【第2章】宇宙艦隊オッパリオン055話「すべてを知る存在」
本日もやって参りました、宇宙艦隊オッパリオン更新です。
今回は惑星ベルーヌでのお話。
翔平とフレイアがやってきた建物の中には一体何が待つのか!?
そして、Zリーヌンスと母乳力の関係は解明されるのか?
Zリーヌンスの謎を巡る物語に遂に動きが起こる。
宇宙艦隊オッパリオン第55話出航です。
【〇五五 すべてを知る存在】
「これは……」
小屋の中に入ったフレイアは険しい表情で銃を構えていたが、驚きの表情に変わった。
翔平が銃の向けられた先を見ると、そこには人型のもの――二メートルくらいのロボットのようなものがあった。
「これは……ロボット?」
「驚かさないで欲しいわね。住民が使っていたものでしょ。動いてないみたい」
フレイアはそう言いながら銃を下ろした。
ロボットのようなものはこちらに背を向けているような格好になっていた。
「ロボットがあるってことは……やっぱり結構進んだ文明があったんだな」
翔平がそう言った瞬間、ロボットががたりと全身を震わせた。
「動くの!?」
フレイアは翔平の前に立ち、銃を向ける。
ロボットは小刻みに震えながらピピピっと電子音を鳴らした。
「――Zリーヌンス反応を確認。スリープモード解除」
ロボットはそんな言葉を発しながらこちらへと振り向く。
「ショウヘイ下がって。危険かも」
「そ、そうとは思えないけど」
「Zリーヌンスって言ってた!」
ロボットがこちらに無機質な顔を向ける。目に当たる部分のセンサーが動き、フレイアと翔平を確認しているようだった。
「ご安心ください。私は戦闘用ではありません。あなた方に危害を加えるようなことはありません」
「言葉は通じるの?」
「はい、あなた方の言語は理解できます」
中性的な声で、ロボットは静かに声を発していた。
フレイアは再び銃を下ろす。
「流暢な言葉ね。あなたのご主人はどこ?」
「ここには私しかいません。――Zリーンヌンスを持つ者……母乳の力を持つ者たち……お待ちしておりました」
「あたしたちを待ってたって?」
「はい。この体を手に入れて何百年か……その以前より、この世にZリーヌンスが発現した日より――私はあなた方と会うのを待っていました」
「……どういうこと? あなた、名前はあるの?」
「名前はありません。私はZリーヌンスが発現した時に生まれたエネルギー知性体……私の使命はZリーヌンスを持つ者に力の使い方を伝えること……」
「力の……使い方?」
翔平がそう問うと、ロボットは目を光らせて頷いた。
「そうです。私はそれを伝えるために生まれ、今日まで待ってきました」
「ちょ、ちょっと待って。じゃあこの星にはZリーヌンスがあったってこと?」
「いいえ。この星にZリーヌンスはありませんでした。Zリーヌンスは発現して役目を終え、この星系より遠く離れた水平の銀河へと封印されました。そしてあなたがやってきたのです」
「……話が見えないじゃない。だいたいこの星の人たちはどこに行ったの? あなたは誰がなんのために作ったの? どうしてZリーヌンスを知ってるの?」
「フレイア、そんなに質問ばかりしても答えきれないって。順を追って話してもらおう。なぁ、キミはどうしてここにひとりでいたんだ?」
「わかりました。順を追って話ます。まずはどうしてここにひとりでいたのかということですが、この星の主な住民はオッパリオン周期で言うと五五〇年ほど前に星を捨て、別の星へと移住していきました」
ロボットは落ち着いた声でそんな説明をする。
この星は捨てられた星ということだった。
「環境が悪化して星を捨てたってところね」
「その通りです。この星の資源を採集し、内乱を繰り返し、外の星とも争いを繰り返し、星は疲弊し、産業によって環境は破壊され、居住が困難になりました。この星には主にふたつの種族がいたのですが、ひとつの種族は高い科学力を持ち、もう一方の種族を支配していたのです。支配する人々は支配していた人々を残し、この星を去りました。残された人々は破壊されたこの星で長く生きることはできず、消えていきました」
