しかし、その中には氷しか入っていないことに気付き。それに不快な表情を見せながらも、何事も無かったかのように左手を戻し言葉を連ねていく。


「この『魔族』ってNPCが、今後のゲーム世界におけるキーパーソンとなってくることはもう判っていることだろう。それでいて、打倒『魔王』が目標であるこのRPGで、"この物語の最終目標"として設定されているであろう"そいつ"の存在がほのめかされたな。これまで停滞していた物語の本質が、ここにきてとうとう動き出したんだ。――うっくくく。それの意味を、果たしてオマエはきちんとわかっているかな??」


 答えをもったいぶり、こちらをからかうような目線で軽く見遣ってから。ウェザードは愉快げに狂気を振り撒きながら、その話を続けていったのだ。


「それはなァ!! 今までの何もかもが全て、単なるチュートリアルの一環に過ぎなかったというワケなんだよッ!! これまで散々と辛くて痛くて苦しい場面をその身で経験してきただろうがァ!? それはただの、このゲーム世界の世界観をのびのびと観光する単なるイベントの数々にしか過ぎなかったんだよなァッッ!!? ――うっくくくく!! ァアァーッッッハッハッハッッ!!! こうして『魔族』という存在が現れたことによってェ!! アレウス・ブレイヴァリーという主人公を中心としたこの物語は! 今! やっと! ついに動き出すッ!!! やっとこれからだ!! これから、この主人公なりきり異世界生活RPGの本格的な冒険が始まるのさァァ!!!」


 今までのは、単なる観光に過ぎなかったのか……?

 これまでの旅で散々と舐めてきた汚泥の数を思い出し。この地面に這いつくばってきた回数を思い返し。……その言葉の意味をようやくと理解し、俺の頭は真っ白となってしまう。


 ……そう。これまでの苦労は全て、これからの冒険を旅するにあたっての単なるチュートリアルにしか過ぎなかったのだ。


「これまでも気苦労の絶えない毎日を送ってきていたよなァ!? なァ!!? アレウス・ブレイヴァリィィィ??? だーけーどー?? これからも、いぃや、これからこそ、今以上に緊張しながらその冒険に挑んでいかなければならないだろうねぇ?? じゃなきャあ?? ただ生物を殺しまくる『魔族』の力に飲まれて簡単にゲームオーバーしちまうだろうし?? だからといって逃げてばかりでいると?? 主人公としての力が一向に身に付かずに?? 結局何もできないまま『魔族』に世界が侵略されてしまうだろうなァ?? まァなぁ、だからとはいえ。ここは飽くまでも、オマエが主人公のゲーム世界。ここはアレウス・ブレイヴァリーが主人公のゲーム世界だって、自分でも言っていたもんだったから?? 自分の実力にもどかしさを感じながら一向に強くなれない自分自身に気持ちが追い込まれていくその日々も?? 『魔族』という脅威に目を逸らし現実逃避を行いながらいつも通りに仲間達と冒険を続けていくのも?? この世界で過ごす生活は、ぜんぶ、ぜーんぶ、オマエの意思と決断に任されているんだぜ??? なァ??」


 それは、先にも控えた脅威に恐怖する俺への、更なる追い討ちへと化した重圧なプレッシャーの数々。眼前から投げ掛けられていく言葉に精神が押し潰され。この世界の行方を背負うという自身の立場に、立ち込めてくる不穏の空気に震えを抑え切れず、俺は力んで握り締めた拳を震わせてしまう。


 ……俺の変化にいち早くと気付いたウェザード。その目を卑しく細め。企みが形となって表れた悪戯な笑みを見せて。またしても声を上ずらせアニメ声を発していきながら。高く甘い響きで俺へと更なる追い討ちを掛けていく。


「――うっくくく。恐怖したか? 戦慄したか? 苛まれてしまったか~?? …………あァァなんて可哀相な主人公なんでしょう~~?? 目の前のオンナのコからの言葉責めでビクビク怖がってしまうだなんて~~?? あァ~~、なんて情けないオトコのコなの~~!! そ・れ・じゃ・あ~~?? そんな繊細で傷付きやすい心を持つ、純粋でピュアなオトコのコにぃ~~?? このウェザードちゃんからァとっておきのヒントを上げちゃおっかなァ~~???」


「……ヒント……?」


「そ~。ヒント~~!! これからの主人公なりきり異世界生活RPGを過ごしていく上での~~。主人公としての暮らしの中では絶対に欠かせない~~。あるとっておきの重要なシステムについてのヒントを~~、このウェザードちゃんが特別に教えてあげちゃうよ~~??? ――うっくくくく」


