【第2章】宇宙艦隊オッパリオン051話「大帝国の思惑」
いつも宇宙艦隊オッパリオンを応援頂き、誠にありがとうございます。
オッパリオンも50話を超え、51話に突入しました!!
今回のオッパリオンは帝国回。
遂に姿を現すマーラ帝国の皇太子達。
彼らの考えるマーラ帝国の未来とは一体!?
銀河の覇権をめぐる戦いに、更なる力が投入される。
オッパリオンと宇宙の命運はZリーヌンスに託された!!
【〇五一 大帝国の思惑】
五八の植民星と一五の鉱山星を持つ銀河の大帝国、マーラ帝国。その本星であるマーラ星はオッパリオン星系からはまた遠く離れた銀河の中心付近にあった。
その星に、今銀河の果てから一報がもたらされていた。
『――ラメルで交戦となりましたが、目標を取り逃しました。送り込まれた青二才は思いのほか働き者ではありますが、いかんせん効果的とは言えませんな』
皇帝の一族の暮らす居城の長距離通信室では、マーラ帝国第二皇子ヴァツルド=マグリシア=マーラシアンが海賊部隊、アルガノスからの通信を受けていた。これは秘匿回線で軍部でも傍受できない通信であった。
「兄上が送り込んだ腹心だからね。そう易々と出し抜けるとは思っていないが、キミならできると思っているよ」
『そのお言葉は恐悦ですがこちらも予想外の被害を被りました。率直に言って補給と修理が必要になっております。母乳の貯蔵量も心許なくなっています』
「なるほど。わざわざ連絡を入れて来たのはそういうわけだね」
『新型機も新造艦も従来のものに比べると強力ではありますが母乳を食い過ぎますな。自分が予想していたよりもかなり消費しております。特に機動兵器の消費が多い』
「わかった。補給部隊と修理艦を回そう――と言いたいところだけど小規模な補給艦はともかく修理艦は私の一存でどうこうなるものではないからね。不本意ながら正規軍のものを回さないといけない。つまり兄上の許可がいるということだ」
『一筋縄ではいかんことはわかっていますが、なんとかお願いしたく思います』
通信は音声のみだったが、苦々しい表情のアルガノスの顔が見えるようだった。弱音を吐くことを知らないアルガノスからこうして補給の要請があるということは、よほどの苦戦を強いられていることだと、ヴァツルドは察した。
「兄上もドロアズを送り込んだ手前、無下にもできないだろうからね。そこを突いて派遣を取り付けるとするよ」
『苦労をおかけします』
「ははは、私たち後方には後方の役目があるからね。――それと、Zリーヌンスになにか変化は見られたかな?」
『詳しくはわかりませんが戦闘を重ねるたびに力を使いこなしているような感じはありますな。そんな気がする、という程度ではありますが』
「なるほど」
『ラメルでマシ長からなにか言われたのでしょう。ラメル軌道から早々とジャンプしてどこかへ行きました。行き先は追跡してませんが、行った先でZリーヌンスを使えば多少離れていても感知できます』
「ふむ……その様子だとZリーヌンス保有者はなにかを見つけたのかもしれないね。まぁ力を使いこなしてくれるようになるぶんにはこちらとしても願うところかな」
『捕獲が困難になる可能性もありますがね』
「そうだね。輪っか付きの方はどうなっているのかな?」
『探索班が手を焼いているようですな。小惑星群に隠れた特務艦を見つけるのはかなり難しいのです。頻繁に通信でもしてくれりゃ掴めるかもしれませんが、連中も馬鹿じゃないようで、通信もほとんどしてないようですな』
「そうなるとZリーヌンスを持つ付録艦はほとんど単独行動ということか……。連中も思いきったことをするね」
『合流する前に叩いておきたいところですが燃費の都合で長期戦になるとこっちが不利になりますな。探索班もそろそろ補給をしておいた方がいいでしょう。そう遠くなく決戦になる予感がしてます』
「わかった。そちらにも補給を向かわせるように手配させるよ」
『ありがとうございます。こちらはなんとかしてあの青二才を出し抜き、Zリーヌンスを確保してみせましょう』
「頼んだよ。この星の未来がかかっている」
『了解しました。ではこれで』
「ああ、補給の手はずが整ったらこちらから連絡を入れるよ」
『お待ちしております。では――』
通信が切れると、通信室には静寂が訪れた。
ヴァツルドは椅子から立ち上がると消えたままのモニターを一瞥する。
「さて、こちらも仕事が回ってきたということだね」
そう言い、通信室の重い扉を開ける。
するとそこにはまるでヴァツルドを待つかのように、兄で第一皇太子のヴァロアルドがいた。
「兄上?」
「これから父上のところへ向かう。部屋に迎えに行ったら留守だったのでここだと思ったのだ」
真意の読めない真顔で言う兄のヴァロアルドにヴァツルドは微笑んだ。
「大した用事ではありませんでしたので、そう言ってくれればよかったものを。お待たせしてしまいましたな」
「重要な連絡だったのではないか?」
ついて来いと言わんばかりに歩き出したヴァロアルドの一歩後ろを、ヴァツルドはついて歩き出した。
