ギャルのあーん
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キッチンから聞こえてくる音が、徐々に本格的になってきた。卵を溶く音、フライパンを熱する音。火花ちゃんは本当に手際がいいらしい。
礼ちゃんは俺のそばに座ったまま、ギプスをじっと見つめていた。
「……国丸さん、お風呂とかどうするんですか?両手だと洗えないですよね」
「ああ……それは正直、考えてなかった。妹が帰ってくるまで我慢するか、大作にでも頼むか……」
「大作さんって、送ってくれた人ですか?」
「うん。変なヤツだけど一応親友な」
礼ちゃんは少し考え込むように目を伏せた後、顔を赤らめながら小さな声で言った。
「私、手伝えますよ。背中とか……」
「いや、それはさすがに……!」
俺が慌てて否定すると、礼ちゃんは顔を真っ赤にして「じょ、冗談です!」と手を振った。あざとい。無意識であざといぞこいつは。
だが大作の言った通り俺は踏みとどまるぜ!
そのとき、キッチンから火花ちゃんの声がした。
「できたよ。オムレツ」
香ばしい匂いが部屋に広がる。火花ちゃんが皿を持って出てきた。ふわふわに焼けたオムレツが、三つ並んでいる。自分の分もちゃんと作っているのが、妙に感心させられた。
「国丸さんは手が使えないから、食べさせてあげます」
「え、そこまで……」
「当然です。責任取ると言ったので」
火花ちゃんは俺の前にしゃがみ、スプーンを手に取った。礼ちゃんも隣で見守っている。
「はい、あーん」
「いやあーん、って」
「早く。冷める前に」
完全に僕はstate of confusion(混乱状態)だ。僕は仕方なく口を開けた。何かしらの災難が起きることを覚悟したが、口の中に飛び込んできたのは、スプーンが当たって切れた血の味などではなく、やさしい卵の味だった。おまけにネギが使われているのか、心地よい風味が口いっぱいに広がる。
「うんまあ……!」
「でしょ?自信があるんだあ、これ。」
「く、国丸さん!私からも!」
そう言って礼ちゃんもオムレツをすくったスプーンを差し出して来た。
もちろん俺は、
「パクッ」
その後、俺は火花ちゃんと礼ちゃんに交互に「あーん」を繰り返され完食した。
皿が空になると火花ちゃんは満足そうに頷いた。
さて、そろそろとんでもない"幸せの反動"を覚悟する頃かもな〜。
皿を下げた火花ちゃんが、洗い物を済ませると俺の前に座った。礼ちゃんも隣でまだ少し顔を赤らめたままいる。
「国丸さん、次どうしますか?お風呂とか……」
火花ちゃんの声は平然を装いながら言う。一方、礼ちゃんは、
「あ、あの……やっぱり背中とか、私……」
「いや、それは本当に大丈夫だから!今日はもういいから。二人とも明日も学校あるだろ?そろそろ帰った方が……」
火花ちゃんが俺のシャツの裾に手を伸ばし、礼ちゃんが目を泳がせながらもじもじと近づいてくる。
やっべ〜。
大作が気をつけろよって言ってたのはこれのことかよ〜。
そこでやっと俺に"幸せの反動が炸裂した"。
ガチャ
「ただいま〜。兄貴、骨折したって聞いたけど元気?」
「「え?魅子先輩?」」
ドアが開いた瞬間、部屋の空気が凍りついた。
立っていたのは、明後日まで修学旅行中のはずの妹だった。大きなバッグを下げたまま、玄関で足を止めている。制服姿の火花ちゃんと礼ちゃんを見て、目を丸くした。
俺も布団の上で完全に固まった。
(てか、「魅子先輩」って3人は知り合いなの!?)
ギャルにアーンされたいな




