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激昂

食堂に着くとアンナとリーゼ、メドラウトにキッシュも揃っていた。


「こっちですよ!太助さん」


アンナが大きな声で呼んでいる。良かった機嫌が直ったようだ。鈴木は椅子に腰掛け皆の顔を順番に見回す。


「体調は大丈夫ですか?」


「アポロンに着いてから、連戦に次ぐ連戦で疲れてしまったんですわ。自重なさって」


「太助、無理はするなよ。我が国の兵だけでも十分防衛出来るからな」


「太助さん、冒険者は身体が資本!いっぱい食べましょう」


全員から温かい言葉を貰い鈴木は心の中が暖かくなるのを感じた。朝食はパンにシナモンを塗してミルクを飲んだ、1日断食のせいで少しお腹がビックリした様だが支障は無い。


「さて今日はどうなるかな?」


「魔王軍も大分消耗しているはずです、そろそろ退いてくれませんかね」


キッシュの問いにアンナが希望を漏らす。


「魔王の一人や二人倒さないと今回の遠征軍は退けられないでしょうね」


「なら闇討ち致します?寝ているところを奇襲して陣営を焼き払いませんこと」


メドラウトとリーゼが物騒な話をしている。シナモンを塗した美味しいパンを頬張りながら、鈴木はヤンヤヤンヤ言っている仲間たちの発言を聞いていた。朝食を食べ終えると一旦解散して、自分達のゲストルームへとそれぞれ戻った。今日は魔王軍も朝はゆっくりしたいのかなと思った矢先、城下が騒がしくなってきた。


「確認して参ります」


お付きの護衛の人が部屋を出て行った。鈴木は直ぐに戦闘に巻き込まれる予感がしたので、護衛が戻る前に革鎧を着て手袋をして、ミハイルを帯刀すると深呼吸した。


「勇者様、どうやら魔王軍からの奇襲のようです!」


「状況は?」


「南の街が集中攻撃されているようです」


「城壁が破られたんですか?」


「いえ、魔王軍は投石機にフライバグを載せて射出しているようです。また空中から魔王軍空軍部隊が、亜人や魔物を投下していて、その地区を担当している部隊が交戦し乱戦になっているようです」


「すぐ助けに行きましょう!」


鈴木は護衛を引き連れ仲間の元へと向かい、黎明の旅人を城から連れ出すと南の地区に急行した。雨が降り出し戦場と化した街は阿鼻叫喚の渦中にあった。現場に駆けつけた時には、ほとんどの守備兵が殺され無力な一般市民にも、殺戮と略奪の快楽に溺れる魔王軍急襲部隊が牙を剥く。家族を助けようとして殺された父親、襲われる母親、それを見て只々泣き叫ぶ子どもの姿を見て、鈴木は人生で感じた事の無い激情に駆られた。


「てめぇらー、そこを動くんじゃねーぞ!!」


鈴木の怒りの咆哮が戦場に響き渡る。一瞬魔王軍の動きが止まり黎明の旅人にその視線が集中すると、鈴木は魔王軍へと突撃を開始した。


「仕方ない人、何故奇襲のアドバンテージを自分から捨てるのか理解出来ませんわ」


リーゼが呆れながら鈴木に続く。


「さぁ悪人共め、我が槍を沢山馳走してやる、死にたい奴からかかって来い」


メドラウトが鈴木とリーゼの後を追う。


「許せない、あんな子どもまで。この代償は高くつきますよ!」


無残にも殺された亜人族の子どもの亡骸の近くには、刺繍の髪飾りが散乱していた。血の海に浮かぶ遺体を見て、アンナは涙ながらに怒りを露わにした。アポロンの援軍が現れたものの少数なので、魔王軍のほとんどが略奪行為を継続し、黎明の旅人の近くにいた兵士達が、面倒臭そうに迎撃態勢をとった。


「邪魔だどけ!」


飛びかかって来るフライバグをミハイルで斬り叩き落とす。鈴木が通った道をなぞる様にフライバグの死骸が落ちていた。


「何だお前等?自殺志願者か?」


「女がいるぞ!しかもかなり良い女だ」


魔王軍の兵士の卑しい視線が黎明の旅人の女性陣に向けられる。


「あの世で後悔しなさい、フレイムハリケーン!」


アンナの風魔法と火魔法の組み合わせによる混合魔法で前衛の露払いをする。魔王軍の略奪者共が尽く焼き払われ数秒経たない内に消炭と化した。


「おおーー!」


鈴木はミハイルを力一杯振り抜くと、魔王軍の兵士を一刀の元に斬り伏せた。ここでようやく事の重大さに気付いた、魔王軍急襲部隊は略奪行為を止め、戦闘態勢に入るが時すでに遅し。アンナの魔法で前衛を消し飛ばされ、リーゼとメドラウトにゴリゴリに両翼を削られ、般若の様な顔をした男が、次々と仲間の息の根を止め近づいて来る。


「何なんだコイツ等?」


「数では圧倒的に有利なんだ、一気にかかればこっちのもんだ。怯むな、かかれ!」


魔王軍急襲部隊の司令官らしき男が指揮を執り人海戦術で押し切ろうとしたが、寧ろ黎明の旅人にぶつかった兵士から、おろしですり潰されていく様に、軍隊の陣形が消えていき死体を晒した。


「たっ助けてくれ、俺は魔王様のお気に入りで人質にすれば白金貨何枚かにはなる。どうだ一生遊んで暮らせるぞ」


急襲部隊の隊長が命乞いをしている様だが、鈴木の耳には聞こえていなかった、怒りに我を忘れ目の前にいる敵を、如何にして屠るかそれだけを考えていた。


「クソがー!死ねぃ」


命乞いが通じないと見るや反撃に転じ攻撃を仕掛けるが、鈴木が紙一重で躱しミハイルの刃を返すと、逆袈裟斬りで急襲部隊の隊長は股から頭まで一刀両断された。真っ二つに切り離された隊長の姿を目の当たりにした、魔王軍の兵士は狼狽したが、鈴木は構わず黙々と狼藉者を成敗するのであった。

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