先生、夫婦喧嘩は犬も食わないって言いますけど、あれカラスなら食べますよね。
ただしイケメンに限るが有効な場所は、
意外と少ないよ 六月
――――――――――――――――――― tenth accident ――――――
5月上旬
5月中旬に控えた発表に向けて、
早速撮影の為のミーティングが始まろうとしていた。
学校行事ということもあり、
普段はHRで使用される時間を使ってのミーティング、
場所も1クラスを貸し切って行われる。
各担当者たちは、それぞれの班ごとに集まり話し合いや
作業に取り掛かっていた。
六月「あの、東条さん。なんで僕の隣に座っているのか尋ねても良いですか?」
僕はキャスト班の集まりに参加する為、
クラスの前方に座っていたのだけれど、
何故か監督の東條要様も、
僕が座った席の右隣にズン!と鎮座してしまわれていた。
東条「いつも通りの愚問ね。監督だからよ人無君。」
さり気無く脳みそを馬鹿にされた気がするけど、
ここは置いておくとして
六月「いや、撮影が開始してからなら分かるんだけど、
まだ撮影も始まってないし、原稿班とかの物語の練りを見たり、
営業班の指揮取りをしたり、やることは他にあるんじゃないかな。」
撮影する作品が決まったこともあり、
原稿班の人たちが監督である東条の所に、
ストーリーの相談や、
展開についての確認をしたくて意見を仰ぎに来るのだが。
「そうね。それで構わないわ。」の一点張りで、門前払いしている。
東条「それは君が気にすることではないわ。
人無君はせいぜい原稿があがるまでの間、
特にすることがなくて、
ぽかーんと上の空で集まりに参加する無力なキャストを、
演じていなさい。」
・・・ひどいよ! 事実だけど!というかそういう意味の
キャストじゃないから!
「2人とも仲が良いんだね。」
にっこりしながら、いつも笑顔な本吉さんが、
僕の左隣の席に着席する。
東条「メインヒロインの白雪姫役、本吉沙良さんね。
あなたも撮影が開始するまでは、
キャストとしての仕事がなくて大変ね。
ところで私は人無君と話があるから、
席を外して欲しいのだけれど」
この遠まわしな様な、直接的なお前あっちいけに流石の本吉さんも、
カチンと来たのか少し顔が引きつっている。
誰とでも仲良くする本吉さんのこんな表情を見れるのは、
中々珍しいことだ。
本吉「わ、私も六月君と久しぶりにお話ししようと思ったの、
同じキャスト同士、親睦を深めておいた方が演技をする時も、
良いんじゃないかな?ね、六月君?」
六月「あ、ああ、そうだね。本吉さんとはクラスも
全然被らなかったから久しぶりだしね。」
ニコニコしてるけど、しっかりと相手を捉えている本吉さんの目線と、
通常運転で目つきが悪い東条の目線が交差して、バチバチしてるよ・・・。
瑠衣「六月ー!こっち終わったよー!
一緒に駅前に出来た41アイスクリーム行くよ!」
また話がややこしくなりそうなのが来た。。。
坂下「旦那ー!編集班の打ち合わせ終わったぞー!
一緒に駅前のゲーセン行こうぜ!」
類は友を呼ぶって言うけど、
この場合は瑠衣は坂下を呼ぶだな・・・。
六月「まだ話合い終わってなくてさ、ちょっと待たせちゃうから
瑠衣と坂下で先に行っててよ。」
僕の言葉を聞いて、表情がパァっと明るくなる坂下。
散歩に連れて行って貰えることになった犬みたいだな。
坂下「旦那ぁ!!心の友よ!じゃあ吉川さん一緒に」
瑠衣「遠慮します。」
坂下「・・・・・・旦那ぁーーーー!」
よしよし、少し待ってるんだよポチ
「私は中学の時に、六月君と遊園地行ったんだけど
夜の観覧車なんか綺麗にライトアップされて、
凄いロマンチックな雰囲気だったなー。」
「ふん、中学生時代の遊園地なんて所詮子供の戯れだわ。
私なんてつい最近、二人でデデニーランドに行ってきたわ。
それ以降少し意識してしまって話しづらくなってしまった位よ。」
向こうは向こうで、張り合ってるし・・・
キーンコーンカーンコーン
鐘が鳴りHR時間の終了を知らせる。
レクリエーション期間中のHRは、自由解散制なので
鐘がなるまでに下校することも可能なのだが、
ほとんどの学生がこの鐘を目安に下校準備を開始する。
六月「じゃあ、鐘も鳴ったことだし帰ろうか。
瑠衣、夕飯もあるしそんなに量は食べられないからね。」
必死にアタックする坂下の攻撃を、
極振りされたスルースキルで回避していた瑠衣が、
言葉に反応した。
瑠衣「うん!量を食べられないってなると、
その、、、1つのアイスを・・・その2人で・・・とか?」
「私も行くわ!」
それまで本吉さんと、張り合っていた東条が喰い気味で参戦してきた。
アイスクリームはいつの時代も人気なのだ。
本吉「私も行こうかな。そこって新しく出来た所だよね?
興味あったんだぁ。」
本吉さんまで?!まずいこのままだと、男女比の関係でなんか、
僕が凄い軽い男みたいになる!
ポチ!ポチはどこだ!
坂下「・・・六月のどこが良いんだ・・・あんな奴、少し顔が良いだけの
陰湿キャラじゃないか・・・吉川さん・・・吉川さん・・・」
ポチ・・・お前飼い主に対する印象酷いな!
六月「一緒に行こうよ坂下。終わったあとメダルゲームするからさ。
瑠衣も連れていくし」
坂下の光が無くなった瞳に、希望の光を与える。
垂れさがっていた頭が徐々に上がって来た。
お帰りポチ
坂下「旦那・・・。旦那を信じていたぜ。
そうと決まったら美少女3人を連れていざ
41アイスクリームに突撃だぜ!」
ああ、少し顔がいいだけの陰湿キャラの僕を信じていてくれてありがとな坂下。
瑠衣「六月。私坂下君と一緒にゲーセンまで行くとは言ってないんだけど、
コインゲームのお金まで持ってきてないし。
でもこの前一緒にやったバズーカみたいなのが付いたコインゲームは、
面白かったよね六月!」
坂下「よ、吉川さん・・・」
六月「大丈夫。坂下が貯メダル3万枚あるから。」
坂下「だ、旦那ぁ?!!!」
先に準備を完了して、待っている東条と本吉さんが、
クラスの後方扉で、こちらを向きながら待っている。
東条「行くなら日が暮れない内に行きましょう。
5月と言っても夜になったら寒いわ。」
六月「ごめんごめん。今行くよ。」
東条とは以前としてデデニーランドでの一件を、
消化していないけれど、日常と時間は過ぎていくばかりだった。
次回「先生、八方美人な女性は油断ならないですよね。」
つづく




