卒業
月朧の木に白に近い薄黄色の何枚もの花びらを重ねた、拳くらいの大きさの真ん丸で可愛らしい花が咲き誇る春。
あの一件から二年の歳月が過ぎ、今日この日、満開の月朧の花が咲く青空の下でラーシャ達は卒業式を迎えた。
「諸君の未来が希望に満ち溢れる事を願って、吾輩の祝辞とする」
長い長い校長の祝辞がようやく終わったと、生徒達が内心安堵のため息をついていると、今度はフラウの祝辞が始まった。
初等部からの付き合いだけあってフラウの祝辞はものすごく長い。
春とはいえ風が吹けばまだまだやはり寒い。
ラーシャは身体をブルリと震わせた。
「え、寒いんだけど…まだ、話終わらないの?」
「ラーシャ、失礼ですよ。フラウ先生は今感極まっているのですからちゃんと聞いてあげないと」
ニアが注意すると、その話を聞いていたソルが鼻で笑う。
「静かに先生の話を聞けないんじゃラーシャはまだまだお子ちゃまだな」
「ソルのくせに偉そーに」
「喋ってる時点でソルも同レベだけどな」
「しっ、静かに。先生がこっちを見て睨んでますわ」
ニアの言葉に、ラーシャ、ソル、セルジュはすぐに黙り込み、目を合わせないように下を向く。
十分後ようやくフラウの祝辞が終わりいよいよ卒業式は最後の項目、竜に乗る事が許される騎乗許可証の授与に入る。
中等部までの学生達は基本、学校以外での竜の騎乗は認められておらず、騎乗許可証をもらう事で晴れて、竜に乗る事が許されるのだ。
だが、ほとんどの生徒はバレなきゃ大丈夫、と竜に乗っているが、バレる事を心配せずに済むのだから許可証が貰えるのは嬉しい。
一人一人、フラウに名前を呼ばれ騎乗許可証を手渡しで受け取っていく。
先にニアが呼ばれて、フラウから騎乗許可証を受け取って戻ってくると次はいよいよラーシャの番だ。
「ラーシャ」
「はいっ!」
名前を呼ばれてラーシャはルーキスを肩に乗せたままフラウの前に立つ。
フラウはラーシャとルーキスの顔を交互に見ると、微笑んだ。
「ラーシャ、ルーキス。卒業おめでとう」
「ありがとうございます!」
【おう、ありがとうな】
フラウがラーシャに騎乗許可証を渡して、何か言おうと口を開いた瞬間。
「ぐず…!ズズっ…!ラーシャぁぁぁぁぁっ!本当に、本当によか、よかったなぁぁぁ!!卒業できでっ!ほんどうに、よがっだぁぁぉ!!
感動の空気をぶち壊す勢いでゼンが泣き出した。
「あらあらまぁまぁ、ゼン。静かになさい。周りの迷惑ですよ」
シューリカに注意されるが、ゼンが泣き止む様子は無く、泣き喚いていた。
アイシャは恥ずかしそうにゼンの頭の上で、翼を使って顔を隠している。
「ラーシャが、卒業するのに、泣かないでいられるか…っ!うわぁぉぉっ!」
「ちょっと、ゼン兄!!恥ずかしいからやめてよっ!」
ラーシャはゼンに怒鳴ると顔を真っ赤にさせてフラウに頭を下げるとそそくさと自分の席へと戻った。
それから卒業式は滞りなく行われ、ラーシャ達は卒業する事が出来た。




