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元魔王の剣  作者: 鵙来 蜜柑
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Side お頭

 くそっ! くそっ! くそっ!!!

 あの馬車の積み荷さえ奪えていれば……!!!

 あれだ……あの剣のせいだ……

 やはりあの剣は……


「お頭! どこへ逃げるんですか!?」


「知らん! とりあえずここから離れろ! 死にたくなければな」


 今からひと月程前か。

 フードを被った怪しげな男が手紙を持ってきた。

 これはいつもの事。

 王都のお偉いさんが汚い仕事を俺達に押し付ける為の、いつものやり方だ。


 手紙を渡される少し前。

 王国の端、山の麓にある村の近くでモンスターが暴れ出したらしい。

 詳しくは知らないが、とにかくでかいモンスターがいたらしい。

 それを勇者とか呼ばれている奴が退治した。

 そしてそのモンスターの魔石もでかかった。

 でかい魔石があれば今までは作れなかった魔道具が作れる。

 王都はその魔石を買い上げる為に運ばせていた。

 それがさっきの馬車だ!


 俺達はその馬車を襲うように言われていた。

 王都のお偉いさんは、そんな巨大な魔石を買う為の金を払うのが嫌だったんだろう。

 その金額に比べれば、俺達に払う報酬なんて微々たるもの。

 王都のお偉いさんからしたら微々たるのもでも、俺達からしたら大金だ。

 その金があれば数年は遊んで暮らせる。

 遊ぶだけじゃなく、その金を使って色々なことが出来るはずだった!


「お頭! どこまで逃げるんですか!?」


「街道から離れるんだよ! 人目の付かないとこまで急げ!」


 そう、今回とうとう俺達は失敗してしまった。

 王都の奴らが、失敗した俺達をほっとくわけがない。

 王都からの依頼だと知っているのは俺だけだ。

 だから捕まったあいつらから情報が漏れることは無い。

 無いのだが、王都の奴らからしたらそんな不確かなことを信じたりはしないだろう。

 あいつらは確実に殺される。

 そして俺達も見つかり次第殺される。


 今回のが何回目だったか……

 今までは王都からの依頼はすべて成功させてきた。

 そのおかげか俺の団もどんどん大きくなってきていた。

 だから今回もこの人数だったら成功するはずだった。


 王都の奴から、馬車の護衛の数は十人前後だと聞かされていた。

 十人程度ならどんな手練れだとしても、矢の雨の後に襲われれば無事では済まないはずだ。簡単な仕事のはずだった。


 作戦が始まる直前……

 クルトの奴が剣を拾ったと持ってきた。

 あの剣だ。あの剣だったんだ。


 俺は王都からも色々な情報をもらっていた。

 その中に漆黒の刃の剣についても噂程度で聞いていた。


 世の中に溢れている剣の中。漆黒の刃の剣が数本だけ紛れ込んでいる。

 その剣の切れ味は世界最高級。

 その剣で斬れないものは無い。

 その剣は刃こぼれすらしない。

 ただし……

 その剣は呪われている。

 その剣の持ち主は不幸な死にかたをする。

 その剣を見つけても鞘から抜いてはいけない。

 抜いたその瞬間から呪いは降りかかる。


 聞いたときにはデマだとしか思えなかった、そんな呪いの剣の話を。


 クルトから漆黒の刃だと聞いた時に、すぐこの話を思い出した。

 ただ……本当にその剣だと思ったわけじゃない。

 もしそうだったらと思い、念のためにクルトに使わせて様子を見ようと思っただけだった。

 まさか本物だとは……

 しかも持ち主が不幸になるどころか、盗賊団全体に不幸が降りかかりやがった!

 もう盗賊団はおしまいだ。


「お頭! もう森の中ですぜ? ここまで来れば追ってこれないんじゃ?」


「油断するな! 俺達が相手しているのは冒険者だけじゃねぇんだ」


「冒険者じゃない? お頭……何を相手にしてるんですか?」


「…………」


 国だよ! 言えるかよ!


「お頭……?」


「もうお頭じゃねぇ! 俺の団は壊滅した。お前らも……もう好きにしていいぞ?」


「お頭! 俺達のお頭はお頭だけだ! ずっと付いて行くって決めてんだ! そんなこと言わないでください」


「お前ら……あれだけいたのが今じゃ俺を含めたったの五人……それでも付いてくるって言ってくれるのか?」


「あたりまえじゃないですか!」


「そうか……ありがとよ……」


 くそっ……泣かせてくれるぜ。

 こいつらの為にもまずは生き延びなきゃな。

 まずは王国から出ちまったほうがいいか?

 それとも森の中で隠れてれば……


「お待ちしてましたよ~、お頭さん」


「おっ……お前は……」


 このフード野郎は……なんでこんな所に……!


「失敗しちゃいましたね~、ど~します~?」


「いやっ……ば……挽回の機会を……」


「そんなのあると思います~?」


「お頭、こいつなんなんですか? やっちゃいます?」


「待て、お前ら!」


「やっちゃう~? やられちゃうんですか~? 私。きゃ~怖い~」


「馬鹿にしてんのか、おらっ!」


 ___ボトッ___


 ついさっき、俺に付いて行くって言った奴の首が足元に転がってる。

 フード野郎に剣を突き出した直後、気付けば首が無くなった胴体がそのままの格好で立ち、切り離された首が俺の足元まで転がってきた。


「怖~い。斬られちゃうかと思った~」


 ニヤニヤとした口元だけがフードの奥から見える。

 まったく怖がってない……それどころか、人殺しが楽しくてしょうがないようにしか見えない。


「後ろの人達の目も怖~い」


 ___ボトッ、ボトッ、ボトッ___


 急いで振り返ると、そこには首の無い胴体が三つ立っているだけ。


「あ~、怖かった~」


「おま……え……」


「ど~したの~? だって私が殺されちゃうかと思ったのに~。ダメだった~?」


「…………」


 最後の仲間が……こんな奴に……

 くそっ……くそっ!


「何しに来やがったんだ……」


「何しにって~、処分?」


「くそがっ!!」


 殺るしかねぇ!

 あ……あ?

 世界が回ってる?

 なんで地面がこんな近くに見えるんだ?

 あれ……なんだ……こ……れ…………


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