フォルクと僕と
「この子はテッド村の子なんです。フォルクって名前で、私の家の隣に住んでいた男の子で……
あ、今は狐の姿ですけど、人の姿にもなれますよ!」
「人の姿になれるのか!? ただの狐じゃなかったのか……」
「人の姿が本来の姿なんだけどね。狐に変化してるんだよ」
「獣人ってそんなことが出来るのか……マリーも獣に変化出来るのか?」
「私には無理だよ。この子みたいな狐人族や、狸人族くらいかな、変化出来るのは」
「そうなんだな」
へー!
変化なんて出来るんだ! 凄いね、面白そう!
「ねえ、マリー。あたしには普通の狐に見えるんだけど、なんでフォルクだってわかったんだい?」
「この子は、ほら。ここに鈴を着けてるんですよ。この音が聞こえてきたので、もしかしたらって思って」
「なるほどね。この子がテッド村の子だってわかったから、助けに行ったのかい。まあこの鈴のせいでゴブリンに見つかったのかもしれないけど、助けてももらえたわけだね」
「そうなのかな……でも……なんでこんな所に一人でいるのか」
「その辺は目が覚めたら聞けばいいさ。よし、じゃあマリーの話はわかったから、次はウルのほうだね!」
グリュエールがこっちを向いて、楽しげな笑みを浮かべてる。
「衝動が強くなったって? モーティマが持ったからかい?」
「う、うん……モーティマが持った瞬間に少し衝動が強くなったよ」
「そうかい。近くにいる程度より、直接手で触れたほうが衝動が強くなる……と」
「そうみたい。でも衝動は強くなったけど、声は聞こえてこなかった……」
「会話が出来たときはもっと衝動が強かったのかい?」
「もうちょっと強かったと思う……」
「うーん……難しいね。今度はモーティマにウルを持たせて、モンスターと戦ってもらおうか?」
「おいおい、俺は剣なんてまともに扱えないぞ?」
「まともじゃなくてもいいさ。抜き身で魔法を使ってもらうだけでもいいわけだし」
「それくらいならいいけどよ」
「あ! フォルクが目を覚ましそうです!」
マリーの声に、グリュエールとモーティマは会話をやめて、マリーが抱いているフォルクへと視線を向ける。
皆がフォルクに注目したその時、ゆっくりと目を開いて目を覚ました。
「えっ……あっ!?」
目を覚ました瞬間に、マリーの腕の中から飛び出してキョロキョロしてる。
「ゴッ……ゴブリン……が……?」
「フォルク。もう大丈夫だよ。ゴブリンは退治したから」
「えっ!? マリーお姉ちゃん!?」
「そうだよ。フォルクは大丈夫? 痛い所とかない?」
「えっと……うん、大丈夫。どこも痛くないよ。それで……えっと。なんでマリーお姉ちゃんがこんな所にいるの?」
「それはこっちのセリフだよ! 私はテッド村へ戻る所だったけど……フォルクはこんな所に一人で、なにやってるの?」
「あっ! そうだ! 助けて!! 村が……村にゴブリンが……」
「どういうこと!? 村がどうしたの!?」
「村にゴブリンの大群が……それで……お父さんもお母さんも……
僕……どうしていいかわからなくて……助けを呼ばなきゃって走ってたんだけど……ゴブリンに捕まって……助けて! 皆を助けてあげて!!」
そこまで言ったら、フォルクは泣きだしちゃった。
テッド村にゴブリンの大群?
マリーの村、またモンスターに襲われてるの!?
急いで助けに行かなきゃ!




