【第2章】宇宙艦隊オッパリオン054話「惑星探索」
宇宙艦隊オッパリオン本日も出航です。
YOMです。
本日もやって参りました、宇宙艦隊オッパリオン第54話目!!
惑星ベールヌ宙域へと到達したクァード部隊は、翔平とフレイアに惑星探索の任務を与える。
荒廃した惑星で出会うものは一体?
惑星ベールヌ編開幕!!
【〇五四 惑星探索】
フレイアのシェアトスと翔平のゼータリオンにはそれぞれ一週間分程度の携帯食糧などが積み込まれていた。通常なら交代で行うのが普通の惑星探索だが、今回はフレイアと翔平のふたりで行うことになっている。
「翔平、気を付けてね」
「ああ、危険を感じたらすぐ戻るよ。うまく行けばなにか明らかになって戻れるかもしれないし。だから、ここで待っててくれ」
コクピットハッチから覗き込む奈菜にそう言うと、翔平は微笑んで見せた。
「うん、待ってるから。じゃ――」
「行ってくる」
奈菜がハッチから離れるのを確認し、翔平はハッチを閉めた。
『フレイア機、先に出るわ。ゼータリオンは後に続いて』
「了解。お先にどうぞ」
格納庫ではカタパルトが開かれ、そこにフレイア機が進んで行くのがモニターを通して見える。
フレイア機の背中を見ながら、翔平はゼータリオンのライフルを掴んだ。
「持って行けって言われたし。使わないに越したことはないけどね」
『あたしもそう願いたいものね』
ひとりごとのつもりだったが、フレイアには聞こえていたようだった。
そして足下を見るとリアリィたちパイロットが奈菜と並び、見送りに来ていた。
『フレイア機、出るよ』
フレイアの声と同時、フレイア機が射出されていく。
翔平は空いたカタパルトにゼータリオンを向かわせた。
戦いに行くのとはまた違った緊張感がコクピットに満たされているようで、操縦桿を持つ手にも自然と力が入る。
ゼータリオンがカタパルトに固定される。
『ゼータリオン固定確認しました。射出タイミングはそちらでどうぞ』
「了解しました。翔平、ゼータリオンいきます」
その声と同時に発進をイメージするとカタパルトが動作し、機体が急加速する。
そして真っ黒の空間へと送り出される。
宇宙空間に出てすぐに目に入ったのが、オレンジ色っぽく見えるベールヌにかかる輪、小惑星群だった。
クァードはベールヌの衛星軌道まで接近しており、そこでの降下となっていた。
翔平は機体を制御し、輪を足下に置き、モニター中央にフレイア機を捉えた。
『進入ルートは事前に打ち合わせた通りで行くわ。この輪っかを避けて入るルートね。大きい大陸の海側に出るみたいだから、そこから大陸に接近しましょ』
「了解。通信に返信はなかったんだろう?」
『そう聞いてるわ。リクサーヌたちの偵察で大陸部には建造物らしきものが見えたって言ってたから人は住んでるのかもね。通信に応じないところを見ると内向的な星なのかもしれない』
「そんなところに降りられるのかな?」
『なんとかなるでしょ。マシ長の予言なら、無駄足ってことにはならないでしょうしね。とにかくついてきて。もうすぐ重力に捕まるよ。ミルキィーフィールドで摩擦を軽減して。――って、オートでやってくれるけどね』
「わかった」
するとほどなくしてモニターに重力警告が出て、機体が引っ張られはじめた。重力は強力で、機動兵器の推進力でも逃れることはできない。
フレイア機もゼータリオンも大気圏突入体勢に入った。
『摩擦層を抜けたら海の上だと思うけど、そんなに高度は下げないで行きましょ。誰かにあたしたちを発見してもらうわ』
「友好的だといいんだけどね」
『この宇宙、そんなに悪い奴らばかりでもないって』
フレイアは楽観的にも思えたら、今はその言葉が優しさに感じられた。
大気圏突入とは言え衝撃はなく、ふたりの機体はベールヌの重力圏へと落ちて行った。
そして摩擦層を抜けると、厚そうな雲がふたりを出迎える。
「雲?」
『突破するわ。ついてきて』
「了解」
機体が制御可能になるとフレイアは軽く加速をかけ、雲の中へ飛び込んで行った。
翔平もその後を追う。
雲の中は視界が悪かったが、フレイア機の存在を指し示すマーカーは表示され続けていた。
そのマーカーの後を追い、ゼータリオンは雲を抜けた。
「これがベールヌ……」
灰褐色の曇天の下、黒っぽい海が広がっていた。
地球やオッパリオンで見た惑星の景色とは違い、どこか無機質な印象を受ける。
『通信を入れてみるわね。――こちらオッパリオン所属機、ベールヌ管制、応答願いします』
「…………」
海の上を飛びながら返信を待ってみるも、反応はない。
『ここも反応はないみたいね』
「どうする?」
