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宇宙艦隊オッパリオン  作者: 桐生スケキヨとYOM
【第1部】【第1章】「オッパリオン篇」
22/487

宇宙艦隊オッパリオン019話(後編)「大型機動兵器バルフォングス」

挿絵(By みてみん)

アティ皇女を救うべく、海賊船を追いかけるスタティア組。

海賊船では大型機動兵器「バルフォングス」の出撃が始まる。

果たして、アーリア達オッパリオン人は、目の前に立ちはだかる「バルフォングス」を迎え撃つことができるのだろうか?

皇女アティの命運はいかに!!

19話後編始まります・・・。

 ◇ ◇ ◇


『艦橋より各機動兵器へ。敵艦より多数の高熱源体の発進を確認。機動兵器と思われます。各機警戒してください』

「翔平、了解しました」

 翔平が返事を返すと、後ろについていたシア機が前に出た。

 すると中央モニターには敵機を表すマーカーが複数表示される。距離は急速に近づいてきている。

「敵か……」

 翔平は手に汗がにじむのを感じつつも、操縦桿を握りしめた。

『こちらアーリア。ショウヘイはシア機と後方に控えて。敵の狙いは防衛だろうから、迂闊に手出ししなければ狙われないはずよ。マーチャ、セルシアはわたしを援護して。敵には構わずに突っ込むわ』

