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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
三章
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エリアボス:魔族との契約者【藍色の脅威】

「……来い!! 魔族との契約者ッ!!」


『オォ……オォ……オォォォォォォォォォォォオッ!!!』


 魔族という存在の脅威を撒き散らし、ミズキとペロを精神的に追い込み戦闘不能にしたその猛威。

 七から八メートルの筋肉質な巨体で。しかし、その異常なまでに発達した両腕でありながら。徐々と歩むペースを上げていくその過程で。姿勢が前のめりとなっていく中で、嘆きの三重奏を奏で始め。

 そして、大地を蹴り出しスタートダッシュの全力疾走によって勢いを纏い出すと同時にして。その勢いのままに、俺という一人の標的へと。エリアボス:魔族との契約者は、その使命のままにこちらへと襲い掛かってきた。



 ブロードソードを構え、眼前から迫り来る魔族との契約者の行動に備える。

 その脅威は、既に何度とも何度とも見せ付けられた。だが、そうして脅威を見せ付けられてきたからこそ。俺はより、ヤツの攻略に必要不可欠となるであろう情報を得ることができていたのだ。

 ヤツには、剣士スキル:カウンターが通用する。その破壊力を宿す爆破属性の攻撃も、オレンジのオーラを纏ったスキル攻撃でなければいなすこと自体は可能である。……ということは、だ。物理主体である、今現在の相手は。接近戦を得意とする剣士との相性は抜群とも見て取ることができる。


 ……勝利の可能性は十分にある。ならばこの戦い、勝ちに行くしかない!!


『オォォォォォォォォォォオッ!!!』


 嘆きの三重奏と共に右腕を振り被り。その異常に発達した豪腕を振るい、俺へと拳を落としてくる。

 それは、降り注ぐ隕石を思わせる光景。大気を纏って襲い掛かってくる拳を前にして、確実に避けるためにしっかりと見据え、タイミングを見計らって回避コマンドを選択していく。


 続けて、振るわれた左腕によるもう一つの拳が俺へと降り注ぐ。回避で飛び込んだこちらの隙を突く、凄まじい隙潰しの一撃。

 だが、こうした接近戦であれば強気に立ち回れるのが剣士の特徴。体勢が整っておらず、続けての回避が行えないこの状況下にて。すぐさまにスキルの欄を開いて次の行動を選択していく。


「剣士スキル:カウンター!!」


 透明の気を身に纏い、隕石の如く降り掛かった拳がそれに触れた瞬間に。身体中に巡り巡ってきた瞬発力を足に集中させ。息もかかりそうな距離の拳を、紙のようにひらりと回避しながら。飛び出した勢いを以ってして、その左腕を沿うようにヤツの剣へと跳躍していく。

 エリアボス:魔族との契約者の弱点である、胸に突き刺さる剣へと一気に距離を詰める。……なるほど。この動作を繰り返し、こうして攻撃を加えていけば間違いなく勝てる。そう考えれば、この戦闘は至って単純な作業にも成り得るだろう――


「――ッ!?」


 次の瞬間にも、突如として魔族との契約者の身体が宙に浮いた。

 まるで、天に重力が掛かったかのような。その素早さを以ってして、まるで引き寄せられるかのように。魔族との契約者は、その場から後方へと物凄まじく特大な跳躍を行ったのだ。


 俊敏性が優れているとは聞いていたが、まさか、そのステータスを跳躍にも活かしてしまうだなんて。その禍々しく毒々しい藍色の筋肉質から繰り出される行動に度肝を抜かしているその時にも、洞窟の壁に張り付き、それを蹴り出すと同時に滞空する俺のもとへと一直線に飛んでくる魔族との契約者。


『オォ……オォォォォォォォォォォォオッ!!!』


 カウンターによる反撃のモーションで為す術も無いこの状況。ただ、目前から迫り来る恐怖を味わいながら。俺は、隕石のような拳と正面衝突。瞬く間にHPが六割と減少し。気付いた時には地面をバウンドし。遥か後方であった反対方向の壁に激突。更に、その衝撃で宙に投げ出され。俺はやられ状態のまま、洞窟のあらゆる場所に次々と激しく打ち付けられていく。

 その間にも、スタートダッシュを決めて全速力で駆け出していた魔族との契約者。脅威と勢いを身に纏い、やられ状態である俺へと右腕を突き出してくる光景を前にして。


 眼前からの拳に戦慄する。これを食らってしまったら、俺のHPがゼロとなりゲームオーバーとなってしまうんだ。……それだけは絶対に避けなければならない……!!


