宇宙艦隊オッパリオン009話「オッパリオンの状況」
超光速航行「ニュートレースジャンプ」に無事成功したスタティア一行。
海賊に大きな損害を与えることができた一方で、スタティアの受難は続く。
翔平と奈菜、そしてオッパリオン人の面々は、果たして無事にオッパリオン星へとたどり着くことができるのだろうか?
翔平に隠された謎の力「Zリーヌンス」とは一体・・・。
宇宙をめぐる戦いの火蓋が切って落とされる。
宇宙艦隊オッパリオンの本編はここから始まります。
【〇〇九 オッパリオンの状況】
海賊の包囲網を抜けて強引にニュートレースジャンプを敢行したスタティアはオッパリオン星系とはかけ離れた宙域にジャンプアウトしていた。
艦橋にはミストレアと、副艦長のエテレスが中央のモニターを眺めている。
「現在地確定しました。オッパリオン星系までは通常のジャンプで二回分ほどの距離があります」
「わかったわ。艦の状況はどう?」
「損害状況があがってきました。次元破断砲がオーバーロードにより損傷、現在は使用不可能とのことです。機関部も同じくオーバーロードにより損傷しております。ジャンプに必要なエネルギーを得るには修理が必要とのことで、現在復旧作業中となっております」
「思いがけない被害が出てしまいましたね」
被害状況を聞いたエテレスがため息混じりに漏らす。
「あれほどの威力の破断砲を使ってすぐにジャンプまでしたんですもの。艦がバラバラにならなかっただけ幸いかもしれないわね」
「おかげで窮地は抜けられました」
「でも油断はできないわね。この宙域も帝国の監視が生きている場所だもの」
「そうですね。修理を急いでもらいましょう」
「修理の予測時間はどのくらいかしら?」
「現状ではまだ目途は立っていないもようですが、報告では予測されていた損害らしいのでそう手間取らないとのことです」
「予測されていた?」
「はい。博士の方からZリーヌンス使用時にはオーバーロードを起こすかもしれないと、あらかじめ損害予測がなされていたとのことでした」
「なるほど、そういうことね」
「この艦も母乳機関も、設計はミィアルーン博士でしたね」
「ええ。でも被害予測ができているのならその前に止めて欲しかったわね」
「限界値を見たかったのかもしれませんね、科学者として」
「困ったものね。――修理を急ぐように伝えて。まずは機関部を最優先に。次元破断砲は後回しでかまいません。それと周囲への警戒を常に行うように」
「了解。引き続き全方位対空監視続けます」
艦橋内には適度のな緊張感は残っているものの、戦闘中ほどではなかった。
「そういえばZリーヌンス該当者は大丈夫でしょうか?」
「まだなんの報告も上がってきていないようね。まぁ提督も一緒のことですし、大丈夫でしょう」
「まさかあのような青年が該当者だったなんて。わたしには少し意外でした」
「そうね。でも、悪い人のような印象ではなかったわ。あくまで個人の意見だけど」
「それはわたしも同感です。無事、協力が得られるといいですね」
「ええ――」
そう返事をし、ミストレアは艦橋の隅に座る予言者、シアの方を見る。
シアは目を閉じたまま、眠っているかのように椅子に座っていた。
シアの予言の通りの場所で、無事にZリーヌンスは確保できた。あとは提督がオッパリオンの事情を話し、協力を取り付けるということになっていた。
ショウヘイと名乗ったらしい人物は今、一応の検査のために同行者のナナと一緒に医務室にいる。
◇ ◇ ◇
「検査の結果は異常ありません。撃たれたと思われる外傷も完全に塞がっていますね。体の組織ですが、我々オッパリオン人と九九%が類似しております。異星人とは思えませんね……」
翔平の体をスキャンしていた医務室の軍医はそんな結果と感想をアーリアに伝えていた。
「ありがとう。ともかく異常がなくてよかったわ」
「助けてくれてありがとうございます」
立っているアーリアに、ベッドに座る翔平は軽く頭を下げた。それを見ていた奈菜も翔平に習い、頭を下げる。
「そういえば、言葉が通じるようになったのはどういうことなのかしら?」
「軍医のわたしが言うことではないかも知れませんが、Zリーヌンスに提督の母乳が加わったことで、医学では解明できないことが起こったのかと思われます」
「そう。まさに奇跡の力ね」
アーリアは苦笑する。
「母乳……」
翔平は目の前にいるアーリアの母乳を飲んだことを思い出し、今さらに気恥ずかしくなってきてしまった。
