【第7章】宇宙艦隊オッパリオン451話「荒事」
ラメルを舞台に繰り広げられる対ラメルテロリスト編も佳境!?
今話で遂に決着なるか。
第二章は宇宙に散らばる、様々な星の様々な人、そして思惑が渦巻く。
ラメルで行われる講和会談は実現するのか?
レーナとケールパット、そしてお守りシスタ―ズの命運は如何に!!
【四五一 荒事】
電源室は倉庫のすぐ裏手にあった。レーナたちが駆けつけると、長い廊下の奥からこちらへと向かってくる人影が数人、見えた。
「まったく、銃なんぞ持ったやつが警備をすり抜けて侵入しているとは、俺たちの給料査定に影響するな」
そんなケールパットの愚痴を聞きながら、ペロルは電源室の扉を確認する。
「ロックはかかっています。少しくらいの力じゃ壊せません」
「そりゃよかった。怪力のゴルベッド人の力でもどうにもならんだろうが、やつら爆弾を持っているかもしれないぞ」
「ひえっ! それじゃ壊されます!」
「その前に無力化するしかない。一応ラメルに住む同胞だ、銃は非殺傷を使えよ? おまえたちのは光学か?」
ケールパットの言葉に、ペロルとナデルは銃を見せる。
「わたしたちはスタンレーザーです」
「危ないものは持たせてもらえないので」
「それがいい。しかし当たれば動けなくなる激痛だ。おしおきしてやれ。レーナ隊長もすまないが、できれば――」
「わかっている。命までは奪わないよ」
レーナの使う光学銃も非殺傷モードに設定ができた。普段は実体弾の銃を携行しているのだが、ラメルでの警備で人も多いところになると思い、親衛隊全員が非殺傷モードが使える光学銃を携帯していた。
その拳銃をレーナが構えた時、ふとペロルの視線がこちらに向いていることに気がついた。
「どうかしたのか?」
レーナが問うと、ペロルは緊張気味に応じる。
「レーナ隊長さんはこういうの慣れているのですか?」
レーナは首を振る。
「機動兵器戦闘の経験はあるが、生身の銃撃戦はあまり経験がないな」
「……」
ペロルの表情が曇る。だが、レーナは続ける。
「しかし訓練は死ぬほどしてきた。厳しいものをな。わたしが尊敬する警護の達人も、実戦経験の少なさは訓練で補えると言っていた。機動兵器戦闘を経験して、その言葉は真実だと実感したよ」
「レーナ隊長さんも尊敬する、警護の達人がいる……」
「あぁ。ペロルも会える機会があるかもしれない。だから、自分がしてきた訓練を思い出して実戦に挑むんだ。訓練通りにやればいい。逆に、訓練でやっていないことをやろうとしたらダメだ。いきなりの本番でうまくやれる人はそういないからな」
「わ、わかりました!」
「銃の安全装置を解除しろ。相手は実弾で撃ってくる。苦痛を与えることを躊躇するな」
「は、はいっ!」
そのやり取りの直後、ふたりの近くを銃弾が飛んだ。
「身を隠せ!」
ケールパットの声に応じ、レーナとペロル、ナデルはそれぞれ近くの柱に身を隠した。
レーナは即座に体を出し、応戦する。
「相手は六人! インディアガーナ人ふたりにゴルベッド人四人だ!」
レーナが叫ぶ。ゴルベッド人は大柄で屈強な種族であり、堅い外殻を持っている。そして、荒い性格のものが多いと、レーナも知っていた。
「おまえたちの望む結果は得られないぞ。武器を捨てて大人しく投降しろ!」
レーナの呼びかけに返ってきたのは銃弾だった。
「話は通じないか」
「全部のインディアガーナとゴルベッドがこんなやつらばかりじゃないんだがな。ただ、こういうことをする連中が多いから困る」
応戦したケールパットは再度柱の影に戻ると、通信を入れる。
「こちらケールパット。テロリスト六名と交戦に入った。電源室前だ」
『本部了解した。現在施設周辺は封鎖しているがイベントは継続中だ。そこに留意されよ』
「意地でもイベントは止めないか。まぁラメルの信頼に関わるか」
ケールパットはそう愚痴りながらもう応戦する。しかしお互いに距離が遠く、牽制状態が続いた。
レーナに生体通信が入る。
『アナスタシアです。こちら犯人の拘束を終えたのでそちらに応戦に向かいます。親衛隊全員行けます』
『頼む。できることなら包囲して投降させたい』
『電源室の場所を把握しました。前の通路は一本道なので、背後から挟撃します』
『わかった』
それならば無理に前進する必要はないか――レーナはそう思ったが、テロリストのひとり、ドルベッド人が前進し電源室に隣接する部屋の扉近くの柱に取り付いた。
「連中もまったくの素人ではないと言うことか。主任、わたしも前に出る」
「射線を通るぞ。無理はするな、応援が来る」
