The story of Seven Cities3 農業都市の隠された雪百合の園
帝国…正式名を《聖ルーマルコーランド帝都》建国から30年、長きにわたる【獣人種の連合王国】との戦争から解放され帝国領土として指定された小さな国々は時間と共に合併し合ったりして次第に帝都にも勝るとも劣らない7つの様々な特色を持つ都市として繁栄したのだった。
その中の一つ、《聖ルーマルコーランド帝都》より北東へ約250㎞、自然豊かな道が続くその先には辺り一面を覆いつくす牧歌的な田園や花畑、牧場がひろがっていたのである。そんな農畜産に囲まれた場所に立地するどこか自然と調和のとれたカラフルな配色が施された建物が並ぶ都市《農業都市アンダルハーグ》、片や一つ一つの建物の周りには庭のような広い敷地を有しているような立派な豪邸みたいになっており、片や細長い建物がぎゅうぎゅうに詰め込まれたような市街地のようなエリアがあったりと都会と自然が織り交ざったかのような都市だ。そんなのどかな街で住民たちは家畜達を引き連れ、旬の野菜を収穫し、花を手入れし、川のせせらぎを耳に温かい日差しを浴び汗水たらして働いていたのであった。気になる点としてはその働き手が男性よりも圧倒的に若くきれいな女性が多いという事だった。
「っそ、そんな!お許しくださいアルトお嬢様!!い、いえ!これはその何かの間違いです!!」
そんな街の中心部にある他の豪邸とは比べ物にならないほどだだっ広い庭の中にそびえ立つ城とも思えるほどの巨大な豪邸の中から、女性の悲鳴ともとれるかのような叫び声が外にも聞こえるくらいに響き渡った。
建物の中の吹き抜けの有る白を基調とした装飾の多い広いエントランスホール、その一角にある来客用と思われるテーブル席に座る肩に膨らみのある胸元が開いた純白の西洋ドレス、後ろ側がロングスカートにも見える純白の腰マントのついた前開きの純白のミニスカート、純白の腕抜きにロングハイヒールブーツを身に纏った祖人種の金髪ツインテール爆乳少女。そしてそんな彼女の周りには胸元の開いたメイド服姿の巨乳女性と、そんなメイド服の上にまるでデザインだけを重視したかのような装飾の多い軽装甲をつけた巨乳女性がそれぞれ数人ずつ立っており、そして座る少女の目の前には少女に負けず劣らずな煌びやかな装飾に包まれたドレスを着た巨乳の女性が倒れた椅子の傍で落ち着きなく騒いでいた。
「…これはもう決まり事よ。土地を含め貴方の家財は全て取り押さえるわ」
「そんな…私には養っていかなきゃならない旦那や子供達が何人もおりますわ!それに我がロスアード家はアンダルハーグ建国の時からずっと国に貢献してきた由緒正しき一族ですわ、それなのにこのような扱い…両親だけでなく先代の方々になんと説明すれば…お考え直し下さいアルト様!!」
「それもこれも全て貴方の撒いた種でしょう。もう話は終わり…さっさと出てってくれない?私この後お茶会したいの」
アルトと呼ばれた少女はつんけんな態度でテーブルに置かれたカップを口にする。そんな態度に我慢の限界を迎えた女性は怒りを露わにしてアルトに襲い掛かろうとするが、すかさず軽装甲をつけたメイド数名に取り押さえられ、暴れる彼女を取り押さえたまま玄関口の方へと姿を消した。その一部始終を見送ると空にしたカップをテーブルに置き、机に乱雑に置かれていた書類を手にすると、アルトの一番近くに立っていた軽装甲をつけたメイド服の精人種らしい横に長い耳のエルフ体型で、180㎝を超えるであろう高身長爆乳金髪ポニーテール女性がアルトから書類を受け取りながら二人でエントランスの奥へと歩き始めた
