【第2章】宇宙艦隊オッパリオン048話「黒騎士とグアデリア攻防戦(後編)」
本日もオッパリオンの更新がやって参りました。
今回のエピソードは前回の続き。
惑星ラメルで翔平達オッパリオンクァード部隊を襲ってきた海賊艦一味。
彼らの作戦は失敗し、ラメルでのZリーヌンス殲滅は、翔平達の逃亡によって終わりを告げた。
だが、機動兵器戦は続いている。
翔平の乗るゼータリオン、そしてクァード艦フレイア部隊は無事にクァードへと帰還できるのだろうか?
敵母艦であるグアデリアもクァードへと向かい侵攻をしている。
オッパリオン勢力と海賊艦のラメルでの攻防戦も佳境に入った!!
【〇四八 黒騎士とグアデリア攻防戦(後編)】
海賊艦への接近を試みていたシュレンは、三機の海賊機に阻まれ、接近を阻まれていた。しかし敵の注意を引くという意味では、シュレンの行動は作戦に適う状況だった。
そんな中、一機の動きに変化が見えた。
「離れる? 艦の守りを捨てる気なの?」
一機が防衛線から離れ、フレイアたちの方へと向かいはじめた。
「フレイア、リアリィ、そっちに一機向かうわ」
『そうみたいね。守りを捨ててもZリーヌンスをどうにかしたいみたいね』
フレイアから通信が戻る。
「わたしもそちらに行った方がいいかしら?」
『大丈夫、シュレンはそのまま海賊艦を叩いちゃって。墜とすチャンスよ。母艦を失えばもう追ってもこれないでしょうし』
「了解。そうさせてもらうわ」
『頼んだわよ』
通信の最中も、シュレン機は海賊機からの射撃を回避し続けていた。
そして通信を終えると、シュレン機は海賊艦へ向かい加速をかける。
「さて、お遊びはここまで海賊さんたち。本気で行かせてもらうわ」
シュレンは加速をかけた際に、出力がいつも以上になっていることに気がついた。
「Zリーヌンスの影響かしら? 有効に使わせてもらうわ、ありがとう」
重装備であることを感じさせない加速性能に、海賊機たちは一瞬遅れて反応し、後を追いかけるような動きを見せた。
Zリーヌンスを受けた今の速度なら、振り切れる感じはした。だがこの後の対艦攻撃を考えると、防衛の機動兵器は厄介な存在だ。
「ここで墜としておこうかしら――ね」
シュレンは機体を急反転させると同時、即座に敵機を照準に入れた。
「もらった!」
次の瞬間、シュレン機のランチャーから放たれたビームが海賊機の一機を捉え、上半身を撃ち抜いた。
直撃を受けた機動兵器は爆発を起こし、その姿を火の玉に変えてしまう。
振り向きざまの素早い照準は難易度の高い攻撃だが、シュレンの技量があってこそ可能な行動だった。
残った一機はシュレン機を警戒し、距離を取る。
「こちらシュレン、海賊機を一機墜としたわ。街の上で気が引けちゃうけど……引き続き海賊艦に攻撃を仕掛けます」
『さすがシュレン! こっちからも確認したよ』
反応したのはレマスだった。
『敵も手薄になってくるね。わたしたちもフレイアの加勢に出ようか』
リクサーヌはそんな提案をした。クァードを直接狙う敵影がない今、防衛隊も攻撃に回れる好機だった。
『レマス、リクサーヌ、それなら黒騎士の援護に来たやつを相手してもらえる? 他よりちょっと動きがいいからカスタム機かもしれない』
『わかったよフレイア。リクサーヌ、行こう』
『了解レマス』
変化する状況に応じ、フレイアたちは迅速に適応していく。
◇ ◇ ◇
「ドルバ機、信号消失、墜とされた模様」
グアデリアの艦橋では友軍機の撃墜が伝えられた。それはアルガノスが戻ったのと同時のことだった。
「なにをやってる! ドロアズを先行させすぎだ! 機動兵器部隊の連携が取れていないぞ!」
アルガノスは思わず声を荒げる。
「残りの機動兵器を防衛に回せ、ドロアズ殿にも連絡だ、突出もいい加減にしろとな。後ろのことも考えてもらえ」
「了解」