子どもの頃は母乳で育ったのだろうが、飲んだ記憶などはない。アーリアの母乳を飲んだことも記憶にはないが、あの胸の乳首を咥えたのかと思うと、アーリアを直視できなかった。
そんなことは知らず、アーリアは続ける。
「翻訳用のナノマシンは適応するかしら? ショウヘイはともかく、ナナの方も話をする上で通訳を挟むのは煩わしいわ」
「ナノマシンは適応するはずです。遺伝子レベルでも極めて高い類似性があるので、大丈夫です。むしろ我々との違いを見つける方が難しいくらいで、強いて言えば母乳力の有無というくらいです」
「そう。ショウヘイ、ナナに説明をお願いできるかしら? わたしたちの言語を自動通訳してくれるナノマシンを注射で注入したいのだけど、いいかしら?」
「あ、はい。奈菜、この人たちの言葉を通訳するためのナノマシンを注射したいらしいけどいいか、って聞いてるよ」
「大丈夫なのかな?」
「オッパリオン人と俺たちはほとんど同じらしいよ。だから大丈夫だとは言ってる」
「う、うん。じゃあ……言葉が通じないのも不便だものね。お願いします」
「わかった。アーリアさん、奈菜もお願いします」
「わかったわ。じゃあお願い」
アーリアに促され、奈菜は腕を出す。すると軍医が奈菜の手の甲にスタンプを押すように注射をした。
「これが注射? 全然痛くないんだけど……」
「医療も進んでいるのかもしれない」
「効果はすぐに出るはず。ナナ、わたしの言葉がわかるかしら?」
「う、うそ!? 本当に日本語で聞こえる!?」
「ふふ、わたしにはナナの言葉がオッパリオン語で聞こえるわ。改めてよろしく」
「よろしくお願いします。なんか……感動。わたし、異星人と会話してる……!」
「はは、いい経験だな」
「すごーい、こんなことができるなんて……!」
地球の医療でもナノマシン治療は一般化されつつあるが、このような機能はなかった。
オッパリオン星は地球と比べるとかなり技術が進んでいるらしいと翔平は思った。
「ショウヘイ、ナナ、聞いて欲しい話があるの。本当はここに連れてくる前にしようと思ったのだけど、海賊の介入でそれどころではなくなってしまって。いや、海賊ではないわね、あれはたぶんマーラ帝国の軍ね」
「マーラ帝国?」
「そう。今、わたしたちの住むオッパリオン星に侵攻してきている、オッパリオン星系の近くにあるマーラ星の国家」
「じゃあ戦っていたのは、そこの国の軍隊なのか……」
「海賊に偽装しているようだけど、おそらくは特殊部隊かなにかだと思うの。でも、それは細かい話ね。ショウヘイたちと直接関係のある話ではないわ」
「でも、じゃあなんで俺がその海賊たちに襲われたんです?」
「それはあなたがZリーヌンスの持ち主だから」
「Zリーヌンス……何度か聞いたけど、それっていったい……」
「Zリーヌンスは――」
アーリアがなにかを言おうとした時、医務室の扉が開いた。
入って来たのは身長の高い女性。体つきがアーリアたちオッパリオン人と違い、少しだけごつく見えた。
「提督、それについてはわたしが話そう」
「ミィアルーン博士」
「機関室の方が忙しくなってね。直接修理できる人間以外は邪魔になりそうなんでこちらに来させてもらったよ。ふむ、そちらがZリーヌンス該当者か。共有された報告を見るとショウヘイと言うそうだな」
「ど、どうも、翔平です」
「わたしはミィアルーン。この艦の技術顧問をしている科学者の端くれだ。それでまぁ、見ての通りわたしはオッパリオン人ではない。提督から説明はあったかな、わたしはマーラ人でね」
「マーラ人……マーラ帝国の?」
「そう。オッパリオン星とは敵対している星の出身でね。まぁ詳しい事情は話すと長くなるので割愛しよう。でもキミたちの敵ではないよ。そこだけは理解してもらいたい」
「わかりました」
新たなる異星人の登場に緊張しているようだった奈菜も黙って頷いていた。
「Zリーヌンスとはなにか。言ってしまえば人間に宿った生体エネルギーのようなものだと言われている。言われている、というのはこの力の存在はオッパリオンに伝わる伝説であって、実際に観測されたことはないんだ」
「伝説?」
「ああ。オッパリオンの危機の時、その危機を救うという古い言い伝えがあってね。だがそれを裏付けるデータがいくつか王宮に残されていたんだ。わたしがオッパリオンに来た時、そのデータを見つけて作ったもののひとつがZリーヌンス波動探知機だった」
「それで俺を見つけたってことか……」
「なんだか信じられないような話……」