「お疲れ様ですお嬢様、一応こちらの方でアフターケアを含めた軍事借金制度を進めておきます。子供達は受け入れ先の教会の手配を、旦那様方はどうするか分かりませんが全員分の借家の準備を始めますね」
「よろしくメイア。それと没収した土地は」
「買い直しのために5年間は軍で維持…ですね。分かっていますよお嬢様」
「…ふん」
アルトはすこし不機嫌な様子を見せるとメイアと呼ばれたメイド服の女性はくすりと笑った。
「お嬢様は本当に素晴らしいお方です。まだ10歳という若さで経済に対してかなり寛容過ぎたお母様に代わりこのアンダルハーグの政策や経済を細かく、厳しく管理してくださいまして…まさしく建国者アリーチェ様のお孫様ですね」
「っべ、別に…全然凄い事なんか何もやってないわよ!そんなことより、お茶会の準備はもう出来てるのでしょうね」
「えぇ、ご友人方も既にお屋敷に到着しておりいつでも始められるばかりでございます」
「っちょ!もうみんな来てるの!?なんで早く言わないのよ馬鹿ッ!!」
そう言い残すとアルトは顔を真っ赤にしながらさらに建物の奥へと駆け出して行った。その様子をメイアは唖然…と言うほどではないが静かに見送りゆっくりと歩いて後を追う。長い廊下ですれ違うメイドたちはみな慌てたアルトの様子に驚いて、中にはメイアに理由を聞きにくるものもいた。だがその中に一人、違うことを聞くものがいた。
「あの…メイア様、西区画側の中庭にお客様が…」
「…む?分かった、すぐ行く……迷子か?」
向かっている方向から逸れて進み、外に出る扉を開けた先に広がる薔薇垣に囲まれた小さな中庭、その奥に見える大理石で出来てるかのような真っ白なガゼボのような屋根のあるテラス席まで続く石畳の道を歩いていくと、コンッコンッと軽いもの同士のぶつかる音が響く。音のする方に向かうとそこには立派な一本の樹木の横に立つ蒼い髪のショートツインテールの少女が、木に吊るされた木材に木刀で打ち込みをしていたのだ。
「誰かと思いましたら、リヴィア様でしたか」
「ひゃあっ!!?」
メイアが声をかけると少女は驚き叫び飛び上がりながら後ろを振り向く。余りの声の大きさにメイアまでビクッと目を見開き反応してしまい、しばらく冷静になるまでお互いに見合ってしまった。
「…な、なんだ…メイアさんか……、ってかごめんなさい!勝手にここまでお邪魔してしまって」
「い、いえ、ご自由にしていただいて構わないといったのはこちらですから気になさらないでください。それと、お嬢様はもう会場の方に向かわれましたがリヴィア様もご一緒に行かれませんか?」
「私は…私は、いいや。私なんか、まだアルトと一緒にいれるような、そんなレベルじゃないし…」
リヴィアと呼ばれた少女は振り向きなおし悔しそうにぎゅっと木刀を握りしめ、打ち込みを再開する。その様子をみたメイアは呆れたように溜息をつく。
「お嬢様がそのようなこと、気になさっていると」
「思ってないでしょうね、これっぽっちも…そんなこと分かってるわ」
「…失言でしたね。申し訳ございません。リヴィア様はお嬢様の事なら何でも知っていますわね」
「…っべ、別に…ちっさい頃からずっと一緒にいるから、なにかとアルトが私なんかに気にかけてくれたおかげだから。それなのに私からは何もしてあげれなくて…」
「おや?リヴィア様はお嬢様の事を愛していてリヴィア様の方から熱烈なアプローチをしていたと思っていたのですが違ったのですか?」
「っは?!はぁぁぁあああ!!??違うわよっっ!?っべべべべっべ別にそそそんなわけっっあぶぇっっ!?」
リヴィアが耳まで顔を真っ赤にしながら必死な反論をしようとした瞬間、浮き上がった木材がリヴィアのおでこに直撃した。その始終を見ていたメイアはくすくすと口元を手で隠しながら微笑んでいた。
