シャリル村
「よかった、陽が落ちる前に着けたね」
「陽が落ちた後は、村の門も閉まっちゃうんですよね?」
「そうだよ。夜になると活発に動くモンスターもいるし、危ないから」
陽が落ちるギリギリにシャリル村へ到着!
御者台には、今はマリーが座ってる。
お昼休憩をしたときにグリュエールと交代したんだ。
街道を外れるとモンスターに会うこともあるらしいけど、街道の周辺はよく人が行き来するから討伐依頼もいっぱいあるみたいで、僕達はモンスターに会うこともなくここまで来ることができた。
「よーし、じゃあ宿を取りに行こうか。イリーシスから経費としてお金を預かってるから、遠慮無く使っちゃおう!」
「部屋割りはどうするんですか?」
「そうだね、あたしとマリーが一緒でモーティマは一人って形かな。全員個室でもいいんだけど、さすがに無駄遣いが酷いとイリーシスに怒られるからね。それでいいかい?」
「はい、私はそれでいいです」
「わりいな、俺だけ一人部屋で」
「いいさ、問題ないよ。モーティマは慣れない旅で疲れてるだろうし、ちゃんと休むんだよ」
「……ああ、そうさせてもらう」
「この先では野宿することもあるからね。休めるときにしっかり休んでおかないと」
そんな話をしながら宿屋へ向かう。
この村はそんなに大きくはないけど、王都まで一日という距離にあるからか、それなりに栄えてるようにも見える。
南からくる行商の人とかは大体ここで泊まって、次の日に王都へっていう感じらしい。
逆に王都から南へ向かう人も同じだね。
だから宿屋も何件かあるみたい。
「お勧めの宿屋はありますか?」
「啄木鳥亭がいいかな。あそこのスープは絶品なんだよ!」
「おいしいスープ! いいですね、そこへ行きましょう」
「……スープじゃ満腹になれないんじゃねえか?」
「大丈夫だよ、モーティマ。他のもおいしい物ばっかりだから」
「そうか。それならそこでいいぞ」
モーティマはいっぱい食べそうだもんね。
「そこを右に曲がって……あれだよ。あの宿屋」
グリュエールの案内で啄木鳥亭へ到着。
馬車も停めて、さっそく中へと入っていく。
「まだ部屋に空きはあるかい?」
「三人だね? 大丈夫だよ」
「じゃあ一人部屋と二人部屋を一つずつ。夕飯も貰いたいんだけど残ってるかい?」
「ああ、大丈夫だ。朝飯はどうする?」
「うん、朝飯も付けて。後お願いがあるんだけど……」
グリュエールが店主とコソコソと話しだす。
店主はちょっと嫌そうな顔をしたけど、結局グリュエールの押しに負けて、頷かされてる。
「じゃあ銀貨五枚だな」
「はい、銀貨五枚」
「じゃあこれが部屋の鍵だ。荷物置いたら降りてきな。飯を用意しとく」
「うん、よろしくね!」
荷物って言っても、ほとんどが僕の“アイテムボックス”の中に入ってる。
皆は怪しまれない程度の手荷物だけ。
“アイテムボックス”を使えるってバレると大変みたいだから、ごまかしながらいかないとダメみたい。
「はい、モーティマはあっちの部屋ね。マリーはここ。荷物置いたら食堂へ行くよ!」
三人は部屋に荷物を置いたら、すぐに食堂へ!
席に着いたら店主がご飯を持ってきてくれた。
「まずはきのこのシチュー。それとパンと鶏肉の照り焼きだ」
「おー! これこれ! このシチューにパンを浸して……うーん! おいしい!」
「やたらうまそうに食うな。どれどれ……! これは確かにうまい!」
「本当だ! おいしい!」
スープなんてと言ってたモーティマまで、シチューに夢中になってる。
三人ともどんどん食べて、すぐにお皿は空に。
「なあ、おかわりって出来るのか?」
「頼めばくれるでしょ。追加料金はかかるだろうけど」
「……追加分は自腹か?」
「皆が食べるならいいんじゃないかい? マリーはどうする?」
「じゃあ……シチューだけ」
モーティマはもう一人前全部食べちゃった。
マリーとグリュエールはシチューだけもう一杯。
食べ終わった後は皆満足そうな顔で部屋へと戻ってく。
おいしいってどんな感じなんだろ?
おいしいご飯を食べられるって、ちょっと羨ましいな……
「さて、明日も早いしさっさと寝ちゃおう! この村じゃ鐘は鳴らないから気を付けるんだよ」
「わかってるよ。じゃあな。おやすみ」
「おやすみ~」
マリーとグリュエールは部屋に戻るとすぐに寝ちゃった。
旅で疲れてるのもあるだろうししょうがないんだけど……
夜はやっぱり暇なんだよなあ……




