第22話 どんどん
トールは言われるままにフォレストホロウ洞窟までやって来た。
ラムの口車にまんまと乗せられている感があるが、そんなことはもはやどうでもよくなってきている。
やはり、「冒険者」は楽しい――。
まだ「初日クエスト」と同じクエストを、昨日と合わせて2回達成しただけに過ぎないが、それでも、『ラムの剣と腕』が違和感なくフィットしているのがわかる。
それに、一体また一体と魔物を倒すたびに、自身の剣裁きや威力、体の捌き方や、戦術などが上達していくのを身にしみて感じられている。
こんな感覚は、「木こり」になった初めの1年ほどの間以来のことだ。
父に斧の振り方を指南してもらい、毎日来る日も来る日も素振りと実践を繰り返し、数日たってようやく少し上達する――。
「木こり」の修業の時はそんな感じだった。
ゆっくりとではあるが、成長していくのを実感できている間はやはり「楽しかった」のだ。
それが、今は、「ゆっくりと」ではなく、「どんどん」成長していくのが感じられている。
これが「楽しくない」わけはない。
「トールさん、来ますよ?」
ラムがトールの斜め後ろから声を掛けてきた。
もちろん、聞こえている。
聞こえているのはラムの声の方ではない。前方からやってくる、「ととと」という音――『子鬼』の足音だ。
トールはその場で腰を落とし、『ラムの剣』を構える。
洞窟の中ではあるが、明かりはラムの「魔法」によって確保されており、トールの周囲、約10メートルほどは照らし出されている。
洞窟の幅は狭いところでも7~8メートル、広いところでも10メートルほどで、比較的広く、かといって壁が見えない程広すぎもしないちょうどいい広さだ。
なるほど、『初心者向けダンジョン』であるという理由が良く分かる。
足音が近づくにつれ、明かりの届く範囲内に『子鬼』が飛び込んでくるのが見える。1、2、3――。3体だ。
灯りの中に入ってもなお、「ととと」という足音のテンポは変わらず、トールの方へと向かってくる3つの子供ほどの背丈の魔物。
肌は緑色で、背丈のわりにやや手足が長く、お腹がポッコリと出ていて、見た目は飢えた子供のようだが、その顔つきが「人間ではない」ことを物語っている。
やや長い耳、長く垂れた鼻、そして何よりも、蛇のように黄色く光る眼――。
手にはなにやら木製の棒のようなものを持っているが、刃物ではないのなら打たれどころが悪くない限り即死や部位欠損はあり得ない。
落ち着いて対応すれば、ノーダメージとはいかないまでも、やれるはずだ。
「行くぞ――!」
トールは自分の間合いに『子鬼』の一体目が入るや否や、だっと駆け出し、剣を振る。
すぅっと滑らかに滑る剣は、トールの狙い通りの軌跡を描き、やがて、一体目の『子鬼』の胴へと吸い込まれ――。
ざしゅ――、という手ごたえをトールの腕に伝えながら、綺麗な弧を描いた。