「だろう? わたしもにわかに信じられていないよ。でも探知機は動作しキミを見つけた。予言者の予言通りにね。まぁわたしは予言などというオカルトは信じないタチなのだが、今回の一件で信じた方が効率的だと考えを改めることになったよ」
「オッパリオンでは予言者という者がいるの。予言者は特殊な予知能力があって、近い未来や遠い未来、捜し物だったりを予知し、助言をくれるのよ。この艦にも乗っているわ」
ミィアルーンの言葉にアーリアが補足してくれた。
「星の危機を救う力……本当にそんな力が俺にあるのか……?」
「それは先ほどの効果を見て実証されたと思うよ。キミの秘めた力は我々に膨大なエネルギーを与えてくれた。おかげで想定以上の出力を誇る次元破断砲も使えたし、同じく想定外の距離と速度を出したニュートレースジャンプもすることができたわけだ」
「次元破断砲? ニュートレースジャンプ?」
「失礼。順を追って説明しよう。次元破断砲とはこの艦に搭載された兵器のひとつでね。通常の主砲の数十倍の威力を持つ設計になっていたのだけど従来の母乳機関では使用できなかったんだよ、エネルギー不足でね。それがキミがこの艦に来たことで母乳機関が通常では考えられないエネルギーを放出するようになり、使用が可能になったんだ」
「ちょっと待ってください。母乳機関ってなんですか?」
「母乳機関とはオッパリオン人が持つ母乳をエネルギーに変換する動力炉のことだよ。一般的なものは母乳転換炉と呼ばれていて、これは単純にオッパリオン人の母乳をエネルギーに転換する。だけど母乳機関は母乳そのものに加えてオッパリオン人が持つ生体エネルギーも吸収するんだ。つまりこの艦はオッパリオン人の母乳と、その生体エネルギーによって運用されているということになる」
「母乳の力……。母乳ってそんな力があるのか?」
翔平は思わず奈菜の方を見た。
「な、わたしを見ないでよ。し、知らないって、そんなこと。人間の母乳はただの母乳だもの。エネルギーになるなんて聞いたこともないわ」
「はは、ナナ女史の言う通りだ。普通、母乳は子どもを育てる栄養源でしかない。だがオッパリオン人の母乳には不思議な力やエネルギーが宿っていてね、どういうわけか。これが発見されたことで、母乳転換炉が開発された――そして、オッパリオン星がマーラ帝国に狙われることになった」
「帝国はそのエネルギーが欲しいわけか……」
「そういうことね。マーラ帝国は宇宙に覇権を拡大している。オッパリオンは戦略的価値のない星だったのだけど、母乳が過去にないエネルギー源になるとわかって、オッパリオン人を拉致するようになったの。そして母乳転換炉や機動兵器を作って、帝国は侵略を強めていったわ」
アーリアは真剣な顔で、翔平を見ながらそう言った。
「わたしは少なからず母乳転換炉と機動兵器の開発に携わっていてね。まさか帝国がここまで非人道的にオッパリオンに侵攻し、誘拐をするとは思っていなかった。わたしはオッパリオンに亡命して、母乳転換炉や機動兵器の技術を伝えたんだ」
「機動兵器って、わたしたちを乗せてここまで運んでくれたあの乗り物ね」
「そうよナナ。元々は帝国発祥のものなのだけどね」
「母乳転換炉に限らず、母乳機関もそうなのだが、この母乳力というものはどういうわけか人型のものに対して強いエネルギーを生む特製があるらしい。だから機動兵器は人の形をしている。艦船に搭載される母乳機関や母乳転換炉は大型だが、機動兵器の母乳転換炉や母乳機関は小型でも艦船並のエネルギーを出すことができるんだ」
「な、なんだかよくわからないけど、母乳のエネルギー、母乳力はすごいってことか」
「その通りだ。まぁわたしは自分の発明の罪滅ぼしの意味を込めてオッパリオン星に亡命したんだが……本音を言うともっと母乳力について知りたかっただけなのかも知れないな」
そう言い、ミィアルーンは自嘲するような笑みを見せた。
「博士、そんなことはない。博士がもたらしてくれた技術はオッパリオンを救うことになっているわ」
「ありがとう提督。そう言ってもらえるといくらか救われた気持ちになるよ。――それで、Zリーヌンスのことのなのだが」
「は、はい」
「ここからはわたしの仮説を多分に含む話になる。Zリーヌンスはよくわかっていなくてね。今のところ、観測された現象からZリーヌンスは母乳機関の出力を向上させる効果があるということだ。それも爆発的に。この艦にも補助的に母乳転換炉も積んでいるんだけどそちらの方の動作には変化見られなかったんだ。そこを考慮すると、どうやらZリーヌンスは母乳機関のみに作用するのかもしれないな。つまり、オッパリオン人の持つ生体エネルギーを強化するというわけだ」
