ゲームの世界へ⑧
「それでは魔法の使い方を教えます」
「はい」
正直なところこれを待っていたというのはあった。
そうダイブ式ゲームの中で一番楽しいことはと聞かれるとネットではこう答える人が多い。
ゲームの中で、空想としか思えない魔法を使えるところだ。
確かに……
ボクだって憧れていたんだ。
魔法使いに……
だって普通ならありえないことをできるんだよ。
手から火を出したりができるんだよ。
誰だってやったことはあるはずだよ。
右手を前に出して、それとなく自分で考えた呪文を唱えて何もでないという恥ずかしい行為がこの世界では恥ずかしい行為ではないんだよ。
そうあんな中二病的なことをしても……
うん、昔自分でしてたことを言い訳してるようでなんか辛い。
ってそんなことより魔法の発動の仕方を聞かないと。
「それでは魔法の使い方ですが、まずメニュー画面から魔法書を選んでください。
そこに一つ既に魔法が描かれていると思います。
それを今回は使います。
まずその魔法書に書かれている魔法を読んでください。」
ボクは言われた通りに魔法書に書かれていた魔法を熟読する。
そこには簡単な絵と説明が書かれていた。
絵はその魔法を発動した様子を描いているみたいだね。
魔法の内容は、水を圧縮して水弾として飛ばす魔法。
名を”ウォーターボール”と書かれている。
そしてそれに必要な詠唱も下に書かれていた。
それを深く読んだボクはレイラさんの方に向き直る。
「それでは魔法を発動してみましょう。
発動には魔法の詠唱とその発動する魔法を思い描くことで可能になります。
それでは一度試してみてください」
そう言われてボクはあの絵のようにイメージする。
右手に水が集まってそれが球になって前に飛んでいくさまを……
そして詠唱する。
「水よ、球となりて敵を撃て、ウォーターボール」
最後まで唱えたところですぐさまに体の中が一瞬熱くなって手の中にそれが収束されるのを感じると思ったら、手を開いた位置にサッカーボールほどの大きさの水の球が出来上がっていて、それが真っ直ぐに飛んでいく。
「すごい……」
これが魔法なんだ。
ゲームの世界で魔法を放つとこんな感じになるんだ。
「それではゲームを楽しんでください」
そしてそれを見届けたレイラさんはそう言い残して去って行った。
その姿を見ながら思う。
途中からまともになったのはたぶんシステム的な要素が絡んでいたからと思うけれど、それにしても本当にNPC全てがそれぞれに自我を持っているんだろうか?
って考えても仕方ないかな。
とりあえず、まずはこのゲームの戦闘がどんなものか知っておく必要があるよね。
そう考えたボクは、もともと街の外れにいたので、そのまま外のフィールドに飛び出ていった。
次からようやくゲームの醍醐味である戦闘も始まってきます。
よければこれからもお付き合いよろしくお願いします。