「うぉ、ぉ……ォォオオオオオオォッ!!! 剣士スキル:ディフェンシブスタンスッ!!!」


 やられ状態であらゆるモーションを受け付けないこの状況下にて。変化系のスキルであるディフェンシブスキルを咄嗟に発動し、防御力上昇の緑のオーラを纏うと同時に、眼前から降り掛かった一撃を全身で受け止める。

 合計HPは……一割。だいぶと被ダメージを抑制し、又、やられモーションも先の派手なやられ方にはならなかったために。そのままトドメとして放ってきたもう一発の右ストレートを前にしても、余裕を持ってコマンドを選択していく。


「ディフェンシブスタンス、解除!! ――剣士スキル:カウンターッ!!!」


 宣言と同時に、透明の気を帯びて右ストレートを身体の回転で鮮やかに回避し。その勢いのままに、目の前に捉えた胸の剣へと強烈な反撃を浴びせていく。

 柄に手痛い一撃を受けた魔族との契約者は、嘆きの三重奏を奏でながら後退し胸を抑え込む。……回復をするのであれば、今だ!!


「回復アイテム、ポーション。――んぐッ……ッソードスキル:エネルギーソード!!」


 取り出したポーションを飲み干し、ビンを投げ捨てると共に手に持つブロードソードの刀身に青の光源を宿し振りかざす。

 直後、左腕を振り下ろし拳を降らせてくる魔族との契約者。力のままに振り抜かれた一撃は、俺の姿を完璧と捉えている。が、その通常攻撃をスキル攻撃であるエネルギーソードで打ち消し。巨大な拳を退けて、俺は再びと剣へ飛び掛かろうとする。


 しかし、弱点を何としてでも守り抜きたい魔族との契約者。全身ごと捻り、その異常に発達した巨大な両腕を広げてその場で回転を始めたのだ。


「ラ、ラリアット……ッ!!」


 超が付くほどの広範囲攻撃を目の当たりにして、俺は次々と薙ぎ払われてくる両腕の猛攻の中を、回避コマンドの連打で必死に凌いでいく。

 腕を飛び越え、腕の間をくぐり。絶え間無く襲い掛かる両腕の嵐に手こずりながらも、それが繰り出されていくその中で、中心部に晒された隙を何としてでも突くべく。俺はその機会を必死に伺い。そして……。


「ッ!! 今だッ!!」


 襲い掛かってきた腕の猛攻を回避し、その勢いで地を蹴り、目の前に来た剣の柄へと飛び掛かる。

 嵐の如きラリアットが襲い掛かるのは、異常な発達を成したヤツの両腕部分の範囲のみ。その回転の原動力でもある駒の中心部である身体は、回転の隙によってガラ空きのために。これはもらった……!!


『オォ……オォォォォォォォォォォォオッ!!!』


 だが、その次の瞬間にも。魔族との契約者は先までの回転から両腕を持ち上げる動作へと流れるように移行。

 俺の仕掛けるタイミングが悪かったのか。はたまた、この反撃を呼び込むための餌だったのか。チャンスだと思い仕掛けたその隙は、実は、自らを危機へと追い込むピンチだったのだ――


「ぐぁッ!!」


 両腕を上半身で持ち上げた、その行動。如何にも力を溜めている動作と見て取れるこの行動に意表を突かれ、自身の行動が裏目に出てしまったことによる驚愕で身が凍っていたその時にも、両腕の振り下ろしに巻き込まれて俺は真下に急降下する。

 ――待て。この、両腕を上半身で持ち上げる動作の攻撃って確か……ッ!!