『建造物があったっていう大陸の方へ向かうわ。地図データがないから高度は高めに取って、目視で都市を見つけないとね』
「わかった。俺も探してみる」
『頼むわ。でもあたしからあまり離れないようにね。なにがあるかわからないんだから』
「そこは気を付ける」
フレイア機と少し間隔を空け、ゼータリオンに高度を取らせる。
眼下には黒っぽい不気味な海が広がっていたが、進むにつれて視界の奥に陸地らしい影が見えてきた。
『フレイア機よりクァード。ベールヌに降下完了。これより大陸上空へ入るわ』
『アリメルです。状況了解しました。気を付けて進んでください』
『了解。なにかあったら海上まで後退するわ』
『クァードは衛星軌道上で追撃を警戒しつつ待機していますので』
『そっちも気を付けてね』
クァードとの通信を終えるころ、見えていた大陸の影は次第に近づき、海岸線が見えて来た。
「陸地だ……」
見えて来たのは切り立った崖のような海岸線だった。その海岸線をなぞるように、高い城壁のような壁が築かれていたが、所々が朽ち落ちている。お世辞にも立派な壁とは言い難い損傷が目立った。
その城壁の内側には街――の残骸が広がっていた。
「これは……」
巨大な建物が見えるが、そのどれもが倒壊しており、まるで爆撃でも受けたかのように朽ち果てている。そしてその上に所々、植物が群生していた。
『戦闘の直後……って感じではなさそうね。少し高度を下げて見てみよう』
「了解」
高度を下げると、街の跡地がよりよく見えてきた。
どの建物も痛みがひどく、かなりの年月が経過しているかのように見えた。
『これは破壊されたというより自然に壊れた、って感じね』
「人は住んでないのかな?」
『どうだろう? こんな状態じゃ住んでる可能性は低いけど……文明があるのならその文明を築いた人がいそうだけどね』
跡地には道路のようなものも整備されており、それなりに整った街並みだったことが想像できた。しかし今はどれもが朽ち果て、無残な状態になっている。
動くものと言えば風で揺れる植物くらいで、生物の気配はまるでない。
『動体センサー、サーマルにも反応なし、か……。マシ長はなんだってこんな星に来させたのかしら』
「なにか……あるんだろうけど、それがなんなのかわからないからな……」
気がつくとフレイア機もゼータリオンも進行速度を落としていた。
『けど、通信に反応がない理由は察しがついたわね。この星、無人なのかもしれない。もしくは都市部に人が住んでいないか』
「そんなことってあるのか?」
『どんな事情かはわからないけど、そうせざるを得ない事情があるんじゃない? 戦争でこうなってるなら、兵器も見えるし、空を飛んでるあたしたちを捕捉してこないはずがないもの』
「なるほど……」
『ショウヘイ、あっちに川が見えるわ。それに沿って上流域へ行ってみましょ』
「わかった」
フレイア機に続いて飛ぶと、フレイアの言っていた通りに川が流れていた。
護岸は整備されているが、それは川と呼ぶにはあまりにも弱々しい流れだった。
「なんか水量が少ないな」
『水の乏しい星なのかな? 環境を調べてみたけど、環境はラメルやオッパリオンとそんなに差はないみたい。外でも活動できそうよ。でも――』
「でも?」
『大気は正常かと言われると少しあやしいわね。ひどく汚染されていた形跡があるみたい。だいぶ落ち着いてはいるけど』
「汚染?」
『大気の状態からするとこの街が機能してた頃は相当に大気が汚染されていたのかも。それで住む人がいなくなって、大気が少しずつ浄化されて今の状態になった、ってところかな』
「そうなのか……。じゃあこの街は相当な時間が経ってるってことか」
『そうなるかな。荒廃の進み方を見ても数百年って感じかも』
「そんなに!?」
『建築様式も古い感じだもの。……この感じじゃ、人がいたとしても少ないんじゃ……うん?』
「え?」
『ショウヘイ、見て。最大望遠』
前を飛んでいたフレイア機が空いている方の手を挙げ、指をさすような動作をした。その指さす先を見ると、山岳地帯の方から一筋の煙が上がっているのが見えた。
「煙だ」
『つまり、誰かいるってことね』
「あ、そうか」
『行ってみましょう。念のために高度をとって。あそこ、確実になにかあるわね』
「俺もそんな気がする」
『なにか感じる?』
「いや、わからないけど……マシ長がここに行けって言われた理由に近づいてる予感はしてる」
『それなら当たりかもね。でも警戒はしておくように』
「わかってるよ」
二機は高度を取りつつ、煙の方へと向かった。
山岳地帯と言っても岩肌は所々が崩れ、木々はほとんど生えていなかった。
翔平は上空から山肌を見ながら、地球で見たことのある採掘場を思い出した。もしかしたら、なにかを掘っていたのかもしれない、と。
