第十章、サプリメント
避雷針から..ファーストラブ オリジナル
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そして、次の日の…。
聡は、家の近くを歩いていた。
対した宛ても無くただコンビニに、雑誌を読みに行こうと外に出た。
知り合いを亡くし、信じていた夢も脆くも崩れ去り、何より心理透視能力が、
意中の重荷なっている事は、言うまでも無かった。
心地よい季節とは裏腹に、俯いて歩く聡は何を思うでもなく、
ただ切なさ悲しさ侘しさが頭をかすめる。
小百合が昨日言っていた言葉が、頭を過ぎっていた。
(どうすればいいの?どうしたら..これから皆で、楽しくやって行けるの..?)。
それは聡が言いたい事なのであろう、それは皆の願いである。
聡は歩きながら独り言を、「そんな事、俺が解決出来るなら、とっくにライブで弾けてらぁ!」。
思いに更けたまま、黄昏ていた。
考え事をして歩いていたら、家の近くのコンビニを通り過ぎてしまった。
聡は戻るのも面倒になり、そのままその先の、コンビニへと歩いていった。
その時、癒してくれた優しい香菜の愛しさがこみ上げる。
聡は何気なく、その足を最寄の駅へと運んだ。
そして、世田谷線の三軒茶屋駅を後にしていた。
今、心を癒す者は、香菜ただ一人だった。
聡は何かを思い出したか“はっ”っと、急に後ろを振り向いた。
昨日の夜、恵美の最後の一言を思い出した。
(私、素直じゃないから、あの子みたいにね..。)
今、頑なになる香菜への思い、傷つけられたくない、
何よりも掛け替えが無い者へと、思いが深まっていたからだった。
夜の様相とは異なり、住宅街は近所の子供は、はしゃぎ。
自転車に乗った中年のおばさん、植木に水を与える老人、庶民的な場を感じる東京の一角であった。
聡は、小学校の角を曲がると、香菜の家にたどり着いた。そして家を見上げた。
今、自分を見つめ直す聡は、香菜に切なさを感じていたのだった。 携帯を手にして..。
そして俯き、立ち去ってしまった。
丁度、小学校の角を曲がった時だった。
香菜の母秋子が、スパーの袋を持って聡とすれ違った。
秋子は近所では見かけない若い子だと、不意にすれ違いざまに聡を見ていた。
すれ違って直ぐだった、聡は立ち止まり携帯を開いた。
秋子は角を曲がろうとした時、何気に気になり後ろを振り向いた。
聡は携帯を手に佇み、目を瞑っていた。
秋子はその姿を見つめていた。
少年犯罪が多発している東京。近所でもあり、その様子を眺めていた秋子は、
家の近辺に聡と同じ歳くらいの子は、記憶に無かった。
従って、『友達の家を尋ねて来た訳では無いだろう?』と、仮定した。
明子は、見かけない若い子ではあったが、その様子を見た時、なんとなく悪い子には見えなかった。
増してや、自分の娘は言語障害。他人と進んで会話が出来るとは思えない。
大人しそうでそれでいて、今風のみなりをした子が、
まさか香菜に恋心を抱いているとは、思いもしなかったからである。
秋子は聡に近づき、「何か、遭ったの?」。
聡は”はっ”と、目を開け秋子を見て、「い、い..や、あの..別に..」。
そう答えると秋子は優しく、「何だか、思い詰めている様だったから、心配になって..」。
聡、「す、すみません、ぼ、僕..近くに..好きな子がいて..でも、好きになる資格無いんです」。
聡はその時、驚いて自分が何を行っているか、解らなくなっていた。
まさか話しかけている目の前の人が、香菜の母親だとは、思いもしなかったからである。
秋子、「へ?ここ近辺は五才の雪ちゃんと、八十歳の鼓江さん、あとは私と同じくらいの主婦よ、
それと家の娘..でも言語障害で、あなたとまともに話す事など出来..」。 聡の顔が青ざめた。
秋子は、顔面蒼白の聡を目の当たりにした。
秋子、「ま..まさか!」。
聡、体が膠着して、「で..出直して来ます..す、すみません!」。
そう言うと、その場から立ち去ろうとした時だった。
聡は、腕を掴まれた。
秋子が、「ま..待って!」。
聡がゆっくりと、振り向いて。
俯き、「風間聡と申します..」と、一言。
秋子は改めて、「この頃あの子、すごく明るくなったの。楽しそうで、
はしゃいでいて、私の心、大事にしてくれる人が現れたって」。
聡はその言葉に俯きながら、少し微笑んだ。
秋子が、「香菜、『入学シーズンに向けて、新入生を出迎える時イベントで、
同時に展覧会も開催する』とかで、学校に行っているの」。
聡、「あ..そ、そうですか..」。
秋子は微笑んで、「じき帰ってくると思うから、家に来て待っていれば」。
聡は、「あ..あー、僕そのー..」。
秋子は、「あの子が好きなのでしょ!」微笑んで、「あなたの気持ち、よーく解ったわ!」。
そう言われてしまうと、後は従うしかなかった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