「ど、どうしてそんな力が俺に?」
「それはわからない。伝説では遙かかなたの銀河の果てにその力が隠されているとしかなくてね。その力がどんなものなのか、どう使うべきなのかは記されていないんだ。だが、母乳機関はわたしがオッパリオン星に来て、古い文献に残っていた基礎設計を元に開発したものなのだが、この母乳機関はオッパリオン人から採集した母乳を使い、オッパリオン人の生体エネルギーを使っても三〇%程度しか出力が出ない設計になっていたんだ。これは本来、母乳機関とはZリーヌンスとの併用を考えた設計だったのかもしれないとわたしは考えた」
「母乳もすごいと思ったけど、俺にそんな力があったなんて……」
「ショウヘイ、実際にあなたのその力がわたしたちを窮地から救ってくれたわ。わたしも半信半疑だったけど、おかげでZリーヌンスを信じることができるわ」
「救ったって、俺はないもしてないですけどね」
「いや、キミの存在そのものが助けになっていると言ってもいい。――が、Zリーヌンスそのものもエネルギー源として動作するはずだ。その証拠としてこの艦には――」
ミィアルーンが言葉を紡ごうとした時、医務室にある電話のようなものが鳴った。
軍医がすぐに受話器を取る。
「はい、こちら医務室。提督ですか? はい、いらっしゃいます。はい、わかりました、伝えます。――提督、艦橋からです。すぐに艦橋に戻ってくださいとのことです。レーダーが艦影を捉えたとのことです」
「わかったわ。あの海賊たちが追ってきたにしては早すぎるわね。そう考えると別部隊かしら」
「提督、現状でこの艦の母乳機関は修理中で出力も二〇%程度出るか出ないかだ。技術顧問として交戦は避けて欲しいところだが」
「それは相手次第よ。隠れる場所もないし。相手が小規模なことを祈ってて」
「祈りが通じるとは思えないな」
「ショウヘイ、ナナも一緒に艦橋へ。またあなたの力が必要になるかもしれない」
「俺に手伝えることなら。相手の帝国はオッパリオン人を拉致したり、侵攻を拡大してるんだよな……。そんな連中がこれ以上力をつけたら、地球まで侵略にくるかもしれない」
「可能性はあるな。マーラ帝国はとにかく資源を他の惑星から奪っている。キミたちの母星にもなにか資源があるとわかったら容赦なく侵略するだろうな」
「そ、それは困るわ……。平和的な接触ならいいけど」
「マーラ帝国は交渉などせんよ。欲しいものがあれば武力で奪う。それが今の帝国の主義さ」
「そんな……」
奈菜が怯えたような表情になる。
そんな奈菜を見て、アーリアはマントを広げた。
「さぁショウヘイ、ナナ、艦橋へ向かいましょう。博士も一緒に」
「そうさせてもらうよ。Zリーヌンスの発現をこの目で見られるかもしれないからね」
ミィアルーンが翔平に向ける視線は興味津々というものだった。
「ま、また戦闘になるのかな?」
奈菜が不安げに、翔平に聞いた。
「たぶん。機関部が修理中みたいだけど……」
「それってまずいんじゃないの?」
「大丈夫よ」
奈菜の言葉に応えたのはアーリアだった。
「なんとか切り抜けて見せる」
アーリアの言葉は力強い。
「その言葉を信じよう奈菜。俺にもなにかできることがあれば手伝います。ともかく、そんな危険な帝国を放置しておくのはダメだ」
「ありがとうショウヘイ。もっと詳しくオッパリオンの状況について話たかったけど、この場を抜けてからにしましょう」
「わかりました。とにかく艦橋へ行きましょう」
「ええ」
アーリアは翔平に頷くとマントを翻して医務室を出て行った。
翔平、奈菜、ミィアルーンがそのあとに続く。
更新日時の変更につきまして。
毎日更新分が最新話に追いつきましたので、次回更新から他サイト同様に、「水曜日と土曜日の18~19時頃」を予定とさせて頂きます。
次回更新は「12/30水曜日」予定となります。
引き続き「宇宙艦隊オッパリオン」をよろしくお願い致します!!
いつも「宇宙艦隊オッパリオン」を応援頂き誠にありがとうございます。
小説家になろうの機能の評価とレビューの方も、お時間御座いましたら何卒宜しくお願い致します。
読者の皆様の声が、レビューが、評価が、「宇宙艦隊オッパリオン」の明日をつくる!!
面白い作品に仕上げていく為にも、些細な事でも気楽にレビュー頂けますと幸いです。
スケキヨとYOM、引き続き精進して参る所存です!!




