【第2章】宇宙艦隊オッパリオン063話「艦影接近」
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宇宙艦隊オッパリオン本日も開幕!!
惑星ベールヌに滞在する翔平とフレイア。
フレイアは搾乳に向かおうとするも、クァードからの通信が入る。
通信の内容は一体何なのか?
嵐の前の静けさは終わりを告げる!?
【〇六三 艦影接近】
クァードを出たリアリィ機とシュレン機はクァードのセンサー圏外にまで到達していた。
クァードが感知できない領域の広域偵察に出ていたのだった。
リアリィは機体のセンサーを最大出力にして広域の様子を探っている。
「相変わらず反応はなしか。今日も手ぶらの帰還になりそうね」
『そうだといいのだけどね』
リアリィの言葉に通信を介してシュレンの言葉が来る。
二機は広めの間隔を取っており、完全な索敵状態に入っている。
「今日はいつにも増して静かだと思わない?」
『あら、リアリィも? わたしもそう思っていたところ』
「こういう日はなにかあるかも」
『間隔をもう少し広めにとってみようかしら?』
「そうしよう」
リアリィの直感を信じ、シュレン機はリアリィ機との間隔をさらに開いた。
シェアトスのセンサーは艦載のものと比較すれば範囲はかなり劣るものの、機動兵器にはその範囲を補う機動力がある。専用の偵察機ならばさらに広範囲かつ高精度な偵察が行えるのだが、汎用機のシェアトスにも十分な索敵能力が搭載されている。
そのセンサーを表示させているモニターの右側は依然として静かな反応を示している。
ベールヌ周辺には航路がないため、行き交う艦船がないためにものすごく静かだった。
『本当に誰も通らない宙域なのね』
「そうだね。フレイアは無人の星でショウヘイとふたり、か」
『めずらしいわね、そういうこと気にするなんて。どっちが気になってるのかしら?』
「めずらしいかな? 気になってるのはナナだよ」
奈菜をベールヌに送り届けようと降下申請をしてはみたものの、それは見事に却下されていた。
『ナナさんが? たしかにひとり残ってて寂しそうではあるけど……』
「ショウヘイのことをずっと気にしててさ。なかなか行動にも踏ん切りが付かないみたいじゃない? ああいうの見てるとなんとかしたくなってくるんだよ」
『ふふふ、あなたらしいわね』
「そういう反応? シュレンはいつも余裕があるなぁ」
『あら? そうでもないわ。これでもフレイアのことは気にしてるつもりよ? ショウヘイさんとなにかあるんじゃないか、って』
「なにかあったら困るよ、ナナが。フレイアの気があるのはいいとして、一応順番はあるでしょ」
『それもそうね、ふふふ』
シュレンはリアリィの意見に納得の様子ではあったが、楽しそうに微笑んでいるのが通信だけでもわかった。
リアリィはなんだか自分がからかわれているような気分になってしまう。
『なら、お節介してあげなさいよ』
「お節介って言わないでよ。……って、まぁそんなところか。気になっちゃってるわけだし」
『フレイアにしてもパイロットだもの。わたしたちパイロットはいついなくなってしまうかもわからない。だから生きていられる間は後悔しないようにしないとだものね』
「それはわかってる」
シュレンが言ったのはパイロットなら――戦いに携わる者なら誰もが抱いている覚悟の話だった。
日々後悔のないように――リアリィもそう思っている。だからこそ、奈菜のことも気にかかるし、フレイアのことも気になっているのだという自覚もある。
「あーあ、どうして他人ばっか気になるんだろ」
『リアリィが優しいからよ。人を気遣える人ってことね』
「綺麗にまとめないで」
『ふふふ、いいじゃない。綺麗事でまとまるならまとめましょ。まとまらないこともあるのだから』
「シュレンは大人すぎる」
『お姉さんって言って欲しいわね』
「わかったよ、シュレン姉さん」
そんな軽口を飛ばし合っているうちに、二機はかなりの広範囲の偵察を行っていた。
「そろそろ予定範囲は終わるわね」
『なにもなかったわね』
「帰投した方が……うん?」
『あら?』
機体を旋回させようかと思った瞬間、センサー圏内ぎりぎりに微妙な反応を感知した。
「シュレン、重力振反応見てる?」
『こちらでも感知したわ。遠いわね。かなり微妙な反応だけど……誤差の範囲とも言えなくもないわね。でも――』
「わかってる。用心しよう。――こちらリアリィ機。クァード応答願う」
『こちらクァード。どうかしましたか?』
クァードの通信士が通信に速やかに応じた。反応の早さに好感が持てた。
「偵察範囲外で軽微な重力振反応を見つけたの。そこまで偵察範囲を広げる許可をもらいたいのだけどいい?」
『確認します。――こちらクァード、範囲拡大の許可をします。慎重にお願いしますと、艦長からのお言葉です』