 甘い声を二重の不協和音へと戻して。喉と口の両方から響いてくる耳障りな声で、ウェザードはヒントとなるシステムの説明を始め出した。


「『エンディング』。ってもんは、どのゲームにも欠かさずと設定されているよなァ?? それは、このゲーム世界も例外じゃない。だって、ここはゲームの世界なんだからな?? で、だ。そいつのことを一口でエンディングと言えども? そいつはただの終わりを意味する単なるゴールではなくてなァ?? このゲーム世界で生きていくなら、まず、エンディングってもんを意識しながらこの世界を生き抜いていった方が断然といいんだぜ?? というのもなァ、そもそもエンディングってもんは、そのゲームをクリアした後の、今後の世界を構築するために必ずと挟む。云わば、そのゲーム世界のクリア後の世界に深い関わりを持つ、とても重要なイベントシーンなんだ。何せ、そのエンディングが明けた後の世界が、今後のオマエがずっとずっと過ごしていく世界なものなんだからな?? ――うっくくく。今の悩み事に悩まされて今の問題に足を引っ張られ続けるのも、主人公であるオマエの勝手だが?? っしかーしッ!! 今のオマエに必要且つ重要なのはァ。その今の問題の解決じゃあなくって~。今のオマエに必要なのはァ、今ぶち当たっている問題の先を意識した。この先の自分のためになる行動を起こすことなんじゃないのかい?? って、オイラは思っちゃうワケなんだよねぇ?? ん~?? そのエンディングってものを意識した、これから先のことを考えての行動ってもんも意識することができるようになれば?? オマエは確実に今よりもワンランク上の高みへと上ることができるだろうよ~?? な? そうだろう??」


「この先のことを意識した行動、か……」


 その言い方は、恐怖で恐れ戦く俺をからかう意地悪なものであったが。しかし、その言葉は明らかに、今の俺へと向けた助言であったことは事実。

 ……今のことではなく、先のことを意識した行動。今の問題の解決ではなく。今こうして悩まされてしまっている問題の先を意識した、この先の自分のためになる行動を起こすこと…………。


「なァ?? この先のために、一体ナニをやるべきか。さっきの話を聞いた後に、それを考えた時にも真っ先と思い浮かぶのは~……そうさ。今以上もの実力を磨き、戦闘でより活躍をする……ことを踏まえての最終目標。それを踏まえての、このゲーム世界で迎える最終的なゴール。つまり、迎えたいエンディングを迎えるための条件を満たすことさ」


 氷の入っているグラスを掴み、振ってはからからと音を奏でてから。その透き通った音色と、俺の納得する様子に満足げな笑みを零して、その笑みの中に氷を入れていく。

 ガリガリと氷を噛み砕き。ストローを摘んでは、舌を卑しく動かしグラスの底と密着していた僅かながらの汁を舐め取り。そんな様子や先の言葉に唖然とする俺とミントを横目で確認してから、再びと話を繋げていった。


「このゲーム世界には、四つのエンディングが存在する。…………一つ目は、『バッドエンド』。これは、オマエという主人公がどっかそこらで情けなく野垂れ死に。プレイヤーが消えてしまうことによって、このゲーム世界が無かったことになってしまうという。考えうる限りの中で一番最悪とされるエンディングさ。未来もクソもねぇこの結末に、さぞオマエは世界中から恨まれることに違いねぇな」


 グラスを置き、イスに掛けてあった三日月を抱き寄せ、それを抱えながら続けていく。


「二つ目は、『ノーマルエンド』。まァその名前の通りだ。何の変哲も無く、至って普通に『魔王』を打倒したエンディング。と言ったところかねぇ。その内容は、それまでの冒険によって左右されるだろうよ。多分、考えられる中で、一番とその内容に変化の多いエンディングだと思うぜ?? よく知らねぇけど」


 自身の右手を眺め出し、中指の爪をなぞるように歯でかじり出すウェザード。バリバリと爪の割れる音が響くその中で。しかし、器用に場所を選び噛んで割ることで。不要となった爪先を綺麗に切り落とし、ペッと口から吐き出す。


