第14話 アラバスの町
『お客さん、見えてきましたよアラバスの町が』
辺りが薄暗くなるころ、俺達はアラバスの町へ到着した。新たな町への期待で歓喜が走る。エルドラのように石壁で町が囲われており高さがある。
『や~っと着いたねクオン』
『俺は結構楽しくて早く感じたよ』
『さってと、まず盗賊引き渡さないとね、御者さん門兵さんに説明して貰って良いですか?』
『はい、しばらくお待ちを』
俺達は盗賊の説明を受けたが、このルートでは盗賊は出たことがないらしく、護衛も居なかったため御者さんには何度もお礼を言われた。お陰で乗合馬車代は無料になった。
御者さんが門兵に盗賊を引き渡し、俺にカードを渡してきた、どうやら盗賊捕獲の報酬が後日出るそうだカードと引き換えらしい、聞くと刑務所のようなところがあり、犯罪奴隷になるか強制労働になるらしい。
ちなみに盗賊に刑期などは無く死ぬまで扱き使われるらしい。まあ自業自得だが。
俺達とロアさんは身分証明書のギルドカードを門兵に見せ、アラバスの町へ入る。木造の建物に、ちらほらとレンガ造も見受けられる街並みだ。
『ロアさん色々と、ありがとうございました』
『また、どこかで会いましょうね うふふ』
『ありがとね、ロアお姉さん』
『も~ ミュウちゃん可愛いんだから』
ミュウがロアさんに正面からハグされ、ムギュっとされる。
『ロアお姉さん く くるし~』
『うふふ またね、お二人とも頑張りなさい』
俺達は丁寧にお辞儀をしながら、ロアさんと別れ宿屋を探す。
私が目的を持って接触した事に気づいているわね、しかも二人共!なんて感の良さ、そしてあの実力!まだまだ弱いけどベクター様の言う通り面白いわ、私も是非お友達になって貰っちゃお。
私が引かれるのは才能!ミュウちゃんも凄いけど、クオン君は底が見えない!いえ 分からないと言った方が良いかしら、まさに見えない原石。成長が楽しみね うふふ
◇ ◇ ◇
『しかし、ロアさん何者なんだろうね?』
『そして私達に何の用だったんだろうね?でしょ?』
『あはは 流石ミュウ、でも敵じゃないって気がするよ』
『クオンがそう感じるなら敵じゃないわ』
『課題って言うプレゼントも貰ったし、お互い頑張ろう』
『は~い んふふ』
『あっ あれじゃない宿屋』
『聞いてみるよ』
『すみません今日、泊まりたいのですが2部屋開いてますか?』
『今日は客が多くてね2人部屋しか開いてないね~』
『う~ん、他の宿屋探そうか?』
『もう時間も遅いし、良いわよ2人部屋でも んふふ 信じてるわ♪』
『確かに時間も遅いしね、ミュウが良いなら信じられとこうかな』
『じゃ2人部屋1泊お願いします』
『はい、ではこちらへどうぞ』
俺達は2階の部屋へ案内され、荷物を下ろす料金は銀貨3枚で先払いだった。
直ぐに食事が出るらしく1階にある飲食店に向かう。
出されたのは鳥料理でかなりボリュームがあるが時間が遅かったこともあり、お腹が減っていたことも手伝い美味しく全部平らげた、味は結構淡泊でサムゲタンに近かった。
乾杯用のワインを注文し部屋へ持っていく。テーブルはあるが椅子がないためベッドを椅子がわりにしてワインを注ぐ。
『では新しい町を祝い、カンパーイ』
俺達はワインで乾杯し、明日の相談をする。
『とりあえず、馬車作ってる鍛冶屋と良い弓探そうか、ミュウなら魔法用杖を買うのも良いかもね』
『う~んそうね、とりあえず色々見たいかな』
『何処に売ってるのか分からないけど、属性魔石も欲しーよね?』
『なるほど、持ってない属性だよね、確かに欲しい』
『ロアさんに貰ってから、ちょこちょこ練習してるけど、ほらもう結構水作れるわよ』
ミュウは水の魔石を手に握りコップの上で水を作る。ちょろちょろとコップに水が溜まり、すぐに満タンになる。
『お~ 凄いじゃない、どうやら水属性も適応してるっぽいね』
『う~ん、たぶん? んふふ』
【ミュウが<水属性>を習得しました。】
『えっ は 早い』
『きゃー やったわ、わーい♪』
『ロアさん早くても2日掛かるって言ってたのに、凄いよミュウ』
『うん、でもこの水の魔石のお陰よ、すっごいイメージしやすいもの』
『なるほど、こりゃー他の属性の魔石も、なんとしても探さないとね』
『うんうん、次は風属性がほしいな~ んふふ 楽しみ』
『とりあえず<水属性>習得おめでとう!』
俺はワインを片手に乾杯する。また1つ魔法属性を覚えたことを喜びあう。
『ありがとう、これでもう水に困ることはないわね』
『うん、旅をするにしても非常に助かるよ』
『後は俺も<ファイアウォール>練習しよう。<ウォーターウォール>も出来るかな?』
『出来るはずよ、水の壁なら視界が取れて盾に良いかもね』
『でも【プラス】の効果で、私が覚えても使えるようになるよ?』
『う~ん、まだ仮説なんだけどミュウ、水属性習得するの早いと思わなかった?』
『うん、私に水属性の適正があったからかな~っと』
『それもあるけど、たぶんスキル経験値もプラスされてるんじゃないかな、つまり俺の水属性経験値とミュウさんのが共有でプラスされてるとか』
『錬金術スキル覚えたときも思ったんだけど、早かったのも、二人でやってたからじゃないかな』
『あ~ なるほどね、しかし【プラス】飛んでもないわね』
『全ての習得速度も二人分なのね、こりゃ誰にも言えないわ』
ミュウは呆れ顔で俺に言う。
そうこう話をする内に眠くなって、それぞれのベッドで眠りにつく、お酒のせいもあってそんなに照れずにすんだ。
『んっ キョロキョロ、あっ そっかアラバスの町へ来たんだった』
『クオン君は・・・まだ寝てる・・・かな』
『う~ん改めて見ると、やっぱり可愛らしい顔してるわね、ほっぺ突いちゃお♪』
ツンツン んふふ ツンツン!
