宇宙艦隊オッパリオン008話「輪っか付きの攻撃力」
スタティアに搭載されていた「次元破断砲」を使用したアーリア達。
その力を見せつけつつ、翔平と奈菜を含むオッパリオン人一行は、超光速航法ニュートレースジャンプで一路惑星オッパリオンを目指す。
その一方で、次元破断砲の威力を目の当たりにした海賊達は・・・。
【〇〇八 輪っか付きの攻撃力】
スタティアを追う海賊艦は木星側にスタティアを追い込む形で確実にその包囲を強めていた。
Zリーヌンスの奪取こそ叶わなかったが、スタティアに持ち帰られたと思われる今、あの艦に乗り込むことを海賊のキャプテン、アルガノスは考えていた。
「輪っか付きとの相対距離さらに縮まる」
「先行していた突入部隊より報告。突入部隊は民間シャトルより離脱」
「キャプテン、あのシャトルはどうします?」
「放っておけ。あとで本国に異星人文明を発見したと報告しておけばいい。今はあの輪っか付きだ」
「了解です」
海賊たちの間ではスタティアはその容貌から輪っか付きの名前で呼ばれていた。
「やつめ、なんらかの不具合が出ているな。速度も落ちているし反撃の砲も撃てないとはな」
「攻撃部隊も間もなくフィールド中和領域に取り付くでしょう」
「ああ。そうしたら機関部に数発食らわせる。そうしたら乗り込むぞ」
「海賊らしいですな」
「お宝を持ち帰らんといかんからな」
突入部隊からの報告でZリーヌンス反応の根本は人間だということを知った。しかも該当の場所には二名いたらしく、両名の確保が望まれたが追撃の銃撃戦でひとりを負傷させてしまったという。これは突入部隊の失態だった。
だがエネルギー源とあれば生死は問わないのかもしれないとアルガノスは思っていた。
そもそもZリーヌンスがどういったエネルギーだということが知らされていないのだ。
「キャプテン、輪っか付き内部に高エネルギー反応を確認」
「どういうことだ?」
「わかりません。なんらかの機関が動作したのかも知れません。速力も上昇」
「不具合が解消されたってわけか。反撃が来るぞ。輪っか付き左舷側から包囲を詰める。ドルツとアルメナを先行させろ」
「了解。こちらガティアスよりドルツ、アルメナへ、先行して輪っか付きの包囲を詰めよ」
『こちらドルツ艦橋、了解した』
『アルメナ艦橋、了解』
数では圧倒的にこちらが優位とは言え、相手の機動兵器部隊がかなり優秀なのか、未だにフィールド中和領域に取り付けないでいるのがもどかしかった。
数発の主砲を当ててはいるが、フィールドに阻まれてしまっている。
結果的に、アルガノスは現状が苦戦であると認めざるを得なかった。
できれば輪っか付きに不具合が生じているうちにことを終わらせたがったが、そう簡単には行かないらしい。
「輪っか付き内部の高エネルギー反応さらに増大。Zリーヌンス波動に感あり」
「使っているのか、その力を」
思わずそんな言葉がアルガノスの口から漏れた。
「かもしれません」
信じがたいが、となりにいた副艦長も同意を示す。
「得体の知れない力だ。それになにができるかもわからん。続けて包囲を詰めるぞ。が、各艦警戒は続けろ」
慎重、かつ大胆にアルガノスは艦隊を指揮していく。海賊艦たちは統率の取れた行動でスタティアとの距離を確実に詰めていった。この間を抜けるのはいくら高速の艦と言えど至難の技と言える。
「攻撃部隊はまだ取り付けんのか?」
「敵機動兵器と交戦中の模様。遠距離からの狙撃に阻まれ、思うように近づけないようです」
「数で圧せ。飽和攻撃を仕掛ければ圧しきれる」
「伝えます」
アルガノスは自身に焦りがあるのを感じた。長く戦場に身を置いてきた者の勘が、なにかしらを伝えている。
こういう時は早々と決着をつけるか、撤退するに限るのだが、撤退するわけにはいかず、決着をつけるにもまだ少しの時間を要する。
「輪っか付き転身、艦首回頭。ドルツへと向き合う模様」
「突破する気か。包囲されているのがわからんのか。」
「メルクコアの考えることはわかりませんな」
「ドルツは進路を維持しろ。そのまま接舷させるつもりで突っ込め」
「了解。ガティアスよりドルツへ――」
「輪っか付きに動きあり。前方の兵装らしきものが展開。高エネルギー反応、依然続く」
「なにかする気かもしれませんな。撃ってもきませんし」
「データがないのはこれだから厄介だ。だがこちらにもフィールドはある。距離は詰めたがフィールドを抜く威力はないはずだ」
理論上も経験上もこちらが優位であることに変わりはない。そうわかってはいるのだが、謎の焦燥感が気にはなっていた。
輪っか付きの連中はどこか自分たちが優位にいるようなゆとりすら感じられる。
この状況となればもっと切迫していろいろな手を撃ってくると思うのだが、その気配がまるでない。
「輪っか付き内部のエネルギー反応、こ、これは異常な数値です! 通常の母乳転換炉なら爆発している数値です!」
「自爆でもする気ですかね?」
「馬鹿な。それはありえん。なにか奥の手でも隠して――」
顎に手をおいて考えた時、ふと嫌な予感が脳によぎった。連中のゆとりはなにか隠していることの証拠だと。
「ドルツを回避させろ。正面から外せ」
「りょ、了解! ガティアスよりドルツへ。急速回避せよ」
レーダーで見るとドルツは突然の回避命令に戸惑いを感じたらしく、反応が遅れていた。
「輪っか付きの内部エネルギーさらに加速! ほ、本艦の出力の二〇倍は出ています!」
「ドルツに回避急がせろ!」
アルガノスがそう叫んだ直後だった。