「……悲しい過去ね。宇宙ではたまに聞く話だけど」
「そうなのか……。残された人たちは無念だったろうな……」
「その時、私はまだこの星にはいませんでした。ですが宇宙で起こるほとんどのことを感知することはできました。Zリーヌンスから発生した私には、その能力があったのです」
「そ、それはすごい……」
翔平は自分が核心に近づいているような気がした。どうして自分にZリーヌンスがあるのか、ついにわかる時がきたのだろうと予感する。
「この星を脱したものたちはマーラ族という者たちでした」
「え!?」
「マ、マーラだって!?」
翔平とフレイアは思いもよらなかった言葉を聞き同時に驚いた。
「そうです。マーラ族はこの星を捨て、新たな星へと移り住んで行きました。その際にこの星の資源のほぼすべてを持ち出し、強力な科学力で兵器を作り、銀河を支配する大帝国を作ったのです――私が感知したのはそこまでで、私は残されたこの星へと辿り着き、この体を得るために宇宙を感知する能力を破棄しました。エネルギー体ではあなたたちに言葉を伝えることができないのです」
「そうなんだ。それはわかったよ。じゃあキミはこの星に残った人たちに体を作ってもらったんだね」
「いいえ。私がこの星に着いた時はすでにこの星は無人になっていました。私は廃棄されたこの体を見つけ、そこに憑依し、長い眠りへとつきました」
「そうだったのね……。残った人たちの情報はないの?」
「残った人たちは惑星の名を取り、ベールヌ族と名乗っていました。マーラ族に比べて原始的な種族でしたので、機械化された星に馴染むことはできませんでした。マーラ族に捕らえられ、奴隷として使われていたようです」
「マーラ人はその頃から似たような気質だったわけね。今でもオッパリオン人を拉致してるのも、その頃からつづいている感じね」
フレイアはどこか悔しそうに言葉を漏らした。
「今でも植民星からいろいろな資源を取り上げてるし」
「今のマーラ族たちがどうかは知りませんが、私はZリーヌンスが再びこの世に発現した時を感知するという能力だけは残していました。それができるように、ここに残された機械を使い、体を作り直しました」
見ると小屋の中には工作機械のようなものがあった。大規模な工場ではないものの、必要最低限が詰め込まれた工房のような場所だと翔平は感じた。
「私は他の知性体と接触するわけにはいきませんでした。Zリーヌンス由来であるということを知られてはいけないという使命がありました」
「それはどうして?」
フレイアが問う。
「Zリーヌンスを求める人が現れてしまうのを防ぐためです。Zリーヌンスは安易に求めてはいけないのです。Zリーヌンスは万能の力でもあると同時に、滅びを招く可能性もあります」
「滅びか……」
翔平の脳裏には以前の戦いで見た、次元破断砲の映像が浮かんだ。あの圧倒的な破壊力はZリーヌンスを使ったものであり、たしかに使い方を間違えれば滅びを招く可能性があると思えた。
「しかしZリーヌンスが発現したということは、その力が宇宙から求められているということでもあります。なのであなた方はこの力を正しく使う必要があります。そしてそのために、私もこうしてここであなた方を待っていたのです」
ロボットは翔平へと歩み寄り、傍まで来ると体を屈めて膝をついた。
「Zリーヌンス、それは万物創造の力――今こそその力のなんたるかと、使い方をお教えしましょう。遠き宇宙より来たりし、力の持ち主よ」
ロボットにかしずかれた翔平は戸惑いこそしたものの、ここに導かれてきた理由を痛感することになった。
二人が出会ったロボットが教えるZリーヌンスの力とは!!
彼(彼女)との出会いが新たなる扉を開く。
次回もご期待ください!!