「そんな…そんな、っべ、別にその、すすす好きか嫌いかで言ったらまぁちょっとは好きよりかなってくらいで、そのべ別にそのそんな愛しているとか、いやまぁ広い定義的に言えばもしかしたら間違いとかじゃくて、でもっ別に!そんな、そんなわけないでしょ!!」
「あらあら…そんな様子で大丈夫なのですか?お嬢様はこの《アンダルハーグ》のほぼ全ての実権と財力を握っているといっても過言ではないミルドレッド家の一人娘、まだ齢10歳でありながらも都市の政策に関与する政治能力、そして帝国美女コンテストで優勝経験もあるという美貌…当然ですが、恋敵はたくさんおりますよ」
「そ、れ、と。そーんなたくさんいるむっさい男の恋敵をぜーんぶ消し飛ばしちゃう。国衛兵爵最強ランキング10位をキープし続ける実力。はっきり言ってランキング外の私なんかじゃどう考えたって釣り合うわけないじゃない」
メイアの煽りに対ししゃがんだままおでこを手で擦りむすっとしたまま反論するリヴィア。
「…そもそも、帝国は同性での結婚はおろか同性での恋愛ですら禁止されているじゃない…、結局戦争のために帝国は人が増える事を望んでいるのにお遊びの恋愛なんかしてる場合じゃないってことでしょ。…同性な私じゃ最初っから可能性なんてなかったって話よ」
「…リヴィア様、それは…」
「……もういい、ちょっとだけお茶会に顔出して帰ることにするわ…。メイアさん勝手にこんなとこまでお邪魔させていただいてありがとね」
あきらかに苛立ちを見せながら木刀を困り顔のメイアに押し付けて歩き出す。その後をメイアが歩き二人で中庭から建物に戻ろうとすると突然その足が止まった。二人の視線の先には建物の窓越しに複数の人物が歩いていくのが見えた。全員がつなぎのような作業服に身を包み、顔が見えにくいほど深々と帽子をかぶった人達が20人程で歩いている。大きな建物であれば業者がいる事は決して異様な光景ではなかったが、2人は違和感のようなものを感じ取っていた。
「…ねぇメイアさん…あれって何の業者?お茶会の日であんな業者来てたことってなかったよね?」
「そうですね…おかしいですね。お嬢様がわざわざこの日に来てもらうなんてこと…」
不審に思う二人はその業者団体に悟られぬようにこっそりと、別の入口まで迂回してから建物に入った。建物の中は特に荒らされた形跡などもないが、先ほどまでいたはずのメイド達が誰一人として気配がなく静まり返っていたのだ…
二人の疑心はさらに強まり、急ぐ気持ちを抑えつつお互いに静かにし合いながら足音一つ注意して慎重に、且つ急いでお茶会の会場である建物の奥を目指した。会場の扉は開いたままで、会場の中に業者団体が入っているようだった。二人は扉の陰に隠れ中の会話を盗み聞きしていた。
「…いやーそれにしても、こんなにうまくいくとは思っていませんでしたねパド様」
「こら、まだ油断するんじゃないわよストロン号。それでトラッP、この後の計画は」
「ほいほい、えーっと…都市長娘のアルトを起こさないように気をつけながら業務用冷蔵庫に入れた…あ、と、は~…正面から堂々と出る。業者の格好をしているのだから周りを警戒しすぎない事、自分達はただ仕事してるだけですよ~って気持ちが大事…ですって」
「オッケー。それじゃあさっさとこの小生意気そうな小娘を攫って、堂々と帰れば~」
「「「任務達成幹部昇進給料アップで超ハッピーっ!」」」
「………っふっざけんじゃないわよっ!!」
ついに我慢の限界なのかリヴィアが扉を限界まで開き切って啖呵を切った。メイアもそんなリヴィアの後ろで静かに立っている。そんな二人の視線の先は20人もの業者達が次々と地面や机に倒れた人達の手足を縛り袋の中に入れていく様子だった。しかも倒れている人達…いわゆるお茶会に参加している人達はみな無抵抗でまるで眠っているかのようだ。