「了解。リアリィ機向かいます」
『同じくシュレン機、続きます』
『了解しました』
クァードへの許可を取り付けた二機は反応が見受けられた宙域へ向かい、機動兵器を進める。
二機は距離を詰め、センサー範囲を重複させて精度を高めた。
しばらく進むと、今度は少し大きめの重力振を感知する。
「この反応は……」
『リアリィ、止まって』
シュレンの言葉に、リアリィは機体を静止させる。シュレン機がすぐとなりに来た。
『この重力振はアクティブよ。なにかが移動してるわ』
「こんな宙域に来るなんて、だれだろう?」
『もう、知ってるくせに』
リアリィはとぼけて見せたが、心当たりは海賊艦しかなかった。
センサーの重力振は徐々に大きくなり、巨大質量が移動していることを伝える。ここまではっきりと感知できると、向かってきている方向や位置までも特定できるようになる。
「ベールヌに向かって来てる。こっちに気付いている可能性は……なさそうだけど、来るね」
『ええ、ついにやってきたようね』
「ジャンプアウトするよ」
センサー圏内ぎりぎりの遠方において、何者かがジャンプアウトするのを感知した。
「重力振パターン照合開始……わかるかな、この距離で……できることなら確定したい……」
振動パターンから既知の艦船ならば判断することができる。あの海賊艦とは何度となく交戦しているので振動パターンははっきりと確認できているので、照合の精度は高い。
照合中のメッセージが解除され、軽いアラームと同時に敵艦の表示が現れた。
「出たっ、海賊艦だ!」
『シュレン機よりクァード。海賊艦のジャンプアウトを確認。数は一。以降の通信封鎖を要請。こちらこれより帰投します』
シュレンが速やかに敵艦発見を知らせる。位置が特定されるのを恐れてクァードには通信封鎖を打診したため、クァードからの返信はなかった。その無言がクァードが状況を理解したという証拠になる。
『戻りましょうリアリィ。戦いになるわ』
「そうだね。フレイアとショウヘイのふたりの時間も終わりだね」
『ちょっと安心した?』
「ナナの立場になればね。でも戦闘になるから安心はできないけどさ」
『そうね。早く戻って準備しましょう』
「ああ、そうしよう」
敵艦の索敵がはじまる前にリアリィとシュレンは姿をくらませることにする。
◇ ◇ ◇
「リアリィ機、シュレン機、信号を消しました。帰投ルートに入ったと思われます」
偵察の二機がもたらした情報は速やかに艦橋で共有されていた。
「わかりました。全艦戦闘準備、フレイアにも緊急通信を入れてください」
「了解しました」
艦橋は一気に緊張感が張り出した。
「ついに来ましたね」
「ええ、遅いくらいでしたが来ました。しかしまだセンサー圏外ではあるので迎撃の準備がしっかりできるのはよかったです」
「密な偵察をしていた甲斐がありました」
不意打ちを警戒していたのが功を奏し、先に敵艦影を発見できたのは偵察部隊の手柄とも言えた。
しかし――。
「か、艦長! 遠方に重力振反応検知! 報告にあった方角から――これは、ニュートレースジャンプです!」
「なんですって?」
「この宙域でジャンプしようと言うのか?」
アリメルもスオリーも報告に疑問を呈した。海賊艦は小惑星の多いこの宙域で短距離ジャンプに入るとのことだった。
「間違いありません! ベールヌに接近を試みるつもりです!」
「降りるつもりでしょうか?」
「フレイアたちの回収を急ぎましょう。思いのほか時間がなくなりましたね。リアリィ機たちの収容は?」
「予定では一〇分少々かかります」
「敵艦のベールヌ域到達は?」
「推定で二〇分後と思われます」
「わかりました。リアリィたちを収容後にフレイアたちを迎えにベールヌへ降下します」
「敵に上をとられますが?」
「敵の狙いはショウヘイさんでしょう。だとしたら孤立させておく方が危険です。降下後に収容、そして急上昇をかけて宇宙へ戻ります。戦闘は小惑星群を背に行います」
アリメルのはっきりした決断に、スオリーは思わず少し驚いてしまった。
「わ、わかりました。フレイアの緊急通信はまだか?」
「通信完了しました。急ぎ帰投準備に入るとのことです」
「わかりました。なんとか先手を打ってここで仕留めたいものですが――この宙域に来たということはあちらも決死の覚悟でしょう。用心しなければなりませんね」
この宙域ではジャンプで離脱するということがほぼ不可能であるため、決戦になる。海賊もなりふり構わずに来るだろうとアリメルは想定していた。
海賊艦のニュートレースジャンプを感知したクァード。
遂に始まる戦闘の予感・・・。
修行を行った翔平とフレイアの成果は如何に!?
クァード組VSグアデリア(海賊)との熾烈な戦いが幕を開ける!!
次回64話もお楽しみに。
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