「くっ、あの若造が。焦りすぎだ。付録艦の上をとってもこれじゃ押さえきれんぞ」
「キャプテン、ドルバ機を墜としたやつは対艦装備です。こちらへ来ますな」
「そんなことはわかってる。残りの機動兵器を下げて対応しろ。付録艦の部隊は案外手強い、一機でもこの艦を狙ってくる。対空迎撃を稼動させろ。本艦へ近づけるな」
「敵機動兵器接近! データよりも速度が速い!」
「対空防御! 回避運動に入れ!」
グアデリアは接近するシュレン機に対して対空砲火を稼動させつつ、回避運動に入る。しかし機動兵器の機動性からすると艦の動きは鈍重なものになってしまう。
通常であれば防衛に当たる機動兵器が接近を阻むのだが、シュレン機はその防衛線を突破していた。
「一瞬の隙を突かれたか……!」
出ている機動兵器が戻れば一機程度は追い払える――だがそれまでの時間が問題だった。相手は待ってくれるほど悠長でもなく、甘くもない。
「敵機動兵器、本艦真後ろへ!」
「来るぞ! 総員衝撃に備えろ!」
アルガノスが叫んだ直後、艦が激しく揺さぶられる。
「被害状況挙げろ!」
「艦メインノズルに被弾! 損傷不明! 速度低下!」
「機関部に損傷発生! 出力、機動性低下!」
「えぇーい! 一発でこのザマか!」
シュレン機から対艦ランチャーでの攻撃を受け、グアデリアには被害が発生した。
シュレン機は艦橋のモニターで見る限り、対空迎撃が追う速度よりも早い速度で艦尾へと付き、メインノズルを狙って攻撃を仕掛けたのだった。
「あの機体、艦をやり慣れてるな。もう一発来るぞ」
「敵機再接近! 直上!」
「弾幕を張れ! 艦橋は潰させるな!」
全対空砲火がシュレン機へと集中するが、シュレン機は高い機動性を見せてグアデリアへ急接近を仕掛ける。艦橋をやられる――アルガノスは一瞬そんなことも考えたが、シュレン機からの二射目は艦橋を外したのか最初から狙ったのか、グアデリアの機動兵器カタパルトへと直撃した。
グアデリアは再び揺さぶられる。
「カタパルトおよび格納庫に被弾!」
「くそったれが! 沈むまで撃たせる気か! 防衛隊はなにをやっている!」
「先行していた防衛隊到着! 敵機動兵器と交戦に入る!」
「遅いぞ! さっさと追っ払え!」
アルガノスは改めて、対艦装備を施した機動兵器の恐ろしさを感じさせられた。
「あの機体、Zリーヌンスとやらの影響を受けているな。でなければこうも簡単に対空砲火を抜けられるものか……」
そうつぶやかねば、納得のいかない被害が出ていた。
◇ ◇ ◇
「グアデリアが攻撃を受けた!? なにをやっているんだあのキャプテンは!」
機動兵器部隊にも届いた被害状況に、ギドルはいらだっていた。だがいらだちの原因はグアデリアの失態ではなく、思うようにドロアズに近づけない自分にあった。
二機の重装型機動兵器に阻まれ、一向にドロアズへと近づけないでいる。
「なんて邪魔なやつらなんだ! この重装でこの機動性はなんだ!?」
『ギドル! 早くZリーヌンス機へ取り付け!』
「しかしドロアズ様! こいつらがしつこく!」
『振り払え! 重装型など重いだけのはずだ!』
「ですが――ぐわっ!?」
僅かに動きが鈍った隙を突かれ、槍で突進してきた機体への反応が遅れた。機体への直撃こそ回避はしたものの、手に持っていたライフルを貫かれていた。
「目がいいパイロットだ! 接触の一瞬で武器に標的を切り替えたのか!」
その緑の機体が貫いたライフルを振り落とすと同時、その影からもう一機が飛び出してきた。
「なんだとっ!?」
大きな槍斧を振りかざした濃紺の機体は急加速をかけて斬りかかってきた。
振り下ろされる槍斧に対し、ギドルは片手持ちの剣で防ごうとした――が、質量と力の差により、掲げた剣は軽く弾き飛ばされてしまった。
「くっ!?」
腕部への衝撃がダメージとなり、モニター上には損傷の警告が表示される。しかしそんなことに気を取られている場合ではなかった。