『ん んあ』
『んふふ おはよ、クオン君』
『おはよー ミュウ』
『そーだ、ミュウ見てて』
『んっ どーかしたの?』
俺は手洗い用の桶を持ってきて桶の上で両手を顔につける、すると両手から水が溢れてきて普通に顔を洗う。
『あはは なーるほどね、んふふ も~ 何かと思ったら』
『あはは <クリーン>も良いけど、やっぱ水で顔洗うとスッキリするんだよ』
『でも今更ながら、本当に全て共有なのね~』
『でわでわ、私も~ パチャパチャ プハー気持ち良い~ クオン君、タオルタオル~』
『はいはい』
『うん、気持ち良いわ♪』
『氷属性覚えたら、冷たい水で顔を洗えます!!!』
『あはは どんな野望よ!でも、クオン君の野望のためにも頑張って覚えるわ』
『ありがとう あはは』
俺達は朝から楽しく会話をし、簡単に朝食を済ませてから、のんびりと鍛冶屋に向かう。
『ん~っと、ここかな』
そこには火を扱う鍛冶屋らしく、レンガ造平屋建の建物で看板には鍛冶屋としか書いてない。
『もっともっと頑張りますので、どうかお願いします』
鍛冶屋の入口から、なにか大声で頼み事をしている人がいる。
『お願します、俺は世界一の鍛冶屋に成らないといけないんです』
そこには子供?いや小柄の男性が、土下座をして頼み込んでいるようだ。
『おい、坊主なんども見てやっただろ?もっと修行してから出直してこい』
『僕は小さな頃から15歳の今まで必死に練習してきました、才能がないのは認めます、でも僕はどうしても鍛冶屋になりたいんです』
『どうか、お願いします僕に鍛冶屋として生きる術を御指導下さい』
『なんでもします、どんな事でもします、決して逆らいません、どうか、どうか』
小柄な男性の悲痛なまでの願いが、こちらまで響いてくる。
『なぁ坊主、何度も見てやったがお前にはなにか大事なものが足りねえ』
『別に才能なんてものは必要ねえ!気概もある、努力も惜しまねえ、しかしだ、物に命を吹き込む時お前には何かが抑え込まれている、それが分からねえ限り鈍らしか出来ねえんだよ』
『悪いことは言わねえ、職を変えるか修行しなおしてこい』
『僕は何度も同じことを言われました。死に物狂いで足りないものを探し、血が滲むまで練習しました』
『でも、でも、分からないんです、どうしてもどうしても、どうしたら良いのか?なにが足りないのか?』
『お願いします、どうか、どうか、御指導下さい』
『しつこい奴だな、それなら山へ行って黒鉄取って来い、取ってきたら教えてやる』
『ほ 本当ですか!ありがとうございます、ありがとうございます、急いで取ってきます』
『あっ こらっ 待て』
小柄な男性はすごい勢いで店から出ていく。擦れ違いざまの一瞬だが俺とミュウが反応する。
『『ピリッ!!!』』
『えっ なにあの少年!なんなの?』
『ミュウも感じた? ふふ 俺も感じた、しかも2度目だ』
『んふふ 何か分からない・・・でも分かるわ、あの少年・・・何かあるわ』
『うん、簡単に説明すると、一度目にあの感覚を感じたのはミュウに初めて会ったときだよ』
『えっ それじゃ彼が?いえ、まだ候補ね んふふ』
『そう、まだ候補だね、でも見つけた』
俺とミュウが運命を感じてるとき、店の方から声が掛かる。
『おいっ お前達、ひょっとして冒険者か?』
『ええ、まだ新人ですがFランク冒険者です』
『丁度良い、ちと依頼したいのだが、なに小用だ礼は弾むぜ』
『お聞きしてから決めても良いかしら?』
『ああ、今出て行った坊主を護衛して欲しい、あんまりしつこいんで言っちまったが黒鉄は魔物が出る危険な鉱山でしか取れねえんだ』
『流石に諦めると思って言ったが、あの野郎迷わず走っていきやがった』
『あの坊主は俺の大事な師匠の子供でな、頼む』
『分かりました、でもお代は高くつきますよ?』
『ああ分かったよ、急いでくれ、あの坊主には俺の師匠の息子ってのは内緒だぞ』
『了解』
俺達は鉱山の場所を聞き、急いで向かう!