「電源室のとなりで爆弾でも使われたら支障が出る可能性がある。それは避けたい。ペロル、ナデル、ここに来て援護はできるか?」
「できます!」
ふたりの声が重なる。
「行けシスターズ!」
ケールパットが身を出して牽制の射撃をする中、ペロルとナデルは素早い走りでレーナの隠れる柱まで移動した。それを見ていたテロリストの銃撃が、レーナたち三人の隠れる柱に集中する。レーザーと、実体弾が混じる。
「レーナ隊長さんこんな中を出て行くんですか!?」
ナデルが驚きの声をあげる。
「こちらが応戦している間は相手も撃ってこない。その間に優位な位置に移動するんだ。銃撃の基本だが習わなかったか?」
「習いました! でもこんなに激しい攻撃の中じゃ……」
「大丈夫だ。おまえたちが撃ってくれれば攻撃はとまる。わたしはあそこの柱まで移動してあの壁の影に隠れているゴルベッド人を撃つ。合図したらふたりは牽制射撃をして欲しい」
「わ、わかりました!」
「やります!」
「頼むぞ。……では、今だ!」
レーナの声に応じ、ペロルとナデルは身を出して通路奥に目がけて発砲する。射撃を受けたテロリストの銃撃がとまる。するとその隙にレーナは飛び出し、ふたりに言っていた柱まで無事に移動することができた。
レーナはたどり着いた柱からペロルとナデルに向けて親指を立てた。
「やった!」
「やったよ!」
ふたりが喜ぶ間、レーナはゴルベッド人を狙い撃ち、地面に倒した。堅い甲殻を持つゴルベッド人でも、銃弾は防ぎ切れず、もたらされた激痛に耐えきれず気を失う。
「ひとりやられたぞ!」
「俺が出る! 援護しろ!」
テロリストたちのそんな声が聞こえる。その声はペロルとナデルの耳にも届いた。
「前に出てくるって!」
「レーナ隊長さんが狙われる!」
「わたしがあの柱の前まで出る! ナデルちゃんが援護して!」
「えぇっ!? 危ないよ!」
「あそこを取られたらレーナ隊長さんが狙い撃ちされちゃうよ! 行くしかない!」
「わ、わかった! やれるよね……!」
「うん、やれる! 行くよナデルちゃん!」
「うん!」
ナデルが柱から身を出して牽制射撃をする。その瞬間ペロルが飛び出す。だが、そのタイミングは別のゴルベッド人も同じ場所に向かい飛び出したとの同時だった。
「まずい!」
テロリストからの銃撃がある中、状況のまずさを理解したケールパットは身を出して射撃に入る。
ペロルの足が一瞬止まる。
「そのまま行け!」
ケールパットとレーナの声が重なり、ペロルが走り出す。
ケールパットの射撃が、飛び出していたゴルベッド人を倒した。だが、その後ろにはもうひとりのインディアガーナ人が飛び出してきていた。
「ふたりいたのか!?」
「ペロルお姉ちゃん!」
ナデルが援護射撃をするも、インディアガーナ人はとまらない。ペロルが複数の射線に入ってしまう。
「ペロル!」
レーナが叫ぶ。ペロルには三人の銃口が向けられていた。それにひるみ、ペロルは足を止めてしまった。
――撃たれる! ペロルがそう覚悟した瞬間、複数の銃声が響いた。
しかし、ペロルは苦痛を感じることがなかった。
「……レ、レーナ隊長さん!?」
ペロルの前にはマントを広げたレーナが立っており、盾になっていた。
「対レーザー対弾マントが役立ったな」
レーナの広げたマントがペロルへの攻撃を防いでいた。
「走れ!」
レーナはペロルの腕を掴むように走り、ゴルベッド人が倒れている部屋の前へと移動する。その時、後ろから放たれたケールパットの一撃がインディアガーナ人ひとりを倒す。
「あ、ありがとうございました!」
「動きは悪くなかったがタイミングが悪かった。気にするな」
「は、はい!」
レーナは流れるような動作で銃のエネルギーカートリッジをリロードする。それを見て、ペロルもリロードした。
「連中、まだやる気か」
「諦めてくれないかもしれません」
ペロルがそう言った時テロリストの声がする。
「後ろから敵の援軍だ!」
「挟まれるぞ!」
「それならここで自爆するまでのことだ!」
「馬鹿! 俺たちがいなくなったら独立の志はどうする!?」
「死ぬのが怖いのか!?」
「そうじゃない! 次に続けるんだ!」
「もう次はない! ここで死ぬ!」
「やめろ! 自爆は最後の時だ!}
「今が最後の時だろうが!」
テロリストたちの言い争いが聞こえ、レーナが壁からそっと顔を出した。すると、通路奥からこちらに向かってくる親衛隊員たちが見える。
『親衛隊、挟撃で敵を無力化する。わたしも出るからタイミングを合わせるぞ』
『了解』
親衛隊たちからの返事が同時に来る。通信はこちらにも聞こえているため、ペロルも頷いていた。当然、ナデルとケールパットにも聞こえている。