『周辺に生体反応はないか……。それでも煙が立ってるってことは……』
「なにか考えられるのか?」
『自然発火、かな? だとしたら誰もいないことになるけど……ここまで反応がないっていうのも変な話だなって』
「隠れているのかもしれない。航路もなかったんだろう? 帝国から逃れるためとかで、星ごと隠してるのかも」
『考えられなくはないけど……それもあるかもしれない。あ』
「え?」
『見て』
「これは……」
フレイア機が止まったその足下には、大規模な採掘場のようなものがあった――が、当然のように朽ち果てており、機能はしていない。
大型の機械や重機などがそのままに放置されており、それはかつて人がいたことを示す証拠となっていた。
『人がいたみたいね。なんらかの資源を採掘していたんでしょうね。機械を見るにかなりの旧型ね』
「なんか少し親近感を覚えるな」
『ショウヘイのいた星に近い感じ?』
「その延長線にあるような感じがする」
『なるほど。じゃあ、それなりの文明があったってことね。環境汚染で滅んだとか、そういう感じかしら?』
「やっぱりそういうことってあるのか?」
『そういう例もある、ってくらいかな。もっとも、そこまで深刻化する前になんとかするのが一般的だと思うけど……間に合わなかったのかも』
「だとしたら……ちょっと悲しいな」
『自業自得とも言えるけどね』
「科学力でなんともならないこともあるんだな」
『科学も万能ではないからね』
そんな話をしていると、煙の元が近づいてきた。
『――動体、サーマル共に反応なし。煙はなにか……建物から出てるみたい』
「集落とかは……ないか」
煙が立ち上っている周辺は開けており、広場のようになっていた。所々に樹木のようなものが見えるが、その周辺になにかいる気配はまるでなかった。
広場の端は荒れた岩肌に隣接しており、クレーターのような跡が見える。
『降りてみるしかなさそうね』
「……降りるのか……」
『怖い?』
「ちょっとは」
『ふふ、正直ね。恐怖を感じるってことは大事。でも行かないと』
「わかった」
なにかある――その予感はするものの、予感の正体はわからない。翔平はそれに恐怖を感じていた。
ただその恐怖の中にはどこか、懐かしさのようなものも混じっている。
『再度周辺を索敵したけど、気配はないわね。安全ではある、と思うわ。気を付けつつ、あの広場に降りてみましょう』
フレイア機がゆっくりと高度を下げていくので、翔平もその後を追った。
上空から見た限り、煙の立ち上る小屋のような建物の周囲に人がいるような痕跡は見当たらない。翔平からすると、すごく無機質な場所に感じられた。
フレイア機が広場に降り立つと、そのとなりにゼータリオンも着地する。
フレイアは着地するなりコクピットハッチを開き、身を乗り出していた。手には銃を持っている。
『ショウヘイ、ゼータリオンはそのままにしておいて。銃を忘れずにね』
「わ、わかった」
銃をという言葉に緊張感が高まる。
銃は事前に持たされており、シートの下に備え付けられていた。それを取り出すと、翔平もコクピットハッチを開ける。
外から吹き込んでくる風は冷たかったが、汚染を感じるようなことはなかった。
フレイアは機動兵器をかがませ、地面に降りた。周囲を警戒しつつ、翔平が来るのを待つ。
翔平もゼータリオンを屈ませ、地面に飛び降りた。
「あの小屋へ行ってみるしかなさそうね」
「あ、ああ」
「銃を使ったことはある?」
「な、ないよ」
「コツを教えると、撃つ時はためらわないこと。それが大事。覚えておいて」
「わ、わかった」
「ついてきて」
声を潜めたフレイアは慎重な足取りで小屋を目指した。
小屋を見てみると、こちらへ向いてドアのようなものがあった。フレイアはそこへ近づいていくので、翔平も後を追う。
「本当になんの気配もないか……。ここまで気配がないと気味が悪いわね」
「静かすぎる……」
風が木々を揺らす音が聞こえる程度で、他にはなんの音もない。
フレイアがドアの前に立つと、ドアは自動的にスライドして開いた。
「え?」
フレイアは驚き、中に向かい銃を構えた。
「フレイア?」
「動いてる。エネルギーが生きてるってことね」
そのフレイアの言葉を証明するように、小屋の中に灯りが点いた。
そしてその中には――。
扉の先には一体何が待ち受けるのか!?
ベールヌでZリーヌンスの解明は行われるのだろうか。
全ては謎に包まれている!!
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次回もお楽しみに!




