Side アーノルド
「行ったか……」
こんなことあるんだな。本当に。
オークの大群がこのアンカの町に迫ってきていた。
そんなタイミングであんな奴らが偶然この町にくるなんてな。
神様ってやつが本当にいるのか?
ま、助けてくれたのは神様じゃなくて、あいつらだからな。感謝はあいつらにしておこう。
「さて、まだまだ忙しくなるぞ!」
あいつらのおかげで町に被害はなかった。
だからといって、今すぐに元通りになるわけでもない。
まずは集めた物資の返却だな。これをやらねえと店も開かない。
後は近隣の村や町にも報告をしないと。危機が去ったって伝えねえと商人もよってこなくなっちまう。
でもそれよりも先に……王都に連絡しておかなきゃだな。
物資の返却や近隣への報告は書類さえ作っておけば、他の奴らに任せられる。
問題は王都への連絡だ……
なんて報告すりゃいいんだ……
いや、もちろん嘘を吐くわけじゃねえ。ありのままを話せばいいだけだ。
だが……あんなもん信じてもらえるのか?
オークの大群が迫っていたことはもう報告しちまった。
だから退治出来たってことも報告しなきゃならねえ。
報告が無けりゃ、この町が潰されたって勘違いさせちまうかもしれねえからな。
でもなあ……目の前で見た俺ですら信じられねえのに、それを聞いただけで信じてもらえるのか? 無理だろ!!
はあ……
まあそれでも報告しなけりゃいけねえんだ。さっさと終わらせちまおう。
ギルド長の為に用意されている机。
その片隅に置かれている一つの魔道具。それを手元へと移動させる。
こいつは離れた場所にいる人と会話することが出来る魔道具だ。
一般には出回っていないが、特定の冒険者ギルドには置いてある。この町の周りはモンスターが多いからな。今回みたいなことがあったときにすぐに報告出来るように置いてあるんだ。
モンスターの大群が来るって話なら、さっさと伝えないと後手後手に回っちまうからな。
さて……
そんな関係ないことを考えている場合じゃねえ。
王都の冒険者ギルドに連絡しねえと。
この魔道具は球体になっている。
こいつを両手で包み、相手を呼べばいいだけだ。
「王都冒険者ギルド長、イリーシス」
これで向こうの魔道具に反応がある。
近くにいるなら、すぐに返事がくるだろう。
「はい、こちら王都冒険者ギルド、イリーシス。アーノルドですか?」
「そうだ。アンカの町冒険者ギルド、アーノルドだ。オークの大群について報告がある」
「はい。そろそろオークが到着する頃合いだと思いますが……」
「オークは全て討伐された」
「は?」
「オークの退治はもう終わったんだ。確認出来た範囲では、オーク、オークメイジ、オークソルジャー、そしてオークキングがいた」
「それを……もう全て討伐したと? この短い時間で?」
「そうだ。今回偶然この町に来た冒険者パーティが魔法を使って退治してくれた。本人達はランクアップなどいらないといって既にこの町を出て行った為、オリハルコンランクへの推薦はしないが、名前は伝えておく。
王都から依頼でこっちへ来たってことだから、把握してるかもしれないがな。
パーティは、グリュエール、モーティマ、マリーの三人。オークの大群はグリュエールの魔法で退治されたが、モーティマも防壁作りの時に魔法を使ってくれたと報告も来ている。
報告としては以上だ」
「……グリュエール達が? 町に被害は?」
「全く無しだ」
「……そうですか。グリュエール達は既に町を出ているのですね?」
「ああ。やっぱりあいつらのことは把握していたか」
「ええ。そうですね……グリュエールはどんな魔法を使いましたか?」
「巨大な竜巻だったな。その竜巻がオークの大群をすべて飲み込んだ」
「そうですか……それは……」
「なんだ?」
「……いえ、止めておきましょう。オークの大群が退治できたことはわかりました。お疲れ様でした」
「ま、俺は何もしてないけどな。あいつらのおかげで助かったぜ」
「まだ何かあるかもしれませんし、オークの大群がどこから来たのか調査もお願いしますね」
「ああ、わかってる」
「それでは。また何かありましたら連絡ください」
「了解した」
通信が途切れた。
……思っていたよりもすんなり終わったな。
あれだけの魔法を使えるんだ。さすがにあいつらのこと把握してたんだな。
まあいい。こっちはまだ忙しいんだ。終わったことは気にしないでおこう。