「今だ!」
レーナの声に合わせ、四人は一斉に飛び出して射撃を行う。すると通路奥から来た親衛隊員たちも身を隠しつつ射撃を行い、光の弾が前後からテロリストに浴びせられた。
テロリストたち全員は苦悶の声を上げ、その場に倒れる。
レーナとケールパットは素早くテロリストに近づき、爆発物を確認した。それを追い、ペロルとナデルも近づき、爆発物を探す。
「持っていました!」
ナデルが発見したのは倒れたインディアガーナ人が持っていた個体爆弾だった。
「他はなしか」
ケールパットはそう言うと腕に取り付けていた銃を外してしまった。
「レーナ隊長、ご無事でなによりです」
リディルがそう言うと、レーナも銃を納めつつ頷いた。
「ナデル、爆弾をクライヴに渡して欲しい」
「クライヴさん……?」
「わたしだ。親衛隊のクライヴだ。隊長に協力してくれたことに感謝する」
「いえ。専属警備のナデルです」
クライヴはナデルから爆弾を受け取ると、くるりと全体を見た。
「エンテミア星の爆弾ですね。鉱山採掘で使うものです。これ、小さいですが強力です。危ないところでした」
「ひぇっ!」
ペロルとナデルがぞっとする。
「親衛隊のフレデリカです。あの、ワンコニー星人のおふたりは専属警備ということですが?」
フレデリカの言葉にペロルが頷く。
「そうです。ご主人様――ボタンの専属警備をしています」
フレデリカたちはその専属警備が持ち場を離れていることに疑問を持った。ケールパットがそれを察する。
「警備対象は今本番真っ最中でな。そうなると暇なんだよ、専属警備ってのは」
「そんなことありません!」
「すぐ持ち場に戻らせてもらいます!」
ペロルとナデルはケールパットに頬を膨らませる。
「そう拗ねるな。今回はよくやってくれた。……っと、報告しておかないとな。こちらケールパット、こちらのテロリストは鎮圧した。全体はどうか?」
『本部より各員。状況の完了を確認した。念のため各員持ち場に戻られよ』
その報せに、ケールパットとレーナは安堵した。
そんな中、館内放送が流れる。
『ボタンです。ただいまラメル上空にオッパリオン星の皇女艦ミルアティルスと、マーラ帝国皇太子代理皇帝艦トリアルダが降下に入りました。ようこそ自由交易の惑星ラメルへ! わたしたちはおふたかたを歓迎いたします! このステージはおふたかたのご来訪への感謝と、ここからはじまる平和への祈りを込めておくらせてもらいます!』
ボタンの声を聞き、レーナが胸に手を置いた。
「よかった、皇女殿下たちが来るまでに片付けられたな」
「さすがは親衛隊だな。なかなかできるようだ」
ケールパットはそう言うと、レーナに手を差し出した。レーナはその手を握る。
「こちらこそ。迅速な情報共有と現場判断のおかげだと思う」
「ラメルは自由の星なんでね。そんなに堅苦しいことはないのさ」
レーナとケールパットは軽い笑みを浮かべ合った。
ペロルとナデルは集まった親衛隊をまじまじと見ている。
「これがオッパリオンの皇女親衛隊……!」
「かっこいい! 憧れる!」
羨望の視線に慣れない親衛隊員たちは恥ずかしそうにしていた。
「ペロル、ナデル」
「は、はい!?」
レーナが声をかける。
「マーラのトリアルダから降りるヴァツルド殿下をよく拝見しておくといい。特に、殿下が従えるメイドたちを」
「メイド……たちを?」
「どうしてですか?」
「ヴァツルド殿下のメイドたちこそ……我らオッパリオン皇女親衛隊が敬意を向ける警護の達人だからだ」
「ほえっ」
ふたりは驚いたようだった。
「わたしたちは皇女殿下の警護に戻らせてもらう。ペロル、ナデル、よくやってくれた。ヴァツルド殿下のメイドたちと、機会があったら話をしてみるといい。警護の参考になるはずだ」
「はっ、はい!」
「しっかり見ておきます!」
背中を向けたレーナに、ペロルとナデルはややぎこちないながらも敬礼をした。
「ペロルお姉ちゃん! 控え室に戻ろう! そこのモニターにきっとメイドさんたち映るよ!」
「戻りましょう! しっかり見なくちゃ! ではケールパット主任、失礼します!」
そう言うと、ペロルとナデルはものすごい早さで走って行ってしまった。
「おいっ! 報告書をきちんと本部に出せよ! って、聞いてないなあいつら」
ケールパットは頭を掻きながらも、ひと仕事終えたことに安堵していた。
テロリストの排除、そして同時にボタンによる出迎えがあった。
そして遂に、彼女達が降り立つ!?
ここから始まるラメルでの戦い!!
桐生スケキヨ次回予告。
アティルーン皇女、ヴァツルド皇太子、ついにラメルに降り立つ!!!!