視界が真っ白になるほどの光量が艦橋の窓から降りかかった。
「なにが起こった!?」
「わ、わかりません! 光量が強くて光学が……エネルギー反応は依然続いています」
「なっ、そんな馬鹿な!」
「どうした!?」
「ドルツ、信号消失。隣接していたアルメナも信号消失!」
「通信を入れろ! なにが起こった!?」
「こちらガティアスよりドルツ、アルメナ、応答せよ!」
連絡を入れるが返事の変わりにやってきたのは艦を揺さぶる衝撃波だった。
「なっ――」
「輪っか付きのエネルギーが収束していきます。なんらかの艦砲を行った模様」
「まさか……こんな手を隠していたのか!」
アルガノスは目の前のコンソールに拳を打ち付けた。
「一撃で艦二隻を消失させるなど……どんな兵器だ!?」
「ドルツ、アルメナ、応答ありません。機動兵器攻撃部隊も信号消失」
「輪っか付き健在。機動兵器を収容、進路そのまま、直進してきます」
「キャプテン!」
「進路を輪っか付きに向けろ! あんな兵器、連射はできないはずだ! 進路を塞げ!」
「了解! 艦首回頭! 輪っか付きへ向かう!」
「輪っか付き加速!」
「ぶつけるつもりでいけ!」
「了解!」
操舵士は強引とも言える方向転換で艦首をスタティアの進路へと向ける。
このままではぶつかるという進路に、アルガノスは拳を握った。ここで逃したらまた面倒なことになる。Zリーヌンスに関することはこの戦闘を最後にしたいという強い思いがあった。
「輪っか付きさらに加速! 内部に高エネルギー反応!」
「まさかこの距離でジャンプを!?」
副艦長が驚きの声を上げるが、スタティアの行動はジャンプ前の加速のように見えている。周囲に艦がある中のジャンプは衝突の危険もあるため、通常は行うものではないという常識があった。
しかも今は進行上にこの艦が割って入っているという状況だ。普通の艦長や操艦を知る者ならジャンプなどはするはずもない。
「輪っか付き直進してきます!」
「ぶつける気か!?」
「回避はするな! こっちもぶつけてやれ!」
「キャプテン無理です!」
「輪っか付きをなんとしてもここで止めるんだ!」
「輪っか付き接近! フィールド接触――なっ、接触を回避!」
「なんてことをしやがる!」
スタティアはガティアスにぶつかる直前で舵を切り、衝突を回避した。
艦としては脅威的な起動性であり、スタティアはその性能をアルガノスに見せつけることになった。
「輪っか付き、本艦を抜けました!」
「追え! 急速回頭!」
「急速回頭!」
追うガティアスも急速回頭で対応するが、スタティアはガティアスを追い抜くとさらに加速に入り、そのままジャンプ――超光速航法に入って行った。
ガティアスが回頭を終えると、そこにはジャンプで生じる残光が散るだけとなっていた。
「輪っか付き、ジャンプに入った模様」
「……逃げられたか。進路を記録しておけ。それと艦隊の被害状況を上げろ」
「ドルツとアルメナが消失。艦を発した機動兵器九機もすべて消失です」
「本艦の被害状況は軽微。母乳転換炉残存エネルギーが五割を切りました。残存エネルギーは他の艦も同様です」
「む? 残存の機動兵器部隊があるようです。ドルツ所属のディジル隊が生存しています。母艦を沈められたため収容を要請しています」
「悪運の強いやつらだな。ディジル隊は本艦に収容しろ。生き残った貴重な意見も聞けるだろうからな」
「了解。ディジル隊に伝えます」
「あぁ」
アルガノスは深く息を吐いた。ため息のようにも見える。
「すぐに追いますか?」
「そうしたいところだがあの速力でジャンプしたんだ、この艦のジャンプ速度では追いつけんだろう。それにかなりの被害を被った。一度体制を整える必要があるな」
「本国に連絡を入れます。補充要員を送ってくれますかね」
「さぁな。しかしZリーヌンスとやらの存在はこれで証明されたな。メルクコアがそれを使ったこともな」
「あの光はやはりZリーヌンスの?」
「この艦の母乳転換炉の二〇倍だぞ。そう考えなければおかしい。これも本国に報告だな。なんてものを追わせやがった……」
「宇宙を支配できる力というのはただの伝説ではなかったということですね」
「そう思いたくなる。他に生存者がいないかどうか捜索する。機動兵器を該当宙域へ出せ」
「了解」
「通信士、本国に超光速通信で電文を送れ。我、目標奪取に失敗。艦を取り逃がす。補給を願う、とな」
「了解しました」
失敗の報告は心苦しかったが、これが現実だった。艦二隻を失った責任も自分にあると、アルガノスが思っていた。
「本国より返信。貴艦は引き続き目標奪取の任に当たれ、補給は送れず、とのこと」
「くそっ、まったく無理を言ってくれる。こういう連絡だけは早いな」
「現状の戦力でやるしかありませんな」
「あんなものを見せられた後で気が滅入るがそんな暇もないということか。――生存者の捜索を終えたら輪っか付きを追うぞ。本国には一応輪っか付きの進路を送っておけ。あの艦のジャンプ能力なら相当遠くへ行くはずだ」
オッパリオン星系から水平の銀河へ跳んだ時はかなりの差を付けられたが、今度のジャンプではさらに差が開くだろうとアルガノスは踏んだ。
補給が受けられないことに不満はあったが、とにかく自分たちは与えられた任務にあたらなければならない。
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スケキヨとYOM、引き続き精進して参る所存です!!




