ニクスの頼み
少し歩いたところでニクスは止まると、セルジュに頭を下げた。
「ニクス…?」
【助けてくれ、セルジュ。…もしかしたら君を危険な目に遭わせることになってしまうかもしれない。…それでも助けて欲しい】
「何があった?ちゃんと言ってくれないとわからない」
【ルーキスの居る場所が変なんだ】
「ルーキスの居る場所?」
【僕は兄弟が居る場所が察知できるんだけど、ルーキスのいる場所がおかしい…何かに巻き込まれてる気がする】
「そこにラーシャは?」
セルジュの問いにニクスは首を横に振った。
【僕にわかるのはあくまでも弟であるルーキスの場所だけ。そこにラーシャ居るかどうかまではわからない】
「…」
セルジュは少し考えた後、工房に戻った。
「ソル、悪い。ちょっとニクスと夜の散歩に行ってくる」
掃き掃除をしていたソルが目を丸くした。
「え?今から?雨降ってるけど…」
「ニクスは夜になると散歩したがるからな」
「いつも雨の日は行きたがらないよな?」
「今日はどうしても行きたいんだってさ」
「そっか…。とりあえず、雨だから早く帰ってこいよ。風邪引いたら大変だし」
「あぁ、風邪ひかないように気をつける。じゃあ行ってくるな」
「行ってらっしゃーい」
セルジュは工房の扉を閉める。
本当はソルにも助けてもらった方がいいと思う。
だが、ニクスがあんなに不安そうに危険かもしれないと言っている。相当危険なのだと察しが付く。
そんな所にソルを連れて行くことなんてできないし、そもそも赤竜のベルナデッタは雨の日は苦手でいつも“力が弱まってしまう”と言って部屋に引き篭もってしまう。だから助けてくれるかどうかもわからない。
だからセルジュは助けを求めずに急いでニクスの元へと戻った。
「ニクス、竜帯持ってきた?」
ニクスは頷くと工房の隅に置いておいた竜帯を咥えて持ってきた。
セルジュはそれを素早くニクスに装着した。
「ニクス、元の姿に戻っていいよ」
セルジュの言葉を聞いてニクスは身体を大きくして体勢を低くした。
セルジュはニクスの背に飛び乗ると、自分の腰につけた竜紐を帯に繋げる。
「よし、まずはラーシャの家の方に行こう。ラーシャがルーキスと一緒にいるかわからないけど、もしルーキスと共に行動してるなら一応シューリカさんに二人の危険を知らせた方がいいだろう」
【…わかった】
不安そうなニクスの声にセルジュは頭を撫でた。
「大丈夫。何があっても必ずルーキスを見つけ出そう」
【ありがとう。助かるよ】
元気を取り戻したニクスは地面を蹴り上げて暗い空へと舞い上がる。
まずはセルジュの指示通りラーシャの家へ。
先程から嫌な予感がニクスの胸を締め付けている。
【急ぐよ!捕まってて!】
ニクスが言うが早いかいつもよりも遥かにスピードを上げて飛ぶ。
雨飛沫が顔に当たって痛い。セルジュは腕で顔を覆って雨から身を守る。
ニクスが焦っているのがわかる。いつもなら気を遣ってくれるが今日はその余裕が無い。
どうか、ルーキスもラーシャも無事でいて欲しい。
セルジュがそう思っていると【あっ!】とニクスの声が耳に入った。
セルジュは首を傾げてニクスの視線を追って下を見た。