「…あら、おっかしぃわね~。この屋敷にいる人は私達の差し入れの睡眠薬クッキーで全員眠ってるって思っていたんだけど…まさかまだ食べてなかったとはね」
「まぁ正確にはあっしらというより全部当主様が準備してくれたものですけどね」
「お黙り!余計なことは言わなくて結構!…コホン、だとしてもたった二人で何が出来るのかしらね」
そう言うと一番口数の多い女性の従業員が突如として作業服を脱ぎ捨てる。その中からは赤いロングストレートの髪に豹のマスク、スレンダー体型にブロンドのハイレグに黒のゴムハイヒールに薄いゴムグローブという艶っぽい雰囲気をまき散らす女性、そして何よりもその身体から悪魔のような角と尻尾が生えているのだった。
「あんた…まさか魔人種!?」
「なるほど…近頃魔人種が最も多いと言われている国、オズランド帝国の先兵による拉致被害が各国で報告されていると聞いていましたが…まさかこのお屋敷で堂々と行われるとは、随分大胆な手口も使うのですね」
「そうよく知ってるじゃないの…こうなったらこの格好も必要ないわね!あんた達!派手に名乗っていくわよ!!」
そう言うと魔人種の女の両隣にいた男達も作業着を脱ぎ本性を現す。一人は緑のピッチリスーツを着て象のマスクをつけた天井に頭を擦り付けそうな3mもあるだろう巨漢の男。もう一人は赤のピッチリスーツを着て蝙蝠のマスクをつけたやたらガリガリの不健康そうな男だ。
「んが!巨人種とのハーフ、ストロン号!!」
「実は短編集と同じタイミングで執筆していたけど投稿タイミングを一月近くずらしたからせっかくだし名乗りシーンをわざわざ書き直ししているんです…あ、いたい!グーはやめてパド様…いてて、月人種とのハーフ、トラッP!!」
「このおバカ!そーゆー余計なことわざわざ書き足す必要ないでしょ!!筆者も本業で忙しいってのに…んんっ、美しすぎて全てのイケメンが私にく・ぎ・づ・け♡華麗なるハンター…祖人種とのハーフ、パ♡ド」
「文字数制限で俺の台詞短くされた…」
「贅沢言うんじゃないわよったく…我ら」「ノイスジー家に仕え」「魔人種の王様に忠誠を誓う」
「「「ノイスジー一味!!」」」
「さぁ~…、あんた達ぃ!やぁーっておしまい!!」
三人組が名乗りを終えると、残りの20名近くの作業員服を着た部下と思われる男達が一斉に脱ぎだす。その姿は精人種や翼人種、龍人種など様々な人種が居ながらもその全ての人の頭には悪魔のような角に尻尾までついていた。そして全員がナイフのような武器を取り出した。
「これは驚きました…全員が魔人種とのハーフですね」
「いってる場合メイアさん!!来るわよ!!」
リヴィアが剣を抜き構えるが、20人近いと言う人数の質量が一斉に襲い掛かり二人が一瞬にして押しつぶされる。
「…っま、分かっちゃいたけど一瞬だったわね。それじゃ動けなくなるまでぼっこぼこにした後そいつらも縛ってまとめて一緒に冷蔵庫にぶち込んで運び出すわよ」
「えー、そんなことしたらさらに重くなってつかれるじゃないですかー。パド様も運ぶの手伝ってくださいよー」
「こーんなか弱いレディに力仕事しろって言うのかい?」
「だっはっは、パド様レディってのは未成年までであってパド様の歳じゃあ未成年どころかそのば」
「だぁーっ!私は永遠の16歳!あんたはそんな核心的な事言うんじゃないのストロン号!!」
「でもこの世界基準で言えば16歳は成人済みで
どぉぉぉ———ん。三人組がつまらない会話をしている傍らで、20人もの部下の山が強い衝撃と共に吹き飛んだ。そこには尻もちをついているリヴィアとその前に立つ、まるで百合の花のような形状をした先端が螺旋状の突撃槍を持ったメイアが先ほどまでのメイドとしての雰囲気から一変しまるで歴戦の戦士のような風格で立っていた。