「例の特務隊からの連絡でした。補給と修理艦の要請が出ております」
「ふむ、その様子だと苦戦しているようだな。試験運用中の新造艦と新型機を回したがそれでも足りないということか?」
「そうなのでしょう。相手も手強いということなのかと」
「精鋭を回しておいてこれか。なんとも面倒な案件に手を出したな、ヴァツルド」
「かと言って放置するわけにはいかないことは兄上も承知のことかと」
「ドロアズだけでは荷が重かったか」
「よくやっていると思います」
「――わかった。補給部隊と修理艦を回すように手配しよう。合流場所はそちらで指定するがいい」
「ありがとうございます」
ヴァツルドの要請は思いのほかあっさりと承諾され、ヴァツルド本人も内心少々驚いた。
「それはそうと――父上ももうそう長くはないな」
「そうなのですか?」
マーラ帝国の皇帝はかなりの高齢で、数ヶ月前より病を患い病床に伏していた。
なので、今は第一継承権を持つこの兄ヴァロアルドが実質的に皇帝の執務を執り行っている。帝国議会や軍部も皇帝と同じ路線を執行しようとするヴァロアルドを指示し、まとまっていた。
「これも人の定めだ。父上は実によく帝国を仕上げてくれた。後を継ぐ私はその覇道をさらに強める必要がある」
「兄上ならばできましょう。このヴァツルドも微力ながら協力させてもらいます」
「おまえは賢いからな。――父上のこともそうだが、星のことも気になっている。先ほど学者どもからの調査結果が上がって来た」
「なんと?」
「マーラ星もそう長くはもたんそうだ」
「……そうですか」
マーラ星の環境汚染は深刻化の一路をたどっていた。今では屋外に出るには呼吸器を付けねばならないほどになっており、海洋、土壌も著しく汚染されてしまっている。そのため、食糧の自給率はほぼゼロに等しく、植民星からの輸入によってまかなっているような状況だった。
ヴァツルドは幼い頃、空の色はかつて澄んだ青だったと聞いたことがあった。視察で回った植民星の空は確かに青く澄んでいるところが多かったが、自分が生まれたこのマーラ星の空はいつも鈍色に曇っている。
「我々に残された時間は少ないということだ。この星が完全に息を引き取る前に、移住先を見つけねばならない。そのためにはより多くの資源、エネルギーが必要になる」
「理解しております」
「オッパリオン人の発見はまさに天啓を得たようだったな。あの連中のエネルギーは過去になく強力だ。ニュートレースジャンプが使えれば遠くの星への移住も可能になる」
「オッパリオンへの再侵攻を?」
現在は休戦の体を取っているが、上層部は再侵攻に向けた軍備拡充のための時間稼ぎであるという認識であった。
現在ではミルキィーフィールドを無効化する兵器だったり、オッパリオン製を上回る性能の艦船や機動兵器の開発も進んでいる。
再侵攻の準備は着実に進んでいた。
「無論だ。そう遠くなく再び開戦となる。今度は遅れは取らん、一気に攻め入るつもりだ。そのためにはあの力が厄介だ」
「Zリーヌンスですか」
「首都上空戦で見せた威力は軍部を怖じ気づかせるには十分だったな。あの力を排除せねば士気も上がらないだろうからな。――そのためにおまえの特務隊に協力した」
「ありがとうございます」
兄、ヴァロアルドはZリーヌンス殲滅を掲げている。だが――ヴァツルドの思惑は兄とは違っていた。ヴァツルドはZリーヌンスを手に入れることを考えていた。このことは兄も気付いていない。知っているのは本人とアルガノス他、前回の任務に当たった極少数の者たちだけだった。
マーラ星が保たないことはヴァツルドも知っている。しかしこの星を捨て移住することには抵抗を感じていた。宇宙の覇権を握る帝国たるものが母星を捨ててしまってよいものかと。兄たち議会や軍部のほとんどはこの移民という意見に賛成であったが、ヴァツルドは内心反対であった。
伝説の力Zリーヌンスは宇宙を支配する力であると同時に、星を救う力でもあると聞いた。もしそれが本当であるなら――兄に代わり自分がこの帝国を支配することも、マーラ星を救うこともできるのではないか、そう考えていた。
決して表に出さない、それはヴァツルドの秘めた野心だった。
「父上の病院へ向かう途中で軍部には補給部隊を編成するように伝えよう。必要な物資も必要なだけ揃えさせよう」
「部隊も喜ぶでしょう」
「それと試験大隊の方で試験を終えた新型機があると言っていた。そちらも回してやろう。ドロアズなら使いこなせるだろうからな」
「新型機ですか?」
「ああ。機動兵器は我々マーラ帝国発祥だ。オッパリオン製に遅れを取るようなものではない。連中の優位ももう終わりということをここで知ることになるだろう」
兄もZリーヌンスの脅威はわかっている――その点では話が早くて助かる、ヴァツルドはそう思い、微かに湧き上がる笑みを隠していた。
次回は、フレイアと翔平の異星文化交流回!!
果たして何が起きるのか?
次回更新を待て!!