「離れろ!」
まだ自分は相手の間合いにいる、そう感じたギドルは速やかに敵機との距離をあけようと加速をかけた。だがその動きは完全に相手に読まれていた。そして加速性能も相手の方が上だった。
「馬鹿な!」
やられるか――そう思った瞬間、激しい衝撃がコクピットを揺らす。
濃紺の機体が持っていた槍斧はコクピットのある胸部から外れ、腿から下を斬り裂いていった。
「なんてパワーだ!」
片足程度ならばわかるが、一撃で両脚を持って行かれるとは想像もできない損傷だった。
濃紺の機体はまだ離れず、今度は真上からの振り下ろしを行おうとしていた。
両脚を失い機動性を欠いた今、回避は間に合わない。ギドルは己の不甲斐なさを感じつつも死を覚悟した――が、振り下ろしは来なかった。
『失態だなギドル!』
そのかわりにドロアズの声がする。
濃紺の機体を追い払うように、ドロアズ機がギドル機の正面に割って入っていたのだ。
「ドロアズ様! 自分に構わずにZリーヌンスを!」
『そうしたいところだがグアデリアが押されすぎている。我々は優位を失ったということだ。ここは引くぞ』
「しかし――」
『やむを得ん。今にこだわりすぎれば我々は完全に敗北する』
「了解……しました」
ドロアズ機はギドル機の手を取ると最高速の加速をかけてグアデリアへと向かった。
◇ ◇ ◇
『逃がさない!』
『リクサーヌ待って! 深追いはダメ!』
翔平はゼータリオンのコクピット内で、フレイアとリクサーヌの通信を聞いた。
短い時間の中で状況はめまぐるしく変化し、状況がよくわからなくなっていた。
『シュレン、黒騎士が戻るわ。敵の防衛隊に阻まれる前にこっちと合流して。艦にも十分な打撃を与えたはずよ』
『了解。もう少しで撃沈できた……というところね』
『ふふ、そうね。あなたが味方でよかったよ』
そんな通信をする傍ら、ゼータリオンのとなりにもリアリィ機が来ていた。
フレイア機は少し離れた場所でシュレン機を出迎えに出ている。
そんな翔平たちのわきを、クァードの砲撃が過ぎていった。その一撃は動きの鈍った海賊艦を捉え、反転を見せた側面を掠めて行った。
「当たった!?」
『惜しかったね。直撃じゃなかったかな』
リアリィがそう答えてくれた。
『クァードより各機へ。敵戦力の撤退を確認しました。追撃はかけずにこちらも離脱に入ります。各機は帰投を開始してください』
「ゼータリオン了解しました。帰投に向かいます」
『みんなお疲れさま。今回はシュレンのお手柄ね』
『あら、わたしだけの手柄かしら?』
『謙遜? そういうことにしておきなよ』
『ふふ、ありがとう、フレイア』
「こちらはなんとかなったけど……マシ長たちは大丈夫だったかな」
翔平はふと、おいてきてしまったマシ長のことが気になった。
『そうね。クァード、なにか情報はある?』
『ラメル管制によると地上の争乱も警備隊の出動により終息に向かっているとのことです。マシ長も安全な場所で治療を受けているとのことでした』
「よかった……」
翔平はクァードへ向かいながら胸をなで下ろした。
『ラメルの反乱も失敗に終わったって感じね。海賊艦があの様子で撤退じゃ帝国支持者も意気消沈でしょうからね』
『やってやったって感じだね。でも黒騎士は今回も取り逃したか』
『いいところまでは行ったのにね。まぁでも、上出来よ』
リアリィ機と並び、フレイアはそんなことを言った。そこに大型ランチャーを担いだシュレン機が並ぶと、ゼータリオンからもクァードが見えて来た。
今回も無事に帰ることができた――翔平はそのことに安堵を覚えつつ、少しでもZリーヌンスを制御できたという手応えを感じていた。
ラメル戦はオッパリオンとマシ長の部隊の勝利の模様。
クァードは引き続き一路Zリーヌンスの解明を目指す!!
次回も宇宙艦隊オッパリオン出航します。




