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ザ・ゲームワールド  作者: 祐。
三章
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対峙

「ブラート!!」


 誇らしげに佇む彼の背に呼び掛け、俺は駆け足でNPC:フェアブラント・ブラートへと駆け寄っていく。


 ビニールの安っぽいアジトの壁に隠れていた洞穴。それを通り抜けると、その先には丸々一つの村や町が収まるであろうほどの巨大な洞窟が広がっていたのだ。

 遠くまで見渡せる広さに加えての、遥かてっぺんに天井がある光景を前にして。まさか、このマリーア・メガシティにこれほどまでの巨大な空洞が存在していることなんて思わず。新たな景色とその現実に驚いて思わず唖然としてしまう。


 そんな俺の様子に、予想通りとも呼べる得意げな表情を見せながら。ブラートは両腕を広げて誇らしそうに話し掛けてきた。


「どうだい? アレウス君。このえらく広々とした、地下ながらに開放的な洞窟の光景を目撃した感想は? ――この街のお偉いさんが計画し、しかし予算の都合上によって中止とされた地下都市計画の中途半端な名残を前にして。さぞ、このマリーア・メガシティという街を掌握する人物達の無鉄砲さをその目で目の当たりにしたことだろう。……全く、地下都市計画といえ、今回の悠長な契約の見学といえ。この街の上層部は、実に危機感というものを知らない。こんな空洞が残ってしまっていては、いつこの上で繁栄している女神と経済の街が陥没してしまってもおかしくないだろうし。今回の契約だって、あと一歩でも遅ければ世界が危機に瀕していたかもしれないというのにね」


 駆け寄ってくる俺へと、その長広舌で詳しい説明を施してくれるブラート。

 近寄ってきた俺へと腕を伸ばし、こちらの肩に腕を掛けるなり。ブラートは前方へと向き直りながら、こう言葉を零してきた。


「――尤も、既に手遅れという線も捨て難いところが、この街の存亡に更なる不安を拍車させるね」


 ブラートと共に振り向いた先には、先のアジトにて偉そうに振舞っていたスキンヘッドの人物。この悪の組織の親玉でもある、親方が睨みを利かせて佇んでいた。


「探偵・フェアブラント……!! てめぇの存在は都市伝説だと思っていたものだが、まさかウチの組織に紛れ込んでいたとはなァ……!!」


「都市伝説? んー、それは違うね。その言い草は実に気に食わない。この俺の正義から、先の訂正を提示するよ。――んー、となるとー……この探偵・フェアブラントは。この都市の陰で暗躍する、所謂、生ける伝説ってところかな?」


 得意げ且つ誇らしげな調子で余裕のままに挑発をしていくブラートに、そのスキンヘッドに血管を浮かせて怒りを表していく親方。

 そんな親方の様子を見て満足したのか。ブラートはふっと鼻で軽く笑い飛ばしてから、俺の肩から腕を離し後ろへと歩きながら誇らしげに言い放つ。


「尤も、それは。お前さんがこれから起こる激しい戦いを前にしてでも、尚無事に地上へと這い出ることが出来。この俺の存在を言いふらせた場合の話であるのだがね!!」


 瞬間、俺とブラートの付近に。気配も音も無く降り立ったミズキの姿が現れる。


「さー、ミズキ!! アレウス君!! そして、ミントちゃん!! 君達の出番だ!! この俺は、先に出口へと向かった二人組を追う!! ということで、この場は君達に任せたよ!! 相手はこの組織の親玉とはいえ、君達の実力が肩を並べれば十分に勝利を収めることができる相手だろう! さー、この探偵・フェアブラントがこの眼と正義で見定めた優秀なる人材達!! この俺の名誉のためと! それ以上に! この女神と経済の大都市、マリーア・メガシティの秩序と平穏のために! その実力を存分と振るうといい!! ――ミズキ。アレウス君。ミントちゃん。……健闘を祈るよ」


「任せて。ブラートの兄さん」


 俺とミズキの肩に手を軽く乗せてこの場を託し。ブラートはこの場を俺達に任せ、地上への出口であろうもう一つの洞穴へと走り去っていく。


「……けっ、正義だとかなんだとか、そんなくだらねェことばかりをぬかしやがって。自分が正しい行いをしていて偉いからって調子に乗っているあの姿、ほんとにうざってェな」


 唾を吐きながらブラートの背を睨む親方。吐き捨てるように呟きながらも、眼前に存在しているこちらの存在へと視線を移し。鼻を鳴らしながら、悠々とした余裕のある態度で歩み出してくる。


「おォいッ!! 同じく正義を語ってヒーロー気取りでいる愚かなガキ共ォ!! あんな人間の下で人助けやらなんやらと、まぁ吐き気もするようなお人好しで俺の前に立っているんだろうがよォ!! どうやら、ヤツに毒され過ぎて、その頭の神経がおかしくなっちまったようだなァ!? 今も敵を前にして、街の皆を背負って戦うヒーローだと思い込んでいるようだがァ? 善人ぶって気持ちよくなり過ぎちまって、どうやら正常な判断さえもできなくなっちまったみたいだなぁ~?? ――何が生ける伝説だ。何がマリーア・メガシティの秩序と平穏のためだッ! おめェら調子に乗ってんじゃねェッ!! あァいいぜェ!! 掛かってこいよォ!! この世間知らずの馬鹿なガキ共ッ!! おままごとをやる相手を間違えたことを、その身で思い知らせてやるからよォ!!!」


 怒号を吐き散らすと同時にして、その筋肉質の身体から取り出された一本の巨大な剣。

 それは、俺が手に持つブロードソードを遥かに上回る大きさを誇っており。その刀身の大きさ。その長さ。そして、その巨大さから察することのできる力強さ。……親方が取り出した巨大な剣は、見るからに破格となる攻撃力を有していそうだ。


 それを悠々と持ち上げては肩に乗せて。強面にしわと血管を作りながらこちらへと歩み寄ってくる。……その前で、尻目でありながらもミズキは俺を睨んでくる。


「あの程度、おれ一人で十分だ。おまえは観戦しているだけでいい」


「それは頷けないな。ブラートは、この場を俺とミズキとミントの三人に託した。だから、助手であるミズキが俺にそう言おうが……いや、仲間から何と言われようが、俺は全力を以ってこの戦いに参加するよ」


「助手だからって下に見ているのか? おまえはおれの足枷になる。邪魔なんだよ」


「好きなだけ言ってろ。少なくとも、俺は昨日よりも断然と成長した。きっと役に立ってみせるさ」


「…………」


 このメインクエストのボスともなる相手を前にしながらも、仲間の内に漂う嫌悪のムード。

 その空気はメンタルにも及ぼしてくるであろうが……現在はそれをどうすることもできない故に、今はそれを把握した上で十分なポテンシャルを発揮しなければならない。


 ギクシャクとした間柄でありながら、駆け出したブラートを尻目にして。俺は目前から歩み寄ってくる親方へとブロードソードを構えていく。

 睨みを利かせる双方は様子を伺い。段々と歩み寄ってくる親方と、構えてその時を待ち続ける俺とミズキ。

 ……そして、親方がオレンジ色のオーラを纏い出したその瞬間にも。この拠点エリア:マリーア・メガシティにおけるダンジョン:悪の組織のアジトにて立ちはだかった、エリアボス:組織の親方との戦闘が幕を開けたのであった――――

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