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東山裏公園  作者: りき
1/2

12時に......

はじめまして、りきです。


この作品が初投稿になります。

拙い部分もあると思いますが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

どうぞごゆっくりお楽しみください

僕は、今日おかしな出来事に出会った。

それが真実なのかは......


―――――今朝―――――


僕はいつも通り、学校へ向かっていた。


見慣れた通学路。

その途中に、一人の女性が立っていた。


僕と同じくらいの年齢だろうか。


そう思った次の瞬間、その女性が突然こちらへ走ってきた。


悲しそうなのに、どこか嬉しそうな顔。

涙で潤んだ目が、まっすぐ僕を見ていた。


「え……」


思わず少し緊張した。

話しかけられると思い、軽く咳払いをする。


けれど、女性は何も言わなかった。


ただ僕の横を通り過ぎていった。


「失恋でもしたのかな?」


そう呟きながら振り返る。


そこには女性の姿は見えなかった


考え事をしているうちに、気づけば学校へ着いていた。


いつも通り授業を受け、学食を食べ、また授業を受ける。


気づけば、一日はもう半分ほど終わっていた。


―――――帰り道―――――


朝の出来事を思い出しながら歩いていると、後ろから肩を軽く叩かれた。


振り返る。


そこには、今朝の女性が立っていた。


女性は目を逸らしていた。

その目は赤く腫れていて、まるで一日中泣いていたみたいだった。


頬には、乾いた涙の跡まで残っている気がした。


何かを言おうとしている。

けれど、声が出ないようだった。


僕は先に口を開いた。


「どうしたんですか?」


その瞬間、女性の目が不安そうに揺れる。


視線が落ち着かない。

今にも逃げ出してしまいそうだった。


僕がポケットからティッシュを取り出そうとした、その時だった。


女性が小さく口を開く。


数秒の沈黙のあと、震える声で言った。


「……明日、東山裏公園に12時に来て」


僕が返事をする前に、女性はもういなかった。


突然のことに、頭が追いつかない。


東山裏公園なんて行ったこともない。

どこにあるのかもわからない。


どうすればいいのかも、わからなかった。


家に帰ってからも、ずっとそのことが頭から離れなかった。


でも、色々あって疲れていた僕は、そのまますぐ眠ってしまった。


何もできないまま、一日が終わった。


―――――朝―――――


「東山裏公園ってどこだろう……お母さんに聞いてみるか」


そう思い、僕は階段を降りた。


僕の家は二階建ての細い家だ。

だからいつもなら、階段を降りればすぐ、お母さんが朝ごはんを作っている音が聞こえる。


でも今日は違った。


キッチンを見ても、リビングを見ても、お母さんの姿がない。


「どこ行ったんだろ……」


そう呟いた瞬間だった。


――ピンポーン。


突然、インターホンが鳴った。


僕にとって、インターホンが鳴ること自体かなり珍しい。


近所のおばちゃんは勝手にドアを開けて入ってくるし、友達もほとんど家には来ない。


少し緊張しながら、僕は玄関へ向かった。


恐る恐るドアを開ける。


逆光で、最初はよく見えなかった。


ただ、人影が二つ見える。


目が慣れてきて、その姿がはっきり見えた瞬間、僕は固まった。


お母さんが立っていた。


その隣には――昨日の女性。


女性は昨日とは別人みたいに、自然な笑顔を浮かべていた。


そして、昨日の沈黙が嘘だったかのように、あっさりと言った。


「こんにちは。隣に引っ越してきた者です」


落ち着いた声だった。


「お母さんも一緒に来てたんですが、手土産を忘れちゃって。今、空港まで取りに戻ってます。また後で来ますね」


そう言って軽くお辞儀をすると、女性は引っ越しの荷物が積まれたトラックの方へ歩いていった。


「本当にしっかりしてる子ねぇ。しかもあなたと同い年なんだって。少しは見習いなさい」


でも、お母さんの言葉はほとんど耳に入ってこなかった。


昨日の女性と、今目の前にいる女性。


その温度差が激しすぎて、頭が追いつかない。