「リヴィア様、ここにいる敵のお相手は私にお任せくださいませ…貴女はお嬢様を、起こしてください」
「…わ、分かった」
それを伝えると再度メイアは槍を力強く構えその槍にエネルギーを充填させほのかに光り輝く。獣人種とのハーフである敵が素早く撹乱するように会場のテーブルの陰をすり抜けて近寄るが、メイアは的確に槍の一撃を放ち、机と机の隙間を走り抜ける獣人種を刺し貫いた。
「ぬぁー、パド様。あいつ俺達の中でも一番の機動力持ちだぞ!」
「ねぇちょっとちょっとぉ…あの女なんなのよ!」
「なにって…ミルドレッド家私有女性専用組織『雪百合』の隊長にして国衛兵爵ランキング36位のメイア・アルフレードですよ。ほらこのコーランド帝国雑誌に載ってる」
「持ってるならさっさとよこしなさいよこのおバカ!!ともかく、みんなでやっちまいなさーい!!」
パドがトラッPをグーで殴りつけて雑誌を奪いながら合図すると、部下たちは一斉に銃を抜き発砲する。だがその弾丸は突撃槍を盾のように構え防がれる。その隙に翼を持っている翼人種や龍人種、精人種などの敵が空中から回り込んできた。メイアは仕方ないとばかりに槍での防御をやめ銃弾の雨に身をさらされながら槍で上空の敵を薙ぎ払った。そしてひらりと走り出して銃弾の雨を掻い潜る。
「柱やテーブルを盾にしたいのですがここはお嬢様の大事なお屋敷、しかもお茶会の会場…あまり傷付けないでくださいませ」
メイアが急接近してきたことにより敵も銃を手離しナイフで応戦を始めた。そんな戦闘をしている間に、リヴィアは倒れた机の陰に隠れ誰にも気づかれないよう遠回りして会場の奥へ奥へと少しずつ向かっていった。
「…メイアさん、ありがとう…アルト、待ってて!」
こそこそとバレない様に進むリヴィアが周囲を探すと、視線の先に横たわる金髪ツインテールのアルトの姿がそこにはあった。
「いたっ!アルト!」
すぐさまリヴィアが走って駆け寄ると、そこにあったアルトの姿は近づいた途端にまるで幻だったかのように忽然と消えた。そして急に照明が消えたかのような薄暗さに見舞われ見上げると、リヴィアの真上に腕を振り上げるストロン号がいたのだ。
「きゃあっ!!」
ストロン号が振り下ろした腕を避けるべくリヴィアは咄嗟に転がって回避する。
「はぁ…はぁ…罠?」
「あーりゃまぁ、ストちゃんってばダメじゃない。だましたタイミングで捕まえないと」
ストロン号の陰からトラッPが姿を見せる。彼が手を叩くとさっきと同じ場所にアルトの姿がぼんやりと浮かび上がった。リヴィアが2人に剣を構えるが直後その剣に鞭が撒きつけられ引っ張られる。すぐにリヴィアは手放さないとばかりにしっかりと握り踏ん張る。その鞭の先にはパドが机の上から鞭を引っ張っていた。
「くっ…とられるか…」
「あら、随分生意気な小娘ね…拉致した後は私がたっぷり躾けてあげるわよ」
「ところでお嬢ちゃん、おいくつ?あっしねぇ14歳くらいがタイプなの。ぐふふ、あっしはパド様みたいな乱暴なことしないから、ねぇ~」
「えー、当主様にけんじょーして美味しいものもっと貰いてぇよ俺」
それぞれが勝手なことを言いながらリヴィアを取り囲む三人、剣を自由に振れずにじりじりとにじり寄るが、リヴィアはそんな三人には目もくれず警戒しながら目だけでアルトを探し続ける。
「黙り込んでんじゃないわよ!ストロン号、ぺっちゃんこにしておしまい!!」
パドが剣を奪おうと力いっぱい鞭を引っ張り、ストロン号が巨体でリヴィアに襲い掛かろうとした瞬間。パドに引っ張られて力負けしたリヴィアの身体は剣ごと宙を舞いストロン号を躱して、そのままパドの顔面を足蹴にして後ろ側へと大きく跳躍したのだ。そしてそのパドの後ろこそアルトが眠っている場所だったのだ。