「三つ目。『世界平和エンド』。その名前の通りに、考えうる限りで一番最高のエンディングだ。条件は厳しいが、これを迎えられたら、その先を生きていくことがずっとずっと楽しくなるだろうよ。まァこのオイラからしたら、一番つまらねぇ終わり方のように思えるもんだが。まァハッピーエンドが好きな輩が多いもんだしな。こいつが一番需要のある終わり方なんじゃねぇの?? ホント、どうでもいいけど」


 やけにハッピーエンドというものに悪態をつく様子を見せながら。その悪戯に吊り上げられた口で大きなあくびを一つ流し、何だか眠そうな素振りと共に三日月に抱き付いて一瞬目を閉じる。……そして瞼を上げて……ふと、卑しい上目遣いで俺の姿を捉えてきたのだ。


「そして、四つ目。『世界滅亡エンド』。――うっくくく。もう既に察しが付くねぇ。こいつは、バッドエンドとは違う形で、この世界が終わりを遂げるんだ。あァそれだけでもオマエからしたら最悪なエンディングだと思うことだろう。だがなァ? こいつの面倒なところは……そのゲーム世界が消滅しないということなんだ。これの意味がわかるかい?? 何もかもが無かったことになるバッドエンドとは違ってな。こいつは、このゲーム世界が滅亡した。という結果だけが残るエンディング。その滅亡までの過程が描かれ。その場の全員が、その滅亡の渦に飲まれる瞬間までをも目撃することになる。なんともまァ救いの無い終わり方をするエンディングだ。――うっくくく。そう考えてみるとよぉ?? この、世界滅亡エンドってやつァよぉ?? さっきの、オマエが死んで迎えてしまうバッドエンドってやつよりも、もっと悲惨で残酷なエンディングだとは思わねぇかい?? あァ楽しいねぇ。そんな絶望を目の当たりにしてしまうエンディングだなんて、オイラ、考えただけでも興奮してきちまうよ。今も、それを想像するだけでこの身体が熱く火照ってきてしょうがないんだ…………ッ!!!」


 抱き締める三日月を全身に卑しく擦り付けて。熱い息遣いで、こちらを見遣りながらだらりと見せた舌で三日月を舐め回し。次の時にも、火照った身体で赤らめた頬を吊り上げながら。不敵な笑みを浮かべるウェザード。


「まァそれぞれのエンディング。基、それらに向かうルートの分岐とやらはよォ。その隣にいる、ご主人様のためであれば心でもカラダでも何でも捧げて誠心誠意を尽くしちゃうちっちゃなナビゲーターちゃんからヒントをもらいながら辿るってもんだな」


 その顔を見ることができなかったが。ミントの、あまり快くない時に浮かべる渋い表情が脳裏に過ぎる。


 ……狂気に満ち溢れるウェザードの言葉遣いは、このゲーム世界とは合わない年齢層によるソレではあったが。しかし、その内容としては、この俺へと助言という親切なものではあったことは確かだ……。


「……エンディング云々のことを伝えるために、わざわざ俺のところへと出向いてくれたんだよな? ――ありがとな、ウェザード。今聞いた助言の言葉達を、俺はこの胸に留めながらこれからも冒険をしていくよ」


「見本のような礼の仕方で、反吐が出そうだぜ。――うっくくく。まァ、果たして、悠長にもそんな礼を言っていられるほどの余裕なんて、今のオマエにあるのだろうかァ?? まァよ。その、上を向き続けていく姿勢だけは、このオイラでも評価しておいてやるとするからよ。まァ、オマエはオマエなりに頑張っていけや」


 なんだかんだで、これは褒められたのだろうか。

 そんな、素直じゃない認め方なのか。ただの意地悪による言葉だったのか。その真意がまるでわからないウェザードに首を傾げてしまう。


「こんな呑気ですっとろく。いつもくよくよ悩んでばかりでなよなよな頼りない情けない尽くしの主人公だが?? そんな主人公のおかげで、その心が救われた存在がいることも事実だ。俺は本当に主人公を演じ切れているのだろうかとか、さっきはそんなことで悩んでいたみたいだが?? まァ安心しろよ。オイラとナビゲーターちゃんから見たオマエの姿は、立派に主人公を演じ切るオトコキャラクターだと思えるぜ??」


「……ありがとな。ウェザード。俺、何だか元気が出てきたよ」


「オイラは、これからのオマエに期待しているんだぜ?? これで元気を出してもらわなきゃ困るぜ。――うっくくく」


 言葉のセンスはいちいちとひどいものではあったが。やはり、その実はとてもイイ奴じゃないか。と、ウェザードの一面が垣間見える素直な言葉を耳にしてからというものの。俺はそんな目の前の少女に安心感を抱き、一息をついてこのイベントシーンを終えたのであった――