『マーチャ了解しました』

『セルシア了解です』

『提督、一機早いのが来る。今までのとは違う』

『なんですって?』

 シアの通信がした直後、目の前をビームが通り過ぎて行った。

『ショウヘイ、わたしと一緒に回避運動に。回避パターンはAIに任せて』

「わ、わかりました」

 シアからの指示に従い、翔平は遠距離からの攻撃に対して回避運動に入った。

「このビーム、相手の艦からなのか?」

『敵に早いのがいるわ。一機突出してくる――データにないやつね。各機警戒して、このビームの威力も普通じゃないわ』

 アーリアの言葉に、翔平も緊張感を高めた。

 モニターに表示されたマーカーのうちのひとつがものすごい勢いで距離を詰めてくる。後続の海賊機よりも明らかに速い。

『大きい! こいつ、普通の機動兵器じゃないわ!』

 先行していたアーリアが驚いた様子の通信を入れてきた。

 翔平もモニター中央に捕捉しているが、まだ姿は見えなかった。

『抜けた! シア!』

『了解』

 返事と同時にシア機が発砲するのが見える。

 強力なライフルから放たれたビームが一直線に飛び、マーカー上の敵機を捕らえた。

「当たった!?」

 翔平は思わず声を上げた。

『弾かれた? わたしの攻撃が?』

 シアは意外な様子でそう応じた。

『ミルキィフィールドが見えたわ。この機体、強い力を持っているようね。気をつけて』

『こちらグラヴィス、こいつはあたしらに任せて提督は海賊艦に向かってください』

『ありがとうグラヴィス、お願い――え!?』

「なんだっ!?」

 突進してきた機体は正面から突如現れ、ゼータリオンの脇を抜けて行った。

 一瞬見えたその姿は人型ではなく、異形の姿をしていた。

「なんだ今の……カニみたいな形をしていたぞ」

『スタティア、今データを送ったわ。解析をお願い。わたしもはじめて見る機体よ、今の』

 それはアーリアも見たことがない姿をしているらしかった。

 翔平は機体を旋回させ、後方へと抜けて行ったカニのような機体を再び正面に捕らえた。

 するとカニも向きを変えたらしく、再びこちらへと向かってくる軌道を描いている。

 シア機がすぐに前に入り、射撃をはじめる。

『こちらスタティア、データ照合に一致する機体はありません。おそらくは新型と思われます。通常の帝国の機動兵器の三倍近い速度を出しています。警戒してください』

『狙いはスタティア……いえ……まさか!? ショウヘイ! 回避運動に入って!』

 叫びのようなアーリアの声に応じ、翔平は機体を上に加速させた。

『アリシャ、メーティア、こいつの狙いはゼータリオンだ! 守れ!』

 グラヴィスの声がした直後、翔平の目の前に敵機が追いついた。

 中央の体を挟んで巨大なツメのような腕を持っている。全体の大きさはゼータリオンの倍以上はある巨体だった。

「くそ!」

 翔平は持っている大剣を振り上げ、ツメめがけて振り払った――が、大剣は弾かれ、手に鈍い感触が返ってくるだけだった。

「堅いのか!?」

 すると大型の機動兵器は加速し、視界の外へと姿を消した。

「消えた!? どこだ!?」

 ゼータリオンのとなりをグラヴィス機たちが抜けていく。

 消えた大型機動兵器はゼータリオンの背後に回っている。

 慌ててゼータリオンを振り向かせると、モニターには通信回線を開く要請が表示されていた。

「通信? こんな時に誰から?」

 翔平が通信を繋ぐ意志を持つと、回線は自動で開かれた。そして聞こえてきた声は――。

『アーッハハハ! 聞こえるかこいつのパイロットぉ!』

 聞き慣れない男の声だった。

「だ、誰だ!?」

『ショウヘイ、敵の声よ』

 シアが短く応じる。

「敵の!?」

『おまえが未知の力なんだってなぁ! いただかせてもらうぜ、このバルフォングスでなぁ!』

『戦闘中に通信を入れてくるとかふざけてるのか!』

『おおっとぉ!』

 グラヴィス機がタックルを仕掛けるが、大型機は大型機に似合わぬ俊敏さでそれを回避する。

 そこへアリシャ機、メーティア機が追撃を仕掛ける。

『こいつを並の機動兵器と思うなよメルクコア!』

 大型機――バルフォングスは急加速して追撃を回避し、ツメの中央にあるビーム砲で反撃をしてきた。

『ミィアルーンより機動兵器各機、敵は試験開発中の大型機動兵器だ。帝国では前々から理論はあったのだが、まさか実用レベルで完成させていたとは……』

『どういう兵器なんだ博士?』

 グラヴィスが聞く。

『母乳転換炉は母乳機関と同じで人型が一番エネルギー効率がいい。そこで、人型の機動兵器に人型ではない別の兵装を付け、機動力と装甲を強化させるという案があったんだ。それがそいつだろう』

『めちゃくちゃな機体だな!』

『おそらくは複数の母乳転換炉を搭載しているはずだ。出力が大きいので燃費は悪いだろうから、長時間の稼働はできないはずだ』

『とは言え長期戦に持ち込んでたら敵の増援も到着しちまう……』

 グラヴィスが言う通り、海賊艦の合流が近い。アーリアとしてはその合流前に皇女を奪還する作戦だった。

『おらおらっ! なにジッとしてんだーっ!』

 バルフォングスは旋回し、再びゼータリオンめがけて突進を仕掛けてくる。

 正面からシア機による射撃が当たるが、ミルキィフィールドがそれを弾いている。

『こいつのフィールドはちょっと頑丈でなぁ!』

『わたしが止めます!』

 大盾を装備したアリシャ機がゼータリオンとバルフォングスの間に割って入った。

『アリシャ! やめろ!』

『出力はこっちの方が上のはず、パワー負けなんて!』

『そう思ってるのは今までの話だぜぇ!』

 バルフォングスは減速することなく大盾を構えるアリシャ機に突進し、アリシャ機を弾いてしまった。

『きゃあああっ!?』

『アリシャ!』

 迫るバルフォングスに対し、翔平は正面から逃れようとゼータリオンを加速させる。

『素人みたいな動きだなおまえ!』

「なんだって!? うわっ!?」

 逃げたはずが、再び背後に回り込まれていた。

『機体の性能がよくったってその動きじゃなぁ!』

「ぐわっ!」

 直後、ゼータリオンのコクピットに衝撃が走った。バルフォングスのツメがゼータリオンに叩き付けられていた。

 激しい振動に見舞われ、翔平は一瞬平衡感覚を失う。

『ショウヘイ! 動いて!』

 シアにそう呼びかけられるも、どう動けばいいのか咄嗟にはわからなくなってしまっていた。

『おらよぉっ!』

「ぐっ!?」

 ゼータリオンの動きが止まった瞬間を狙い、バルフォングスのツメがゼータリオンを捕らえた。

 ゼータリオンのコクピットには警告音が鳴り響く。

「な、なんだっ!? 掴まったのか!?」

 コクピットには強烈な負荷がかかり、敵味方のマーカーが激しく動き回っている。

 バルフォングスはゼータリオンを掴んだまま、追撃をかわしていた。

「くっ、ゼータリオン……動けぇっ!」

 ツメを解こうと操縦桿を握るも、閉じられたツメはびくともしなかった。

「な、なんだ……どうしてパワーが上がらない……!?」

『未知のエネルギーとやらもそう都合よくは動いてくれないみたいだなぁ! えぇ?』

「ふざけるな……!」

『んん?』

 ここで捕まるわけにはいかない――そう強く意識するとゼータリオンのパワーゲージが上昇を見せはじめる。

 びくともしなかったバルフォングスのツメが軋みながら、かすかに動きはじめる。

『おっと、こいつはすげぇや! だがな――こいつには耐えられないだろう!』

「なに――ぐがっ!?」

 飛び回っていたバルフォングスは減速することなく、近くに浮遊していた岩石にゼータリオンを叩き付けた。

 岩石は砕け、ゼータリオンを激しい衝撃が襲う。

『ショウヘイ! 応答して! ショウヘイ!』

「う……く……あっ……」

 オッパリオン製の服とコクピットの慣性制御でも抑えきれない衝撃が翔平の脳を揺さぶり、身体にダメージを与えていた。

 そこへバルフォングスは急加速をかけたことで、さらに負荷がかかる。

「うっ……うぅ……」

 そして翔平はそのまま意識を失ってしまった。

『はっ、大人しくなりやがったか。しかしあれでもびくともしないなんて、この機体は化け物じみやがる……。こちらマシウス、目的のものは確保したぜ。燃料があやしくなってきたんで一度帰投する』