気づけば僕は、女性の後を追いかけていた。


引っ越し業者と話していた女性が、こちらを見る。


僕は息を整える間もなく、口を開いた。


「……12時に東山裏公園じゃなかったんですか?」


女性は少し首を傾げた。


「どこですか、そこ? 私、今日初めてここに来たんですけど……」


その言葉を聞いた瞬間、僕は戸惑いを隠せなくなった。


頭の中が真っ白になる。


昨日の出来事はなんだったんだ。

夢だったのか。

でも、あの涙も声も、あまりに鮮明だった。


沈黙が気まずくなっていく。


咄嗟に、僕は笑って誤魔化した。


「え、あ……そうですよね。すみません、夢でした! はは……ごめんなさい、忘れてください!」


女性と引っ越し業者が、不思議そうな顔でこちらを見ている。


恥ずかしさで顔が熱くなる。


今にも笑われそうな気がした。


僕は逃げるようにその場を離れ、自分の部屋へ戻った。


どっと疲れが押し寄せる。


そのままベッドに倒れ込むと、僕はいつの間にか二度寝してしまっていた。


気づけば、時計は11時を過ぎていた。


夢を見ていた気がする。


あの女性が出てきていた。


でも、内容は思い出せない。

ただ、あの女性だったことだけは妙にはっきり覚えていた。


「……一応、東山裏公園とやらに行ってみるか」


そう呟いた瞬間、お母さんに場所を聞こうと思っていたことを思い出した。


お母さんは米農家だ。

家の裏にある畑で作業していることが多い。


僕は裏口から外へ出た。


案の定、お母さんは畑にいた。


「お母さん、東山裏公園って知ってる?」


「あぁ、知ってるよー。あそこの山の裏にあるよ」


お母さんが指をさした。


西の山だった。


「え、本当にあの山の裏?」


「そうだよ?」


名前の通り山の裏なのか。

でも、“東山裏”なのに西にあるのは少し引っかかった。


まあいいか、と僕は考えるのをやめた。


とりあえず行ってみよう。


僕は中学生の頃から使っている、少し錆びた自転車に跨った。


ペダルを踏み込み、立ち漕ぎで西の山へ向かう。


距離は六キロくらいだろうか。


この辺にも公園はあるのに、どうしてわざわざこんな遠い場所なんだろう。



そんなことを考えているうちに、山のトンネルまで辿り着いていた。


僕は物心ついた頃からこの地域に住んでいる。


でも、この場所に来たのは初めてだった。


「こんな所あったんだ!」


少し気味が悪かった。


天井の電気は所々切れていて、薄暗い。


出口までは百メートルほどだろうか。


このトンネルを抜ければ海水浴場がある

夏だから、車通りもそれなりに多いはずだった。


なのに、妙に静かだった。


トンネルの出口に、看板が立っているのが見えた。


【← 東山裏公園】


その文字を見た瞬間、僕は少しだけ自転車の速度を上げた。


ペダルを踏み込む。


そして、トンネルを抜けた瞬間――


太陽の光が一気に視界へ飛び込んできた。


眩しさで、思わず目を細める。


左の方に、公園があった。


風のせいだろうか、ブランコがわずかに揺れている。

その揺れ方が妙に気味悪かった。


苔の生えたベンチが、この場所があまり使われていないことを物語っている。


人の気配はない。

ちょうど、まだ12時には少し早かった。


「10分だけ待とう」


そう呟いて、僕はブランコに座った。


トンネルを出入りする車をぼんやりと目で追いながら、女性のことを考える。


あれは僕をからかっているだけなのか。

それとも、ただの思い違いなのか。


考えれば考えるほど腹が立ってきて、立ち上がった。


そのまま自転車にまたがり、帰り道へと走り出した。


潮風が横から吹きつける。


トンネルへ向かう坂を登りながら、僕は何度もため息をついた。


「やっぱ帰ればよかった……」


そう呟いた、その時だった。


「ねぇ」


女の声。


僕は反射的に振り返る。


坂の下。


潮風に髪を揺らしながら、彼女がまっすぐこちらを見ていた。


「待って……」

読んでくださり、本当にありがとうございます。

もし続きが気になっていただけたら、また読みに来てもらえると嬉しいです。

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