「アルトーっ!!」
リヴィアは着地しすぐさまアルトに駆け寄って身体を揺さぶるがアルトはぐっすりと眠ったまま起きる気配がない。すると突如自分の周りに黒い靄が現れたかと思うとその靄から鎖が飛び出し、リヴィアとアルトの身体を鎖で巻きつけて拘束してきた。
「だっはははははー」
「あーらら~、パド様のお顔に靴の模様がくっきりと…」
「笑ってんじゃないわよストロン号!この私の美顔を足蹴した罪は重いわよ…」
「アルト、アルト…お願い、起きて!!アルト!!!」
靴裏模様がくっきりとついたパドが怒りを露わにしながら、三人で拘束されている二人にじりじりと歩み寄る。リヴィアは何度もアルトに呼び掛けながら動かない手に握っている剣を必死に鎖に打ち付けるが切れる気配がない。それどころかパドの鞭を手の甲に打ち付けられて剣を手離してしまった。
「そんな…」
「残念だけど、これにてジ・エンド…」
その時、突然鎖がはじけ飛んだ。あまりにも唐突な出来事に誰も反応が出来ずにリヴィアは驚き、三人組にははじけた鎖が襲い掛かった。そしてリヴィアは拘束から外れたことでゆっくりとアルトから離れると、アルトのスカートの内側から、先端にブレードがついた四本のワイヤー状のアームが飛び出していた。そしてアルトの身体はワイヤーアームに支えられながら立たされ、そしてゆっくりとその瞼が開いたのだ。
「げげぇ…起きた?」「うそぉ…超強力な睡眠薬よ?」「嫌な予感…」
「…どこの…だれだか…しらないけど…、…私寝起きは機嫌悪いの」
アルトの目はぼんやりとしつつも三人をギロッと睨みつけ、その両手に一本ずつ可愛らしい装飾の剣を握り、ワイヤーアームと合わせて6本の刃を三人組に向ける。そしてアルトがハイヒールでステップを踏みくるりと回ると、その開店に合わせワイヤーアームが三人まとめて鼻先を横薙ぎする。
「「っひ、ひいいいぃぃぃ!!」」「お、おまえたちぃぃぃ!!」
パドの悲鳴にメイアと交戦していた部下達はすぐにアルトを取り囲んだ。アルトがくるりと回るとワイヤーアームが屈強な男のナイフに襲い掛かりギリギリと鍔迫り合いをするが、そのアームの刃にアルトが手にしている剣で後押しすると、アルトの華奢な身体で男の身体を軽々と吹き飛ばしたのだ。その様子に部下達は怯えながらも一斉にアルトに襲い掛かるが、アルトの踊りを誰一人として止めることは…いや近づくことさえも出来なかった。
そしてひょいっと飛び上がりスカートを裏返らせながら部下達の真上を宙返りする。その太腿にはワイヤーアームを取り付けるための器具が装着しており、それとは関係なくピンクの水玉模様が見えた。そして…スカートの裏側にはちいなく長細いコンテナを思わせるものもあり、しかもそのコンテナが開くとそこからまるで小さなミサイルのようなものがいくつも降り注いだ。部下達は見とれて反応が遅れたが、気付いて逃げようとするその1~2秒の短い時間でそれは爆発。20人ほどいた部下達は一瞬にしてダウンしたのだ。
「あ、あれが…兵爵ランキング10位、通称お嬢様の形をした殲滅兵器…」
「って、てっしゅー!!今攫える状態の奴だけ抱えて逃げろー!!」
パドの一言で動ける部下は袋…人質を抱え扉へと走り出し、扉近くにいたメイアにはトラッPの魔法で足止めをされその一瞬の隙に逃げられたのだ。
「しまった、追いかけないと!!」
「くっ…逃げ足の速い奴らめ…。お嬢様、ご無事で?」
メイアは追うよりも先にアルトの無事を確認しに向かうが、アルトは急ごうとするリヴィアの腕を掴み、その手に付けられた傷をじっと見つめる。