「アレウスー!! ミントちゃーん!!」


 後方から響いてきた声に、俺とミントはすかさず反応し振り向く。

 その先には、いつものクールビューティな外見と。それとは真逆である太陽のような明るい笑顔を見せるユノの姿が存在していて。この大都市の中で偶然にも出くわした仲間のもとへと、俺とミントは手を招きこの場に呼び寄せる。


「ユノ!! こっちだー!!」


「今行くー!! ッハァ、ハァ、ハァ――フゥー。あー、もう、このひとっ走りで喉がカラカラになっちゃったわ!! ……それにしても、なんて偶然なのかしら!! アレウスとミントちゃんもここにいたのね~!! ここ、いろんなお店があって眺めているだけでも楽しいわよね!! それでそれで? 二人は今、何をしていたの? デート?」


「デート……というよりは、いつものように二人で新しい街を巡っていたところだ。今までは他のことであれやこれやと忙しかったからな。今はようやくと落ち着いて、この、新しい街の観光が楽しめるってもんだ。――で、だ。それで今、懐かしい顔と偶然再会してな。ほら、ここにいる女の子…………」


 走り寄ってきたユノにウェザードを紹介するべく。指を伸ばして彼女の方へと指を差す。


 ……しかし、そうして振り返ったその時にも。モノクロ調の目立つ姿であるウェザードの姿が。その場から忽然と消えてしまっていたのだ。


「……あれ? ……ミント。ウェザードのヤツはどこかに行ってしまったのか?」


「っ? ……いいえ。その、申し訳ありません。このミント・ティーもご主人様と同様に、ユノ様のもとへと視線を向けていたために。その一部始終を目撃することができていませんでした……」


「ッ……。……そうか、そうだったのか」


 申し訳無さに眉をひそめるミントと。先の少女の行方に眉をひそめる俺と。そして、この状況にハテナマークを浮かべて眉をひそめるユノという何とも言えぬこの空間。

 そんな、少々と困惑交じりの空気となったこの場ではあったが。今は取り敢えずでも、懐かしい顔と再会することができてひとまず良かったと、そう安心し。その少女から受けた授かった助言に一人で納得し、まぁいいかとウェザードの行方を探ることを止めた俺なのであった。


 ……ちょっとした隙にもその姿を消してしまったウェザードであったが……まぁ、こうして冒険をしていればまた、いずれかとその顔を合わせることになるだろう――――



【~次回に続く~】








「うっくくく。ありがとな、だってよ?? あーァ、呑気だねぇ。自分が置かれている危機的な状況の中で、よくもまァのうのうと礼なんかを言っていられるぜ。鬼気迫る脅威を前にしていながら、あの平和ボケな様子だ。あんなマヌケっ面を晒しに晒しといて、それに自分で全くと気付かねぇ。それが最ッ高にバカバカしくてェ…………ッくくく、最ッ高に面白く感じちまうんだよォッ!!! んあァーッ!! なァ!? アレウス・ブレイヴァリー!!! オイラはァ!! オイラはさァ!! そんなオマエなんかに期待をしちまっていてもいいのかぃ!!? 無様にもボロクソとされてばかりのボロ雑巾主人公なのにィッ!! これほどのトキメキを与えてくれるオマエという存在に、オイラは期待しちまってもいいのかなァ!!? あァ!?? アレウス・ブレイヴァリーッッ!!! オイラ、本気でオマエに期待しちまうぜッ??? オイラさァ!! オマエにいっぱいいっぱい期待しちまうからさァ!!! だからよォ!! これからも! ゲーム世界という名の現実世界でたくさん苦しみもがいて辛くて塞ぎ込んで痛くて落ち込んで泣いて絶望して恐怖で焦りに焦って迫る現実に必死とあがき続けるその姿をもっともっとオイラに見せて高鳴るこの想いをいっぱいいっぱい昂らせておくれよォッッッ!!!!! ……あァー。オイラはこれからもずっとオマエのことを見ているよ。だから、どうか……オマエの手で"この想いを実現させてくれよ"。アレウス・ブレイヴァリー…………うっくくくくく! うっくくくくくくく!!! ウェルカムトゥーザ・ゲームワールド!!! ようこそ、ゲームの世界へ。うっくくくくくく。アッハハハハハハハッ。アッハハハハハハハハッ!! ァアァーッッッハッハッハッハッッッ!!!」

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