【第2章】宇宙艦隊オッパリオン038話「それは量産型ウィルギヌス」
今回は38話。
クァード艦長アリメルとの会話の際に、スタティアからの連絡で示された次の目的地「ラメル」
翔平達にとっては未開の地になるその惑星に向かうため、クァードは一路ラメルを目指すことに。
そんな中、フレイアの案内のもとシュレンを探す3人。
一体この先、翔平と奈菜はどうなってしまうのだろうか?
オッパリオンを目指していた頃とは違う、新しい出会いと別れの予感。
【〇三八 それは量産型ウィルギヌス】
格納庫へ向かう途中のクァード艦内は少しだけ落ち着きを取り戻しているようにも感じられた。
前を行くフレイアには疲れのようなものは感じられず、颯爽と歩いているように見えた。
オッパリオン人は見かけによらずタフなのかもしれない――翔平がそんなことを思っていると、目の前の通路を誰かが進んで来るのが見えた。
「あ、シュレン」
フレイアが声をかけた人物は探しに向かっていたシュレンだった。
「あら? 用事はもう終わったの?」
「ええ。それでシュレンを探しに来たの」
「わたしを? なにかしら?」
「ショウヘイたちの服が支給されてるはずなんだけど、なにか聞いてない? シュレン、そういうの詳しいでしょう?」
「詳しいというか、ちゃんと説明あったでしょう? 控え室の端のロッカーに要人用の支給品をまとめてある、って」
シュレンは少し呆れたような、それでも笑顔でフレイアにそう言った。
「あはは、そうだっけ。――だって、聞いた通りよ。控え室のロッカーにあるってさ」
「水平の銀河の服は変わってるわね。めずらしい素材でできていそうだわ」
そう言って、シュレンは奈菜の服にそっと触れてきた。
「これが地球の化学繊維です。特別な機能とかはないですね」
奈菜がそう説明するとシュレンは驚いたようだった。
「そうなんですね。宇宙へ出るにも特別な装備をつけてましたし。わたしたちからするとすごく古い素材のように感じますね」
「地球は遅れてるから……」
と、奈菜は苦笑するしかなかった。
「ふふ、すぐに追いつきますよ。控え室はこっち。案内しますね」
「ありがとうございます。行こう、翔平」
「ああ」
シュレンとフレイアに案内され、翔平と奈菜は控え室に通された。そこでは先に翔平が着替えることになり、奈菜たちは控え室の外で待っていた。
「オッパリオンの服って布面積は少ないのにいろいろな機能があるんですね」
「ナノマシン技術が進歩しているからね。ナナも一度経験してるから、快適でしょう?」
「う、うん。意外と……」
そうは答えたものの、オッパリオンの服装文化特有の露出の高さには未だに若干の抵抗はあった。
「お待たせ。サイズもぴったりだったよ」
翔平が部屋から出てくる。
「前回の時にデータを取っておいたからね。提督たちもなんだかんだ言って、またあなたと再会することは想定していたのかもね」
「ふふふ、そうかもしれませんね」
「じゃあ奈菜も着替えてきなよ」
「うん」
奈菜が控え室に入っていく。
「それにしても不思議ね」
奈菜を見送ったフレイアが腕を組みながら、独り言のようにつぶやいた。
「なにが?」
「あなたたちとわたしたち、住んでいる距離は相当離れてるのに、同じような体をしてるでしょう? 不思議だと思わない?」
「それはそうだけど……」
「ちょっと聞いたけど、文化もそんなにかけ離れているわけじゃないみたいだしさ」
「そうね。わたしも不思議に思うわ。水平の銀河、地球って言いましたっけ。そことオッパリオンはなにか関連があるのかもしれないわね」
「シュレンもそう思う? やっぱりなにかあるのよ。Zリーヌンスがあるのだってそこだったわけだしさ」
フレイアたちもオッパリオンと地球の関連に興味があるようだった。翔平には前にアーリアたちと出会った時から、ずっと気になっていることのひとつだ。
「ラメルの予言者に会えばなにかわかるかもね」
「あら、ラメルに向かうの?」
「そうよ。さっき艦橋で聞いたわ。そこまで行けば海賊は追って来れないかも」
「簡単に行かせてはくれなそうですけどね」
「あはは、やっぱりそう思うよね」
シュレンにもまた訪れるであろう戦闘への覚悟はあるようだった。