「ふぅん…どこの誰かは知らないけど…私のリヴィアに傷付けたんだ…。…メイア、傷の手当てを」
「ですが…、…畏まりました」
その頃、持てるだけの袋を担ぎ全力で走るオズランドの兵達。会場から真っすぐ出口まで向かっていた。
「この先に!先に攫った!人質を乗せた!トラックあったわよね!」
「ありますあります!」
「さっさと乗って!逃げましょ!逃げましょ!」
出口の扉を開くと…そこには、何十人もの戦闘用服やドレス、メイド服に身を包んだ女性達が武器を携えて取り囲むようにして待機していたのだ。しかもさらに言えば人質をいれていたであろう袋がズタズタになってパド達の前に捨てられた。
「「「げっげげぇ!?」」」
「…よーやく御出ましなさったっすか~。遅くて退屈してたっすよ」
女性達の中から普段着の上に軍服のような上着を肩にかけた、一人の綺麗な黒髪ロングの長い耳…ヤマトエルフ系の精人種の女性がだるそうに前に出る。
「一応名乗っておくと、自分らは『雪百合』の構成員…アルト専属の護衛なんすよね~」
「え、えぇい!誰もそんなこと聞いてないわよ!!そもそもなんであんな馬鹿強いあの小娘に専属の護衛がわざわざいるのよ!!」
「馬鹿強いからですよ。こっちの帝国軍部にとってアルトの強さってのは戦術戦略そのものに直結するレベルの重要度。ならば敵国からの警戒度も高くいついかなる場所・時間も命を狙われていてもおかしくはないんですわ。現にあんたらだってアルトを狙っての誘拐計画だっただろ?」
「そうですな」「馬鹿っ、正直に返事するな!」
「っつーわけでアルトの命を守るため、誘拐されるのを防ぐために屋敷内だけでなく外や都市との境に警備が敷かれているんすけどね…流石にここまで潜り込んで、検査に引っかからないレベルの遅効性の睡眠薬を使わされるなんて、ちぃと説教案件ではごぜーますけどね。…そろそろ出てきたらどーです?」
そういうとパドが担いでいた袋がごそごそと動き出し、パドは驚いてその袋を投げ捨てた。どさっという音と共に落ちたその袋からは内側からナイフで切られ、中からはまるで手品師や道化師のような奇抜なメイクにポップな衣装をした少女が出てきた。
「べろべろば~♢、…ってかなんで私だってわかったのヅィー?」
「どーせんなこったろーと思ったよエフィ。他の袋も人形と入れ替えておいたんだろ」
「ふっ…すり替えておいたのさぁ!!」
その言葉に部下達は一斉に袋の中身を確認すると突如として地面に放り投げた。開いた袋の口からはまるで生きた人間そっくりながらも顔がお面のように外れ、その中から小馬鹿にしたような落書き顔がいくつも出てきたのだ。エフィと呼ばれた道化姿の子は何やら歌のようなのを口ずさみながら小躍りしてヅィーと呼ばれた女の元に行く。
「…あ、それと…もう遅いかもしれないが一応警告しておくと、いやもう手遅れかもな…後ろ」
「「「…後ろ?」」」
敵全員が後ろを振り向くとその廊下の先には、両肩にまるで4口あるロケットランチャーのようなものを担ぎ、両手の剣とワイヤーアームを廊下の地面に突き刺して射出の準備が済ませているアルトの姿があった。そして肩から勢いよく放たれた8発のロケット弾がまっすぐ急ぎ逃げようとするパド達に直撃し、ドオオオォォォ———ンというもの凄い衝撃音と共に建物の一部ごとパド達は空高く吹っ飛ぶのであった。
「あーん、もうちょっとだったのにぃ~」
「いやパド様、言うほど全然もうちょっとじゃなかったですよ?」
「いーのよ、こういうのはまずお決まりから入らないと…」
「いえいえパド様、あっしらの登場は実質的には二回目…このやられ方も全く同じ。成果無しも全く同じですぜ」
「そーんなぁ~…
「「「イーラッリーカ~……」」」
