第十章、サプリメント2
避雷針から..ファーストラブ オリジナル
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聡は思いも寄らないこの事態に、気が遠くなって行ったのだった。
聡は秋子に連れらて、家にお邪魔した。
そして聡は、台所のフロアーの、テーブルの椅子に座っていた。
秋子、「今、床の間散らかっていて。ごめんね、こんな物しかなくて」。
そう言うと冷蔵庫から、ペットボトルに入ったジュースを、コップに注いでくれた。
聡は深々と頭を下げて、一口飲んだ。
秋子も、聡の向かい側に座った。
秋子、「風間君って言ったよね?」。
年齢的に三十後半の感じの、比較的若く見えた香菜の母親だった。
聡は秋子の問い掛けに、「はい..風、間聡です」。
秋子、「あの子、言語障害でしょ!あなたの事聞いたら、はとひ君て言ってたから、
だいたい“と”は 言えるから、ひとし君だと思っていたわ..」。
聡は、「あ、あー、まあ..それはそれで..」と、軽く会釈をする様に頭を下げた。
秋子、「聡君、あの子の言っている事が解るなら、手話の心得とかが或るの?」。
聡は一番聞かれたくない事を、そのものズバリ言われてしまった。
聡は躊躇いながら、嘘も思い付かず、本当の事を告げた。
「僕、今年の二月の初めに、友達と屋上で、けんかしたのです。
その時、いきなり雨が強く降り出して来ていて、雷も鳴始めていて。
その時けんかが夢中で、空の状況なんて知るよしも無くて。
そうしたら..パンと言う音と共に、体中がいきなり痺れて、
闇に包まれ気が付いたら、病院のベッドから両親、親友、担任が僕の顔を伺っていたのです。
そうしたら、誰も口を開いていないのに、頭に言葉が走るようになったのです」。
秋子は、へ?という面持ちで聡を見つめた。
秋子、「そんな事って、有るの?」。
その問い掛けに聡は、「病院の脳担当の先生からは、
『有り得ない事では無い!』と、告げられました。でも今だに悪い夢を見ている様で..」。
秋子はその話を聞いて俯き、穏やかな口調で、
「私、十年前、夫の実家の木場に住んでいたの。夫の 実家はダンボールを組み立てる、
小さな工場で、あの子が七つの時、夜中に火事に遭ったの。
私と香菜は工場と隣接している、家の寝室で寝ていた。
夫は工場で夜遅くまで、働いていたの。小さな町工場で、不景気に煽られて、
夫は自分の親と子を養うために、睡眠時間を削って働いていた。
人手が足りなかった事もあって、夫の親も仮眠を取りながら、
交代で作業をこなしている毎日で。ある日手作業でダンボールを組み立てていた時、
組み立てたダンボールを置いて有った倉庫の横に、
三畳一間の小さな部屋が有って、そこで両親と何時も交代で仮眠を取っていたの。
私も夫を気遣い、夜中に起きて工場に出向いていた。
夫が働いているのを確認して、何かが燃えているような匂いがして、
不意に仮眠室に行ってみたの。そしたらもう煙が充満していて、私は慌てて夫に告げに行ったの。
それを聞いた夫も慌てて、部屋に行ったらすでに、手がつけられない有様だった..。
でも夫は両親を助け出そうと、何も持たず煙の中に消えて行った。
仮眠室どころか倉庫まで、煙が充満して来た。その時だった!
いきなり煙が火に変った。一瞬だった!私はどうする事も出来ず、
ただ夫の名前を呼び続けていた。私はなんとかしようと、消火器を探して必死だった。
でも火はあっという間に、工場内を包んだ。気付いたら、香菜が工場に立っていたの。
燃え盛る炎の中で、悶える父親を目の当たりにしてしまった。
私は香菜を抱いて、そこから逃げる事で必死だった。そこからは私も香菜も、
記憶には定かでは無くて。気が付くと、香菜は放心状態..。
その状態が一週間程続いたの。
私も同じような症状で、病院で横たわっていた。
火事の原因は、『夫の父親のタバコの不始末』。そう警察の方に告げられた。
病室で横たわっていた私と香菜。横で寝ていた、香菜の名前を口にすると、
言語がおかしい事に気付いた。私はテレビを指差し『これ何?』って聞いたら、『へべび』。
信じたく無かった!必死に目に付くものを指差して、
香菜に問いかけた。皆..言語がままならない!その時..気が遠くなった。
最後に自分を指差して、『お母さんの名前は?』問い掛けたら、『はひほ..』」。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