そうこうしていると、奈菜が控え室から出てくる。
「おま……たせ……」
地球の服装と比べると露出の多い格好に、奈菜はどこかもじもじとしていた。
「やっぱり恥ずかしい……」
「大丈夫よナナ、似合ってる。堂々としなさいよ」
「そ、そうかな」
「ええ、よく似合ってます」
オッパリオンのふたりにそう言われ、奈菜は恥ずかしそうに微笑んだ。
「翔平はあまりじろじろ見ないように」
「わ、わかったよ。でも久しぶりにこの服を着たけど、なんだかすごく着心地よく感じるな。普段着てる服よりも」
「うん、なんかそれはわたしも感じる。さすがオッパリオンの技術ね」
半年ぶりに着るオッパリオンの服に、翔平も奈菜も感動を覚えていた。
「そう言えば宇宙服はどうなったんだろう?」
翔平はふとそんなことが気になった。
「リクサーヌが分解してるんじゃないかな?」
「リクサーヌ、なんだか楽しそうに格納庫の隅っこでなにかしてましたね」
「見に行ってみる? 格納庫もちゃんと案内したいし」
「お願いしようかな。いい、奈菜?」
「もちろん。リクサーヌさんがわたしたちの宇宙服を見てどう思ってるかも気になるし」
「じゃあ決まり。シュレンは?」
「博士が出撃時のデータ解析がしたいって言ってたから、ちょっと付き合ってくるわ。リクサーヌの方はお願いするわ」
「わかった。じゃあ行ってくる。行きましょ、ショウヘイ、ナナ」
「ああ。じゃあシュレンさん、また」
「またよろしくお願いします」
「ええ、またあとで」
シュレンは小さく手を振り、翔平たちを見送った。落ち着いて穏やかなシュレンの所作を見て、翔平はこの人がパイロットであることを忘れていることに気がついた。
控え室前から通路を通り、格納庫へと出る。ハッチは閉ざされており、整備員たちが慌ただしく機動兵器の周囲で動いていた。
その格納庫の端っこに、ひとりの影が見える。
「あ、いたいた」
フレイアはすぐにその影を見つけた。
「おーい、リクサーヌー」
呼ばれたリクサーヌはフレイアの声に気付かず、なにかをしているようだった。
フレイアは翔平たちの方を振り返る。
「リクサーヌ、なにかに夢中になるといつもああなのよ。警報だけには反応するんだけどね。行ってみましょ」
そしてリクサーヌの方へと歩み出す。翔平たちもついていく。
「ははぁ、なるほどねぇ」
近づくと、リクサーヌは頷きながらなにかに感心したような声をあげていた。
「リクサーヌってば」
フレイアが後ろからポンと肩に手を載せる。
「わっ!? だれ!?」
「あたしよ。呼んでも気付かないんだもの」
「あぁ、フレイアか。どうしたの?」
「あ、宇宙服が……」
翔平がリクサーヌの手元を覗くと、宇宙服の生命維持装置が分解されてしまっているのが見えた。
「あ、あぁ、構造が気になったからひとつは分解させてもらっちゃった。大丈夫、ちゃんと元通りにできるから。でもすごい仕組みだね。空気を供給するのにこんな大きな装置が必要なんて。エアカーテンの原理ができる前はこういう仕組みだったのかって思ったよ。それに外気を完全に遮断するのにこんなに厚手なんだね。ナノスキン技術がないとこうも大がかりなんだって思ったよ」
リクサーヌは目を輝かせながら翔平にそんなことを言ってくる。
「やっぱり、オッパリオンの人から見ると地球の技術って遅れているの?」
奈菜が尋ねるとリクサーヌはためらわずに頷く。
「うん。博物館にあるようなものだね、残念ながら。でも理論と方向性は正しい、正しいっていうかオッパリオン星系のものと同じだから、行く行くはオッパリオンと同じような発展をするんだと思うよ。これだけ大がかりな装置を使ってでも宇宙に出るっていう精神も大事だと思うし。地球って言うんだっけ? そこの文化や挑戦してる科学者、技術者たちは素晴らしい。敬意を表したくなるね」
リクサーヌは楽しそうに話す。
「そうだ、いいものを見せてもらったお礼にわたしたちの機動兵器を紹介するよ。いいでしょフレイア?」
「いいんじゃない? ショウヘイたちから情報が漏れることもないだろうし」
「やったっ。じゃあこっちへ来て」
リクサーヌはやはり楽しそうに機動兵器の固定されているハンガーの方へと走っていく。
翔平たちもそれについていく。
「まずはこの機体」