20人もの人間達がはるか上空できらりと光り見えなくなった。
「ご苦労様、ヅィー、エフィ。おかげで被害は出なかったわ」
「ご苦労っつったって…じぶんはなーんもしてねーけど…」
「イエーピスピス♧エフィちゃん大手柄~、アルトちゃんポイントプラス30!」
パド達が吹っ飛ばされた後、残された『雪百合』の女性達は荒れた屋敷を綺麗にしつつ、置いて行かれたオズワルドの兵達を捕縛し、お茶会に参加する人たちが全員無事かどうか確認作業を行っていた。メイアは隊員達の指揮を取ったり労ったりしていた。そしてその傍にはリヴィアもいた。
「リヴィア様も、貴女のおかげでお嬢様を無事お守り出来ました。ありがとうございます」
「…別に…私なんかいなくたって…」
「そんな謙遜なんて…」
メイアが話している途中でヅィーが手でメイアの口元を遮る。
「ほーぅ、そーでっか…ならアルトの唇は私が貰うって事でいーですよね」
「っは!はああぁ!!??ななな、なんでそんな話になんのよ!!ばっ、ばばばばっかじゃないの!!?」
その言葉にリヴィアはすぐに顔を真っ赤にしながら抗議するが、ヅィーにはまるでさえずりにしか聞こえないとばかりにリヴィアを見下ろす。
「ったりめーでしょ。アルトを守る王子様ってんなら自分が適任でしょーし」
「な、なに言ってんのよ!頭おかしーんじゃないの!!??…それに第一、あんたも私も女だし…」
「それに帝国が許可しないって?しったこっちゃねーですな。自分は国を出てってでもアルトを連れ出して結婚するつもりですからね」
なっ…と恥ずかしさのあまり顔が真っ赤のまま口をあわあわさせるリヴィア。対して涼しい顔で言ってのけるヅィーにヒューヒューと煽るエフィ、まぁと感心だか驚いてるだかな反応をするメイア。
「…言っておきますが、これは別に自分に限った話じゃねーですよ。他にもアルトの唇を狙う同性がこの『雪百合』って組織に集まっていますからね~。アルトもアルトで満更でもないから…脱落者が早々に現れてくれるほーがこっちにとっても都合がいーですしね」
「…やだ…」
「んー?」
「…っわ、私だって!!わたしだってアルトの事が!だ、大好きだよ!!ヅィーなんかよりも!ずっと、ずっと!一緒にいて!これからもずっといて!!私がアルトを守るんだもん!!」
リヴィアの声が壊れた屋敷中に響き渡り掃除する隊員達を唖然とさせる。中にはクスクスと微笑む人もいる。そして恥ずかしさが限界突破し顔を手で覆い俯くリヴィアを見ているヅィーもまたニヤリと笑う。
「だったら…ちゃんと強くなってアルトを守ってやらねーとなぁ。未来の王子様♪それじゃお茶会再開する準備をさっさと済ませねーとなぁ」
こうして今日もまたこの都市を護るものを守る者達の活躍のおかげで、平和で穏やかな都市が一日を過ごすのであった…。
本投稿を読んでいただきありがとうございます。SKMRでサキモリと申します。
最初に謝罪をさせていただきます。ついに遅刻や提出できない日が増えてしまいました。大変申し訳ございませんでした。
理由は本業が忙しく、かつついにスランプに悩まされています。現在短編集で執筆途中の作品を数本抱えてしまっています。
今後は本当に1週間まるっと投稿しないかもしれないので…その時は事前に連絡いたします。大変申し訳ありませんでした。
また今回も誤字脱字、文章構成などまだまだ課題がありますのでよかったらアドバイスなどしていただければ幸いです。
次回は5/23に投稿を予定しております。もし少しでも面白かった、続きが待ち遠しいと思えたら嬉しいです。よければ、ブックマーク・お気に入り登録をお願いいたします。本編及び短編集や設定資料もよろしくお願いします。