「ま、まずい……ッ!!!」


 叩き付け。から派生する爆破属性の攻撃は、俺のHPを悠に超える定数ダメージが設定されている。それはつまり、その爆破属性の攻撃を受けた瞬間にも俺のHPはゼロになり、待ったナシの即死を迎えることとなる――


 ……戦慄。しかし、同時にして、どうにかしなければならないという思いがこの身体を突き動かす。


「――っ!!」


 急降下からの、地面への落下。地に叩き付けられ、その隙にも爆発に巻き込まれて死亡というのが最悪のルートだった。故に、地に叩き付けられるそのタイミングに備えるためにも、咄嗟の行動でガードのコマンドに手を添えておき。俺は落下の瞬間と共に、直感でそのコマンドを選択したのだ。

 すると、その直感的な行動が功を成すことになる。ミントからのチュートリアルも受けていないその動作によって、俺は叩き付けられたその先で受け身を取ることに成功。ゲームというシステムを、これまでの経験で何となくと把握していたがための反射的な選択で何とか体勢を立て直し。次に、魔族との契約者が行う行動を見計らい……!!


『オォ……オォォォォォォォォォォォオッ!!!』


「剣士スキル:カウンターッ!!!」


 叩き付けからの派生である、大爆発。その爆炎が巻き上がるタイミングと共に、剣士スキル:カウンターを選択。

 透明の気を纏ったその瞬間にも。魔族との契約者及び、俺の辺り一面が。大気が破裂する轟音を立てながら、この一帯を一掃する大爆発が巻き起こる。


 爆発が次々と連鎖を続けていく、破壊と爆発が織り成す凄惨なその光景。

 それに巻き込まれてしまえば、まず無事に済まされやしないことだろう。……但し、それは何の対策もしていなければの話だ……!!


『――――ッ!!』


 次の瞬間。大爆発の中から、発射された大砲の弾の如く一直線と飛び出す人間の影。

 透明の気を纏い、その大爆発の勢いに後押しされるその身体。爆炎の中から姿を現し、真正面に捉えた巨体の胸部へと一直線に飛び掛かり。そして、通り抜け様に。その大爆発の勢いを纏った、爆発的な威力を宿した絶大なる反撃を巨体の弱点へとぶち込む。


『オォ……オォォォォォォォォォォォォォォオッ!!!』


 胸部が爆発し、弱点である剣の柄が欠けて。身体を貫いた爆発的な一撃に堪らずと仰け反り、そのダメージに悶え苦しみ出す魔族との契約者。

 共に、弱点へとその威力を叩き出した俺の身体は。そのあまりにもな爆発的の勢いを以ってして、魔族との契約者が背にしていた壁に激突。それ自体にはダメージは無かったものの、なるほど、やはりいなした攻撃が強ければ強いほど、カウンターの威力が上がるのだなと改めて実感をしながら。その勢いのままに壁を蹴って、洞窟の中央へと着地を行う。


 このカウンターの一撃に、これまでには無かった絶大な手応えを感じた。この攻撃をまともに受けた魔族との契約者は、さぞ堪ったものではないだろうと。先の威力にヤツの身の心配までをしてしまう始末。

 ……だが、それで満足をしてしまっていた俺は、どうやらまだまだ未熟者であったことに違いない――



『オォ……オォ……オォォォォォォォォォォォォオッ!!!』


「……ッ!?」


 ……体勢を立て直し、その嘆きの三重奏を解き放つ魔族との契約者。

 次の時にも、その禍々しく毒々しい藍色の身体には橙の斑点を浮かばせていき。咆哮を終えた魔族との契約者は、その殺意に満ちた鋭利な視線をこちらへと向けて。おぞましいほどにまでゆっくりとした足取りで。しかし、その一歩一歩を踏み締めるかのように、段々とこちらへと近付いてくる。


 ……強力な一撃が決まったことで、俺は慢心をしてしまっていたようだ。

 その一撃は、この戦いの行方を左右するほどの大ダメージを叩き出したと思っていた。そして、それは実際にそうであろうという確信さえも存在していた。

 ……でも、それだけじゃあダメなんだ。たとえ、その攻撃が相手にとって致命的な一撃であろうとも。それを耐えられてしまっては、それは勝利と呼ぶことができない。


 ……むしろ、これからが本番なのだ。


 その全身に憤怒を滾らせ。攻撃も速度も、あらゆるステータスがパワーアップし。ようやくと再び本気を引き出してきたエリアボス:魔族との契約者。

 これから繰り広げる攻撃と爆発こそが、魔族との契約者というボスエネミーの本領であり。俺はそんな脅威を振るう災厄の化身を相手に、一人というソロの状態で、本当の決戦へと臨まなければならなかったのだ――――

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