ゲームの世界へ⑨
うーん、敵が出てこない。
街を出て地図を見ながら街道と呼ばれる場所を歩いているけれど、敵に出くわさない。
え、敵にエンカウントすらしないゲームってありえるの?
そんなことを考えていると後ろから声をかけられた。
「君は冒険者かい?」
「はい、そうですけど……」
振り向いて返事をしながらその声をかけてきた主の方を確認すると、その男はどうやら商人らしくわりと大きなリュックを背負っている。
でもなんで急に声をかけられたんだろう。
「もし、モンスターをお探しなら、この辺りの森に行ってみるといいよ」
「あ、ありがとうございます」
ああ、どうやらいい人みたいだ。
たぶん地図を広げていたからそれで親切にしてくれたんだろう。
うう、不審者扱いして申し訳ありません。
ボクはお礼を言うと、その商人の人が示してくれた街近くの森に向かって歩いて行った。
「ふぅー……
結構しんどい」
森の前まで来たところで足をとめて少し休憩する。
「よし、休憩終わり」
そして気合をいれて立ち上がった。
ボクはなるべく慎重に森の中へ入って行った。
「わ、木の匂いだ。
リアルに近くするからって木の匂いまで再現してしまうとなんだか現実って感じがする。
それに土をすごい……
肌触りが本物と一緒だ」
そんなことを一通り確認したところで敵を見つけた。
それは狼系の形をしたモンスターで、名前もウルフとありきたりの名前をしている。
よし、あれを倒してみるかな。
ボクはあの時とった剣を右手に構えるとそのウルフに近寄る。
そのウルフもこちらに気づいたようでこちらに顔を向ける。
「ワオーん」
そしてすぐさまに遠吠えする。
これって戦闘開始ってことかな?
そう考えたボクは先手必勝とばかりに前に走り出す。
まずは距離を詰めて攻撃を当てないと意味がない。
だけど、その攻撃を読んでいるかのようにウルフは後ろに飛ぶ。
く……
避けるなー。
そしてボクはそれを追いかける。
とそこで違和感に気づく。
何かに見られているような……
慌てて後ろを振り向いた時にはもう遅かった。
後ろには更に三匹ほどのウルフがいた。
えっと、これってもしかしてモンスターを釣っちゃってった?
でもこの一体しかモンスターを狙ってないし……
そこまで考えたところで気づく。
あ、もしかして最初の遠吠えって同じモンスターを呼ぶものだった?
でもそれだったら納得がいく。
っというかこれはもう逃げるしかない。
そう、今は追いかけている側から追いかけられる側に移行していた。
まあ、モンスターが四体もいたんじゃ仕方ないよね。
とりあえず森からでないと……
「って、きゃーーーーー」
そう思って走っていたボクは、慣れない服のせいで盛大に転んだ結果……
女の子みたいな悲鳴をあげながら地面に倒れたところをウルフにやられた。