『ショウヘイ! 返事をしなさい!』

 遠くでアーリアの声が聞こえたような気がするも、翔平に体を動かす力を出すことはできなかった。


 ◇ ◇ ◇


『アーリア、ゼータリオンが敵に捕縛されたわ』

 アーリア機のコクピットに、シアから端的な通信が入った。

「例の新型ね。こちらでなんとかしてみる」

 そうは言ったものの、アーリアも敵の反撃を受けて海賊艦に取り付けないでいた。

 そこへ来てのこの知らせに、アーリアは若干の焦りを覚えた。

「マーチャ、セルシア、後ろからくる新型に仕掛けるわ! ゼータリオンを放してもらいます!」

『了解!』

『了解しました!』

 母艦へと一直線に向かうバルフォングスのマーカーを追い、アーリア機たちが向きを変える――が、敵の機動兵器たちがその前に立ちはだかる。

「まったくわたしの邪魔ばかりして……!」

 つかず離れず時間を稼ぐような戦い方ばかりする相手にアーリアもいらだちを隠しきれないでいた。

 しかし敵も巧みで小競り合いはするもののパワー勝負は避けて来ている。オッパリオンとの戦いに慣れた戦い方だった。

『提督、例の新型が来ます!』

 セルシアの声がコクピットに響く。

「止めるわ! 進路を割って!」

『了解!』

 バルフォングスはアーリア機たちに構うことなく接近してきた。海賊機たちがその進路から下がるものの、アーリアたちは進路上に陣取った。

「ウィルギヌス、リミッター解除! 全力で掴まえる!」

『了解、出力リミッター解除します』

 AIの応答の直後、アーリアは乳頭部から母乳を搾られる感覚がした。

 母乳機関の出力を解放したことで、母乳を求められたからだ。

 それはセルシア機の中でも同じことが起こっていた。

「止まれぇーっ!」

 接近してくるバルフォングスにアーリア機とセルシア機がしがみついた。

 二機がスラスターを吹かし上げるも、バルフォングスの勢いが止まらない。

「な、なんてパワーなの!?」

『言ったろう! こいつは並の機動兵器じゃないんだよ!』

「だからって……そっちの思うようには!」

『相手をしてやりたいのは山々なんだがこっちにも都合ってのがあってな! ここでおさらばだ!』

「なっ……うくっ!?」

『きゃあっ!?』

 バルフォングスは鋭角に旋回し、遠心力を利用してアーリア機とセルシア機を引き剥がした。

『はっはははは! じゃあなメルクコア!』

 二機を振りほどいたバルフォングスはさらに急加速をかけ、海賊艦へと一直線に向かっていった。

『提督、セルシア、大丈夫ですか?』

 マーチャから通信が入る。

「大丈夫よ。敵艦の合流まであとどれくらい?」

『もう間もなく主砲距離に入るようです』

「わかったわ。わたしはこのままゼータリオンを追いかけます。マーチャとセルシアは外で援護して。グラヴィス、防衛隊はスタティアの防衛に回って。敵艦の増援が来るとまずいわ」

『でも提督ひとりじゃ――』

「大丈夫、なんとかするわ。とにかく時間がないの。合流前に皇女とショウヘイを連れ戻します!」

『あっ、て、提督!』

 言うが速いか、アーリア機はバルフォングスが向かった海賊艦へと向かっていった。

 海賊機が慌てて後を追おうが、アーリア機は速かった。その後をセルシア機とマーチャ機が追う。

「皇女もショウヘイも……奪わせない……!」

 アーリアはひとりコクピットで唇を噛みしめていた。


次回は水曜日更新予定。


「宇宙艦隊オッパリオン」をご覧頂き誠にありがとうございます。

小説家になろうの機能の評価とレビューの方も、お時間御座いましたら何卒宜しくお願い致します。

読者の皆様の声が、レビューが、評価が、「宇宙艦隊オッパリオン」の明日をつくる!!

面白い作品に仕上げていく為にも、些細な事でも気楽にレビュー頂けますと幸いです。

スケキヨとYOM、引き続き精進して参る所存です!!

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