リクサーヌは赤い機動兵器の足下に立ち、上を見上げた。
それは翔平たちをステーションまで迎えに来た、フレイアが乗っていた機体だった。
「これはフレイアの?」
「そうね。あたしの機体よ」
「ウィルギヌス型に部類される機動兵器でね。名前はシェアトス。これはフレイア機って呼ばれてるカスタム機だよ。シェアトスはオッパリオンの誇る高性能機ウィルギヌスの量産モデルで、性能はウィルギヌスとほぼ同一なんだ。しかも搭載されている母乳機関はZリーヌンス対応がされていて、Zリーヌンスを受けて出力が上がっても大丈夫なようになってるんだって」
「へぇ……」
「加速性、機動性はオッパリオンでもトップクラスの性能なんだ。まさに、最新鋭機っていうのに相応しい感じ。クァードの機動兵器は全部このシェアトスだよ。カラーリングや装備は個人個人で変わってるけど、基本は同じだね」
「それで色が違うのか」
「うん。識別にも役立つしね。その辺りの改造は自由が認められているんだ。フレイアの機体は長剣とライフルが装備されてるよ。シュレンの機体は紫で大型ランチャー、リアリィは水色で長剣がふたつ。リアリィは接近戦専門なんだ。攻撃部隊の中でも機動兵器を相手にする役割って感じかな。シュレンは対艦が得意だし、フレイアはなんでもできる。ね、フレイア?」
「ふふ、ありがとうリクサーヌ」
「それで――こっちがわたしの機体」
リクサーヌはタタッと走り、深い青の機体の前に立って両手を広げた。
「シェアトス、リクサーヌ機。わたしはパイロットになってそんなに長いわけじゃないんだけど、クァード隊に配属されてカラーリングは好きにしていいって言われたんだ。使う武器は槍斧とサブマシンガンだよ。体を張って敵機を食い止めるのが任務だから、攻撃隊の三機と比べると少しだけ装甲が強化されてるんだ」
「なるほど……」
リクサーヌ機は先ほど見たフレイア機に比べ、大柄のように見えたのはそういう理由だった。
武器は壁にかけられているので持ってはいなかったが、大きな武器が用意されていた。
「装甲が厚いと言っても遅いわけじゃないんだ。シェアトスの出力は余剰出力が十分にあるから重装甲にしても帝国の機動兵器よりも俊敏なのが特徴だよ。当然、重い武器を使ってもそれは変わらない」
少し早口で語るリクサーヌはどこか誇らしげだった。
「レマスの機体も同じようなカスタムがしてある重装型だね。レマスは槍と盾を使うんだ。突進攻撃もできるだけの出力があるから攻撃力は強力だよ。データ上では前にスタティアが交戦した大型機動兵器にだって対抗できるんだ」
「大型機動兵器にもか。それはすごいな」
翔平は前に戦った大型機動兵器のことを思い出し、それに対応された機体ができていることに関心した。
「――という感じで、クァードの機動兵器は五機とも基本的に同じなんだ。だから整備もしやすいに、損傷が出た時の部品も共有できるからメンテナンス性にも優れてる。わたしたちはいつでも素早く、万全の体制で出撃できるようになってる」
そう聞くと、どこか砕けた雰囲気のあるフレイアたちも、選ばれた精鋭部隊のように思えてきた。
クァードも最前線で任務に就く、精鋭の艦なのだと。
「リクサーヌ、詳しいでしょう? 元々は技術系の志願だったんだけど、適正試験でパイロット適正が出てね。それでパイロットになったんだけど、今でも整備とかを手伝ったりしてるのよ」
「実際に使ってる人の意見は貴重でしょう? 技術面を知ることは新しい戦術のヒントになるかも知れないし」
リクサーヌは終始笑顔だった。
「そう聞くと、クァード隊の機動兵器はもう敵なしって感じがするな」
翔平がそう言うと、フレイアは微笑み、リクサーヌは頷いた。
――が。
「それがそうでもないんだな」
「え?」
不意に頭上からした声に、翔平は思わず上を見上げた。
次回更新もお楽しみに!!
次回は一体何が待ち受けるのか、それはYOMにもわかりません!!
新たなる冒険を共に楽しんで頂ければと思います。
相変わらず、評価・レビュー・感想・ブクマお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願い致します。
皆さんの応援がスケキヨ&YOMの明日を作る!!




